ドバイでロードバイクに乗る人になりたい

今日は、一つの「イメージ」について思いをめぐらせてみたいと思います。それは「ドバイでロードバイクに乗る人」というイメージです。

昨年、出張でアラブ首長国連邦のドバイに行ったのですが、とてもロードバイクを楽しめそうな環境ではないように思えました。冬でも暑いです。まあ、暑いとはいっても、今年の夏の東京よりはマシだったかもしれません。ここ数年の日本の夏は気温が高いだけでなく高い湿度も伴うので、苛烈ですよね。それでも、ドバイはロードバイクに向いた土地でないのは事実です。気温が高いだけでなく、砂漠を通る道沿いに自動販売機なんかありませんから、運悪く携帯を忘れてきてドリンクが尽きてしまってパンクなどしてしまったら、簡単に死んでしまうかもしれません。日陰を探しているあいだ、30分間クルマが一台も通らないということは、たぶんあるでしょう。すると、気を失って、倒れて、脱水症状で、死んでしまう。

こんなところでスポーツサイクルに乗っている人なんていないだろうな、と思いましたが、世界中訪れた都市では必ず自転車店を訪問することにしているので、ドバイでもサイクルショップを探してみました。すると、立派なショップがありました。そのショップについては、ここでレビューしています。

そのレビューでも書きましたが、不思議なショップでした。売っているものはどれも超高級品なのに、品揃えが非常に限られているのです。ロードバイクでいうと、ほぼSTORCKしか売っていない。ホイールは、ほぼZIPPの404か808しか売っていない。どちらも高価な高級品であることは間違いないですが、日本のショップのように、同じ価格帯でも違うブランドのものを選びたいとか、ちょっと変わったホイールも試したいとか、そういうニーズに応えようという雰囲気がほとんどない。

日本は恵まれているな、と思いました。東京や大阪や京都のサイクルショップは、品揃えという点で見ると世界でいちばんすごいんじゃないかと思います。何でもあるとまでは言いませんが、かなりいろいろな製品があって、細分化した好みと需要に応じている。サドルバッグの種類だけで数十種類、カラーもさまざま。タイヤだって10種類は置いてある。様々な点滅パターンを持つライトが陳列されていて、チェーンキャッチャーのような、かゆいところに手の届く、優れた親切商品が所狭しと並んでいます。もちろん、私はこういうのが大好きです。CBN参加者の皆さんも、ほとんどの方が好きなんじゃないでしょうか。

一方ドバイのそのサイクルショップは、そういう「日本的洗練」みたいなものの対極にあるような気がしました。

「ロードバイクに乗りたい? ならこれをどうぞ。ストークです。最高のバイクです。」
「ホイールが欲しい? ならこれをどうぞ。ZIPP 404。最高のホイールです。」

以上、という感じです。もし間違って「赤色のバーテープで振動吸収性が高いやつが欲しいんだけど」とか「アナログ式の空気圧ゲージはありますか」と聞いたりしたら、そんなものないよ、と言われてしまいそうな雰囲気です(実際はそんなことないだろうけど)。とにかく、シンプルな感じなんです。君は自転車に乗りたいのか、乗りたくないのか。乗りたいならSTORCKに乗れ。ホイールはZIPPだ。それで何の不満がある? という感じです。ここは砂漠だぞ。ロードバイクに乗れるだけでもありがたいと思え。それに高級品だぞ! 何か不満でも? という。

ヒラメの魅力について語り合ったり、アルマイトのパーツに萌えるのもなかなか良いものですが、中東の砂漠の真ん中のサイクルショップのこの品揃えの薄さもまたすがすがしい魅力があるな! と思ったのでした。そして、「これってある意味理想的な境地だな!」とも思ったのです。

私たちはいろんなフレームを試したり、ホイールを取り替えたり、タイヤを交換したり、実に多くのパーツを試すわけですが、それは多くの場合、細かい不満があるからだと思います(不満がないけど他のものを買うIYHも存在しますが)。ああでもない、こうでもないと、好みのパーツやセッティングを試していきますが、それの行き着くところが、「ドバイでロードバイクに乗る人」というイメージじゃないかという気がします。

「オヤジ、何でもいいからロードを一台くれ! あと何でもいいからホイールもつけてくれ!」
「じゃ、STORCKとZIPPだな。ていうかウチにはそれしかないけどな。文句あるか?」
「ねえよ! さ、すぐ乗りたいから、すぐ乗れるのをくれ!」
「タイヤはVittoria Corse Evoしかないが、それでもいいか?」
「いいよ。細けぇことはいいんだよ!!」

そんなふうに言えるようになったら、いいですよねぇ。
何十年かかるかわかりませんが。

さて今日で、このブログはひとまずお休みにします。過去一年間、毎日更新してきましたが、今後は不定期更新となります。これまでお読みいただいた方、拙筆にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。