現代的なMTBにおいて、まずどのパーツをアップグレードすべきか?というのは、人によって色々意見はあるでしょうが、フレームは変えないという前提であればまずブレーキ、然る後にサスペンションであると思っています。
スポーツ自転車に乗り出すようになる前は、オートバイで草レース(主にエンデューロ)も出ていていわゆる競技用車両を所有していたこともあり、当然サスペンションの重要性は身にしみて理解しています。であれば、MTBでも真っ当に動くサスペンションが欲しくなるのは当然の帰結であります。
結論から言えば「いいものはいい」というお話ではございますが、現在所有してるFox 34(2016 Performance FLOAT 140mm)のレビューで、さらなる散財アップグレードの参考になれば幸いです。
Fox 34 Performance 購入のきっかけ
スポーツ自転車のきっかけはロードで、ツーリングやら楽しんでたわけですが、元々4輪も2輪もオフロード志向の自分が、ロードでダート走っても全く楽しくはないということに気づくのにそう時間はかからず、中古のアラヤ・マディフォックス(20年物)に手を出します。
しかし、いかんせんディスク台座もない頃のフレームですし、26インチ自体の先行きがいよいよ怪しくなって来た上に、現代的なMTBも触ってみたいというのもあり、Mondraker Vantage(16年モデル)を決断的購入。
しばらくはほぼ購入時のまま乗り回してましたが、乗れば乗るほど前サスのショボさがネガとして浮き出てくるので交換を決意。ちょうどお世話になってるショップさんで規格もストロークもジャストサイズの前年度モデルがセールになってたので、ホイールと一緒に購入。確か、ヘッド交換や取り付け、ホイール組みも合わせて10万ぐらいだった記憶。
完成車付属のRST Blazeとの比較
細かい話はこれぐらいにしまして実際のFox 34(2016 Performance FLOAT 140mm)のレビューに入る前に、さらっと完成車についてきたRSTのBlaze(130mm)というサスのレビューをしておきます。
このRSTのBlaze、言葉を選んで言うなら、完成車買って自走して帰る分には問題ない程度の性能しかなく、かかってるのかよくわからないプリロードと効いてるのかよくわからないダンパーが相まって、段差ではフロントが弾かれコーナリングでは落ち着かないという非常にバネバネしい何ともお値段通りの物でした。
まあ、低グレードの完成車のサスなんて大体そんなもんです。後、サス単体で2.5kg近くとびっくりするぐらい重い。
で、所有しているFox 34ですが、基本的にはインナーチューブの直径が34mmのエアサスなチェリアーニ式テレスコピックフォーク(注1)でOLDは15mmスルー×100mm、ステアは1.5テーパー、ストロークは140mm、リバウンド調整可、コンプレッションは3モード切替可、というスペックになっています。サス単体だと確か、2kg切って1.8kgだかそれぐらいだった記憶。
もうね、またがってハンドル押すだけで感動ですよ。軽い力でもスルッと入っていくしストロークの底の方ではちゃんと踏ん張るしとにかく動きが上品。「ああ、ちゃんと動くサスペンションってこうだよ」っていうのを久々に実感。
車体受け取って自走での帰り道、当然歩道から車道への段差やちょっとしたあぜ道、バニーホップ(もどき)で飛んだり跳ねても、その感想は変わらず。
もちろん、ダートやトレイルに連れて行けばさらに評価は右肩上がり。前まではフロントが跳ねてた露出した木の根っこ(特に上り)をなんなく通過していき、ちょっと高さのあるドロップオフも飛び方さえ間違えなければ苦もなくこなし、MTBで重要なパーツはフレームとサスであるというのをしみじみと体感することになりました。
剛性感は言うまでもなく、必要十分以上。ハイスピードでコーナー入っても前輪が怪しくよれる感覚はないし、ちょっとした下り(注2)でも同じく。ただ、難易度高めのDHコースでは少々心もとなくなるので、やはりメーカーの想定どおりトレイル向けではあります。
サスのセッティングは非常に簡素で、マニュアルに書いてあるとおりサスポンプでエアサスを調整しサグを出したら、それに合わせてリバウンドを設定してあげるだけで終わり。
ストロークの底での踏ん張りが気になる方はエアスペーサーで調整することになりますが、とりあえずは出荷状態でしばらく乗ってみてからで大丈夫かと思います。
上のグレード(FactoryとかPerformance Elite)になればロースピードコンプレッション(LSC)も調整できるのですが、Performanceの場合、コンプレッションはフルオープン⇔ちょい閉め⇔ロックアウトの3ポジションしか選べないので特に関係ないです。
とはいえ、カルロス・サインツ並の完璧主義者(注3)であっても、気の済むまで調整できます。ちなみに、エアサスは長期保管や外の状況などでエア圧が変化するので、乗車前に確認しましょう。
欠点、もしくはレース機材たる所以
基本的に、褒めるところしかないのですがネガが無いわけではありません。
これ自体がレース機材であるという事です。
読者の皆さんの中には「それが悪いことなのか?」と思う人もいるでしょうが、アウターにオイルシールがない構造になっててサスに入ってるオイルはどんどん減っていきます。それに動く部品は必ず消耗するので、乗れば乗るほど主にダンパーがヘタってくるので、レースに出てるようなライダーであれば1シーズンでOHを推奨されてます。
当然、工賃や部品代がかかります。要は使えば使うほど新品のような性能を維持するのは手間がかかっていきます。まあ、ノーメンテで使える部品なんてこの世に存在しえないので当たり前ではありますが、ちょっと洗って給油すればOKというほどぬるくはありません。
それに、これはFoxのサス全般に言えることですが、メーカー保証が5年までです。
正確に言えば、正規輸入代理店(マムアンドポップスさん)でのOH依頼やスモールパーツの部品供給が5年前のモデルまでで打ち切りになります。それ以降はDIYやショップさんでの保証外のOHなどになり、壊れた場合買い替えになってしまいます。
というか、5年も経つとサスの性能向上やフレームの性能や流行りがえらいことになってたりするので、保証切れた後使うメリットが金銭的な問題や規格上の問題(注4)がなければ特に無いというオチがあります。ぶっちゃけ、金があったら2、3年おきぐらいに買い替えたい。
まあ、ここからは個人的な意見ではありますが、(シリアスなライダーであれば)5年も前の機材使ってレース出るとか勝つ気あるのか?と言われればまさしく正論としか言いようがなく、そうでなくても少なくとも5年は買った当時の性能をちゃんと維持できるというのはなかなか得難いサービスなので、理解していればさほどネガではないという感じです。
後、正規輸入代理店さんの仕事がすごくいいので、OH費用などお値段以上なのが大きいです。自分でやってもいいんですが、ぶっちゃけ面倒だし経験値が違いすぎるので、正しくプロの仕事に任せたほうが楽です。ブログの方も色々更新してて、セッティングのコツやセール情報などもあるので一度見てみることをオススメします。
前述の通り、アウターにオイルシールがないので長期間天地逆にして保管してたりすると、オイル抜けきってたりするので要注意。当然、インナーに傷入れるのも御法度。
総評
最初に言ったとおりある程度素性の良いフレームを持っていて、何かパーツを交換したいということであれば、まずはちゃんと使えるブレーキに交換した後にサスペンションを交換するのをオススメします。
その際、どこのサスを買えばいいか?といった場合、少なくともFoxかRockshoxの上のグレードを買うのが間違いないでしょう。もちろん他のメーカー(例えばDVOやX-Fusion、オーリンズなど)が良くないというわけではなく、入手性やメンテまで考慮した場合に無難であるという意味ではあります。
このクラスのサスであればお値段も性能もさほど大きくは違わないので、正直どのメーカーでもいいんですけどね。
では、なんでFoxを選んだかというと、宗教上の理由(Rockshoxが全体的に好みでない)と、お世話になってるショップさんがFox派だったのと、セール品で安かったからと非常に不純な動機からですが、使ってからはFox選んで良かったなあと思っています。
Foxの前サスの現行ラインナップは、インナー径の違い(32、34、36、40)とFactoty、Perfomance Elite、Performanceの3グレードの組み合わせで構成されており、一番下のPerformanceですら完成車のミドルハイ以上のグレードに採用される物なので、予算の都合がつくのであればPerformanceで困ることはそうそうないと思います。
レース目的なら、最初から上のグレードでもいいかもしれません。
それに、今はMarzocchiが復活しPerformanceよりもうちょっとお安い値段でFox OEMのサスが手に入るので、こちらも選択肢に入ってくるかと思います。今なら新品のBomberが手に入るよ!(注5)
いや、このクラスのサスは本当にいい仕事するので、二度と安物サスに戻れなくなる身体になるのが欠点ですが、是非新品のサスに交換して新しい世界に行きましょう。間違ってもオクで中古とかやめておくんだぞ!開けたらヘドロと錆が……とかオイルダダ漏れとかダイアル類固着とかよくあるからな!
さらに、近場に大手チェーン店ではない正規取扱販売店さんがあるともっと幸せになれますが、こればっかりは望んで得られるものではないので難しいのですが……
では、よきダートと共にあらんことを。