政権交代のこと、日本の未来のこと

過去一年の大きな出来事として、民主党による政権交代を外すわけにはいかないでしょう。

数ヶ月前、私はあるマレーシア人にこんなことを言われました。

「ハトマヤという日本の新首相の調子はどうだ? 君の国では三ヶ月ごとに首相が変わるようだけど」

私は、まあまあかな、と適当に生返事したのを覚えています。”In your country Prime Minister changes every three months, right?” というその人のしゃべり方が、なんだか人を小馬鹿にしているようにサウンドしたので、ちょっとムッとしたのでした。日本はな、マレーシアよりずっと複雑で厄介な国なの!! だからよほど手腕のある首相じゃないと長続きしないの!! と、心の中でやり返したのですが、よく考えれば、それは違う。というのも、マレーシアだってかなり複雑な国なわけです。他民族で多言語のグリーン・イスラム。日本より簡単な国だなどとは口が裂けても言えません。

その後、鳩山首相は電撃辞任しました。テレビでは、管現首相がギラギラした顔をニヤニヤさせて、代表選に出るとか言っていました。あの時、私はなんだか腹が立ったのを覚えています。なんだ、あんたがた結局権力を手にして恍惚としたかっただけなんじゃないの、と。鳩山首相の辞任は、言ってみれば身内の不幸のようなものなのに、管直人は「苦節○年、ようやく俺が首相の座に着く、その時がやってきた!」みたいな、愉快そうな表情でした。本当に醜悪でした。

さらに腹が立ったのは、基本的に鳩山政権の政策を継承するという管氏が首相に就任すると、民主党の支持率がアホらしいほど回復してしまったことです。野党に転落した自民党の谷垣総裁にも腹が立ちました。普天間問題の責任を取って鳩山首相は辞任せよと叫んでいたのに、まさかあのタイミングで鳩山首相が辞任することは考えていなかったのでしょう、参院選の準備が全くできていない谷垣氏は、今度は逆に「辞任するなんて無責任だ!」などと逆ギレ状態。まるで「反則は許さ~ん!!」と叫びつつ観客席から奪ってきたパイプ椅子で対戦相手に殴りかかるプロレス選手みたいで、ちょっと楽しかったけど(でもこういうのを楽しむのは、本当は退廃的で良くないことです)。

どうも日本では、物事の本質がなんら変わらなくても、社長が引責辞任したり、首相が幹事長道連れで辞任したり、琴光喜が解雇されたりすると、なぜか世論がいったん落ち着いてしまう。みんな安心してしまう。本当は片付けなければならない厄介な問題が目の前にあるというのに、クサいものにはフタをするという具合に、トップは責任を取れ、と騒ぎたてる。

私は、鳩山首相が優れた政治家だったとは思わないけれど、普天間に関する彼の決断は、非常にわかりづらいものではあったものの、まじめに取り組んだ結果ああなっただけなので、決しておかしいことをしたとは思いません。もっとも、「勉強すればするほど難しい問題だということがわかった」などとは口が裂けても言うべきではなかったとは思います(たとえそれが事実であったとしても)。鳩山首相は、基本的に最後までブレていなかった人だと思いますが、ブレているとしか受け取りようがないコミュニケーションで失敗してしまった。

その後、参議院選挙で民主党が大敗しました。これは興味深い現象でした。私はてっきり、民主党がまた圧勝してしまうのだろうと思い込んでいたのです。ある識者は、「これは日本の有権者が『民主党には期待していたほどの実力がない。現在の民主党に、あまりに大きい権力を与えるのは非常に危険だ』と判断したからではないか」と分析していましたが、なるほど、と唸らされました。どう考えても政治シロウト集団であることがバレてしまった民主党に、衆議院と参議院の両方抑えられてしまったら、もう何をされるかわからない。民主党の暴走をここで食い止めよう、という力が働いたのだと言われれば、納得が行きます。

ある意味で、日本の有権者は慎重で聡明な判断を下したのだと思います。しかし逆にいえば、日本の有権者は変革を志向するリーダーを最後まで信じきることができない人々なのではないか、と思いました。しかも、数十年ぶりの政権交代であれほど期待されていた民主党のリーダー、鳩山首相が、自分から辞めてしまった。もう日本には頼りになるリーダーなんかいないのだという失望がさらに深まったことでしょう。その意味で、鳩山首相の辞任は、あれは、本当によくなかったと思います。ボロボロになっても、たとえ死んでも任期を全うすべきだった。もう方向があさってでもいいから、自分の信念に基づいた政治をやって、なんとかうまく事を運ぶか、あるいは有権者の手によって(真の意味で)民主主義的に息の根を止められるという結末に持っていくべきだった。しかし、実際は自分から辞任してしまったから、日本の有権者はまたしても何も学ぶことができなかった。自分たちの意思で選んだ政権が、自分たちのおかげで成功していくさまが、あるいは、自分たちのせいで崩壊していくさまを、実際に観察する機会を得られなかった。鳩山首相は、あのとき辞任さえしなえければ、歴史に残る大業を成し遂げていたはずだと思います。

今後数年、残念ながら世相はもっと悪くなっていくと思います。政局も混乱するでしょう。失業率も相当上がるでしょうし、景気は簡単には回復しないでしょう。五年後の日本は、ひょっとすると失業率が8%~10%くらいになっていて、職を得られない若者は中国のセブンイレブンに出稼ぎに行くようになっているかもしれません。中国の工事現場で働くようになるかもしれない。中国の性風俗産業で働く若い女性が現れるかもしれない。

・・・と、妄想するのですが、いや実際はそうはならないでしょう。仮に失業率が10%を超えても、その頃の若者はたぶん海外で肉体労働をするガッツ(死語)はないと思います。だから、出稼ぎに行かないとどうにもならないのに、行かない。するとどうなるかというと、不満を抱えた貧困層がスラムを形成するようになり、サラリーマンを襲撃したりパトカーに火をつけたりする。一昔前のロンドンや、数年前のパリ郊外みたいな状態になると思います。私が思うに、ものすごいミラクルがないと、そうした状況はたぶん避けられない。

といったことを私は自転車に乗っているときにぼんやり考えることがあります(最後に無理やり自転車に結び付けてみましたw というのは嘘で、ほんと、自転車に乗っているときはこんなふうに世間の出来事や世界の未来について考えることがよくあります)。

そうだ、あと地球温暖化も進みますね。10年後、夏に東京で自転車を楽しむのは現実的ではなくなっているのではないでしょうか。すると、涼しいところに移住する必要がありますね。中国なら黒龍江省あたりでしょうか。ロシアなら東シベリアでしょうか。中国語に加えてロシア語も勉強しておいたほうが良さそうです。