皆さんこんにちは。
さて、ブログ第一回目は玄人さん向けの内容です。
私は最近、以下の二冊の海外サイクル雑誌を愛読しています。イギリスの雑誌で、ProcyclingとCYCLE SPORTの二冊です。後者は日本のサイクルスポーツ誌とは関係ありません。どちらも非常に読み応えのある雑誌でオススメです。八月号はどちらもランスが表紙でした。Procycling のほうで、面白い特集をしていました。「サイクリングにおける最も影響力のある50人」という特集です。
この特集、おもしろかったですよ。ナンバーワンは、たぶん皆さんの予想通りランス・アームストロングでした。そして第八位にはなんと日本人がランクインしています。SHIMANOの社長、島野容三氏です。シマノで組んだ自転車に乗ったことのない人はほとんどいないのではなかろうか、というわけです。他にどんな人がランクインしているかは、下にリストをつくっておくので、後でみてください。今回、私がいちばんおもしろいなと思った人物は、28位にランクインした、UCIテクニカル・コンサルタントのジャン・ウォティエ(Jean Wautier)氏でした。
私はこの人の名前をはじめて知ったのですが、UCIで自転車のレギュレーションをつくってる人らしいです。つまり、UCIが主催するレースに参加できる自転車のフレームは基本的にダイヤモンド型でなければならないとか、重量は6.8kg以下でなければならないとか、サドルの先端はBB軸より5cm後方にないといけないとか、そうした規則関係の責任者。この人はどうやらあまり好かれていないようです。この人が様々なレギュレーションを設けてしまうせいで、自転車が進化しない。最新技術や最先端の研究成果を応用できない。自転車の敵だ! なんて言われているらしく、本人もそれはわかっている、とのこと。
「私だって自転車が大好きだ、でもこうした規則をつくるのは、『手っ取り早く金儲け』しようと参入してくる連中を排除するためである、むかしのメーカーはもっとハートがあった、3:1ルール(チュービングの比率)にしても、自転車が自転車らしい姿であり続けるために設けている、私はサイクリングを守るためにこうしたことをやっているんだ、云々」といった内容の本人の発言が書かれています。
これはなかなかおもしろかったです。昔、ファニーバイクというのがありましたよね。タイムトライアルやアワーレコードで使われていたもの。UCIがああいうおもしろいバイクを禁止してしまった。最近では新型のハンドルが出ると禁止されたりしますよね(DedaのAlaneraとか)。心が狭いなー、と不満に思っている皆さんも多いのではないでしょうか。私もそう思っていました。
でも、このジャン・ウォティエ氏の言っていることも一理あるような気もしました。別に、自転車が自転車らしくあるためには、三角形でないといけないとは思いませんが、もしこうした規制がなかったら、ハイエンドのカーボンフレームは50万や60万では買えず(それでも相当高価だけど)、200万とか300万円になっていたのでは? と思ったからです。『手っ取り早く金儲け』したいベンチャーが、最新技術や素材を惜しみなく投入したら、アマチュアの我々には買えないものがグランツールを走ってしまうことでしょう。
つまり、プロの選手が乗っているのとほとんど同じ自転車が、アマチュアの我々にもとりあえず手が届く、自由にメンテナンスもできる、普通の体力があればなんとか操縦できる、という状況は、この人のおかげなのかも、と思ったわけです。プロが使用する最高の機材でも、全く買えないほど高価ではない(必要かどうかは別ですけど)。F1みたいになったら、もう買えませんよね。というわけで、このUCIの人の記事はなかなか考えさせられるものがありました。規制賛成!というわけでは、ないですよ。単に考えさせられただけです。
では以下に、Procycling 誌による「サイクリングにおける最も影響力のある50人」をリストアップします。
- Lance Armstrong
- Pat Mcquaid
- Hein Verbruggen
- Marie-Odile Amaury
- Anne Gripper
- Andrew Messick
- Christian Prudhomme
- Yozo Shimano
- Jeremy Darroch
- Bob Stapleton
- Angelo Zomegnan
- Jacques Rogge
- Jonathan Vaughters
- Eddy Merckx, Igor Makarov (編集ミス? 二人とも14位)
- Patrick Lefevre
- Tom Boonen
- Mark Cavendish
- Dick Pound
- John Fahey
- Michele Ferrari
- (編集ミス? 欠番)
- Dave Brailsford
- Andrei Tchmil
- Ettore Tori
- Emilia Fahlin
- Kevin Sireau
- Antonio Serrano
- Jean Wautier
- Andy Schleck
- Gerard Vroomen
- Alberto Contador
- Bjarne Riis
- Mino Auletta
- David Millar
- Paul Sherwen
- Phil Liggett
- Simon Smart
- Renato Di Rocco
- Cedric Vasseur
- Jim Ochowicz
- Franco Ballerini
- Oscar Pistorius
- Mike Sinyard
- Johan Le Bon
- Taylor Phinney
- Alex & Johnny Carera
- Paul de Gayter
- Rolf Aldag
- Paul Kimmage
- それを決めるのはあなたです、みたいなことが書いてます(これはあくまでProcycling誌の独断と偏見によるもので、皆さん異論はおありでしょう、ご意見お待ちしています、みたいな内容)
皆さん、このProcycling誌、なかなか内容の濃い本なので、海外旅行の際には空港の雑誌屋さんで買ってみてくださいね。