できることと、したいこと

今日は、一冊の本を紹介したいと思います。

この本は、私の以前の職場の上司が、部下である私のビジネスパースンとしての成長を期待して贈ってくれたものです。「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」というタイトルの本です。

なんだか胡散臭いタイトルでしょう。実は、私は自己啓発関連書というのが苦手で、その手の本はほとんど読みません。この本も、贈呈されたときはちょっと戸惑いました。しかも本の帯には「勝間和代推薦!」みたいな宣伝文句がでっかく踊っていました。私は勝間和代があまり好きではないので(正確には、興味がない)、なんだか読む気が失せてしまったのですが、せっかくいただいたので読んでみました。

この本に書かれていることは、ものすごくシンプルなことです。それは、「生まれつき好きでないことは、いくら努力しても上手にできるようにはならない」ということです。向いていないものをいくら一生懸命やっても、無駄だということです。えっそんな残酷なことが書いてあるの!? と思われる方も多いでしょう。しかし、基本的にそうです。人は、嫌いなこと、心の底から好きでないことは、いくら表面上努力しても上達には限界があり、マステリーはできない、ということです。

私たちサイクリストを例にして考えてみましょう。たとえば、あなたは坂道が大嫌いだとします。坂道は見るのも嫌だ。できれば、登りたくない。あなたが心の底から好きなのは平坦な200kmの道であって、平均斜度12%の20kmの峠道ではない。

そんなあなたは、身長170cmで体重が52kgだとします。ここで問題です。あなたは数ヵ月後、厳しいヒルクライムを含むワンデーサイクルロードレースに出場する予定です。あなたはヒルクライム向きの身体を生かして、ヒルクライム能力をさらに強化することに重点を置くべきなのか。それとも、大嫌いな坂道については、大幅なタイムロスが出ない程度のトレーニングを積んでおいて、むしろ平地で大胆な逃げを打ち、平坦区間で大活躍できるように、少し筋トレなども導入してトルク型に身体を改造すべきなのか? 

この本を読むと、上記のような問題に解答が出ます。また、この本の良いところは、新品で購入すると、シリアルナンバーが付属しているので、それを利用して、指定のURLにアクセスし、あなた自身を分析できる、という点です。選択式の問題に答えていくだけで、あなたが何に向いているか、何に興味があるか、そういうことがわかります。そのため、この本は古本では買わないほうが良いです(ウェブサイトへのアクセスコードは一回しか使えません)。

勿論、この本はサイクリストやアスリートのために書かれた本ではありません。しかし、本書の基本的なメッセージはスポーツでも有効だと思います。ある意味、衝撃的なことではあるのですが、人は、自分が本当に好きではないこと、無意識または意識の深層で好んでいないものについては、本気になれない。100%のエネルギーをそれに捧げることができない。たとえどんなに環境に恵まれていても、それは変わらない、ということです。

「小柄で体重が軽いからお前はヒルクライマーになれ」というのは、この本の著者からすると、ちょっとダメなアドバイスということになります。「お前は小柄で体重が軽いからヒルクライマーになる身体的資質はあるが、お前が自転車に乗っていて本当に楽しいのはどんな時なんだ? どんな時にいちばん熱くなれるんだ?」という質問が正しいということになるでしょう。

しかし、私たちの意識は無意識・深層意識を徹底的に覆い隠しているので、自分自身の傾向や好み、性癖というのは実は自分で把握するのが困難だったりします。自分が本当は好きだと思っているものが、実は全然興味がないことだったりすることも、よくあるわけです。たとえば表計算ソフトなんかこれっぽっちも好きじゃないのに、会社であれこれのマクロやらピボットテーブルをやらされて、上司に「お前はすごいな、お前はエクセルの天才だよ、エクセルの申し子だよ!」なんて言われ続けるうちに、「俺は表計算ソフトが好きで得意な男なんだ!!」と思い込んでしまうようなことも、よくあるのではないでしょうか。本当は、あなたは表計算ソフトではなく、プレゼン資料上でグラフィカルでわかりやすい概念図を描くほうが好きなのかもしれない。というか、本当はあなたは会社人には全く向いていないのかもしれない。しかし、環境要因があなたの真の志向性を隠してしまった・・・では、自分自身の生来の傾向や志向性、嗜好を知るにはどうすればよいのか。

興味がある方はご一読ください。勝間和代先生の本はおもしろくないという方にも楽しめると思います。

苦手なことはダメージコントロール程度に克服しておいて、好きなことをやるというのがやっぱりいいですね。好きなことは、上達もします。好きこそものの上手なれ、という諺はやっぱり正しいと思います。好きでないものは、長続きしません。しかし厄介なことに、私たちは、幼少期に自分の深層意識に刷り込まれた志向性が見えなくなっているというわけです。さあ、この本を読んで、あなたも実はチタンパーツやアルマイトパーツの収集が好きな人間であったことに気付いてみましょう。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす