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「自転車を投げられた時、メカニックの方はどういう気持になるのでしょうか?」

昨日のJSPORTSジロ・デ・イタリアの中継はサイクルプロショップpositivo代表の永井孝樹氏が解説をされていました。

永井氏といえばファッサ・ボルトロをはじめとした様々なプロチームの専属メカニックとして厳しいレースの舞台裏を知り尽くされているお方。そんな永井さんに是非お聞きしたいことがあったので、ハッシュタグ #jspocycleQ を使用してTwitterで質問を投げかけてみました。

永井さんにこうしたことを聞いてみたい、と思ったのは トップ選手が自転車を投げるのは許されるか という記事がきっかけでした。以前このブログで「自転車を放り投げるウィギンス」の動画を紹介したところ、プロ選手が自転車をぞんざいに扱うのは見ていて気分が良くないし、良いことではない、という反応をTwitterで何件かいただき、「自転車を放り投げる」という行為は様々なレース関係者の目にどのように映っているのだろうか、という興味が湧いたのでした。

さて昨日のJSPORTS。運良く上の質問を取り上げていただく機会がありました。永井さんは、ナビゲーターの別府始氏とともに、大体次のように回答してくださいました。

やはりああいうのを見るとですね、「どうしたんだろう、何があったんだろう」というのがまず一つなのですが、トラブルの原因がはっきりしている時は申し訳ない気持ちでいっぱいですね。私自身自転車を投げられたことってレースではないんですが、そういった場面は度々目にします。勝負に絡んでいた時など、選手にとっては本当に千載一遇のチャンス。そこを機材トラブルによって台無しにしてしまうというのはやはりものすごく残念なことですし、申し訳ない気持ちでいっぱいになります(別府始氏:選手は選手でやはり全力でやっていてマシンはメカの方に任せている部分がありますからね、気持ちを自転車にぶつけちゃう)。帰ってから自転車を整備する時、メカニックだったら後々すごく落ち込むと思います。ただ、落ち込んでもいられないので、次の日にむけて完璧な状態にする。その一台だけではなくて、その一台があったということは他の全ての自転車に対していつも以上の注意を払うことになるのが自然な流れです(別府始氏:そういう経験を経てどんどん完璧になっていく)。

永井さんのこの回答を拝聴していて、まず最初に新鮮な驚きを感じました。というのも、私の意識は「メカニックの方はその時どんな気持ちになるのだろうか」というエモーショナルな面にフォーカスしていたのですが、永井さんの回答がまず「どうしたんだろう、何があったんだろう」という言葉で開始されたからです。つまり、エモーション(感情)ではなくファクト(事実)へのフォーカスが最初にあった。このことに私は驚いたのでした。

どのような職業においても言えることだと思いますが、何か問題が発生した場合、何を差し置いてもまず最初にやらなくてはいけないのは「事実確認」だと思います。ある事象や行為の善悪や快不快、可否などといった価値判断はその後にのみ可能。例えば会社で同僚同士が喧嘩しているといった場合でも主観的な印象を根拠に一方を糾弾したり制裁するというのはまずありえない(あったらおかしい)。何が起こったのか、まずそれを究明する。その上で問題解決の糸口を探る。

永井さんの回答がこの「事実確認」から始まったことに私は感動しました。そして「一台に問題があるのだから他の自転車にも問題があるかもしれない」という発想にも驚きました。メカニックの方にとってそれは自然な発想なのかもしれませんが、テレビ中継で自転車を放り投げる選手を見て私達が取るであろう最初の反応 – たとえば「自転車投げちゃダメじゃないか!」 といった反応 – とは次元が全く異なっています。この「次元の違い」が私には新鮮でした。

サイクルロードレースの面白さ・魅力は様々あると思いますが、「性質の異なる様々な利害関係者が複雑に絡みあう一大スペクタクルである」という点もその一つではないかと感じています。やり場のない怒りを自転車にぶつける選手。それを見て「それはないよ!」と時にムッとする私達。チーム監督は監督で思うところがあり、機材を提供したスポンサーはスポンサーで思うところがある。そういう多人称的な世界を、想像力を駆使して観戦する楽しみもあると思います。

その時、永井氏のような一流のメカニックは「どうしたんだろう、何があったんだろう」とまず思い、落ち込みはするものの、その後は、他の自転車は大丈夫なのだろうか、と発想し、明日に向かって仕事を開始する。

永井さんの回答を聞いていて、ロードレースがより立体的に見えてくるような感覚になりました。永井さんどうもありがとうございました。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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