WTB(Wilderness Trail Bikes)がサドル製品のデザインと表面素材・パディングを一新しました。
と、それだけであれば面白い話題ではないかもしれませんが、「手首の長さから自分に適したサドルがわかる」という「FIT RIGHT SYSTEM」なる興味深いシステムも新たに導入されていました。
下のWTB公式サイトの中で赤枠で囲まれた「FIND YOUR FIT」をクリックすると、この謎システムをお試しできます。私も実際に試してみたので方法や注意点、疑問点などを紹介していきます。
性別と手首の長さ
まず最初のページで性別を選びます。性別、と言っても同サイトのページには”BORN MALE”(男性として生まれた人)や”BORN FEMALE”(女性として生まれた人)という表現が使われていて、性の多様性へのさりげない配慮に感心します。
手首の長さを測る位置は、出生時の性別によって次のように異なります。
- 男性として生まれた人 – 手首のすぐ下の最も狭い箇所の長さを測定する
- 女性として生まれた人 – 手首の骨が突き出ているところの最も広い箇所を測定する
測定方法は、「定規の上に手を平面になるように置いて測る。またはノギスを使うとさらに良い結果になる」とあります。単位はmm単位で入力します。筆者はとりあえず49.04mmで入力してみました。
ライドポジションを選ぶ
次にLeisure, Performance, Agressiveの3つの中からライドポジションを選びます。
- レジャー:リラックスしたアップライトなポジション
- パフォーマンス:様々な地形でアクティブに動く
- アグレッシブ:高強度のエンデュランスレーシング
私は「パフォーマンス」を選んでみました。なお、全ての項目をきちんと選んでいかないと最後にエラーになるのでご注意。ちなみに私のスマホではうまくボタンを押せないことが多かったので、同様の方はPC版ブラウザで試したほうが良いかもしれません。本記事で使用しているスクリーンショットはどれもPC版です。
体型を選ぶ
次に4つの選択肢から自分の体型を選びます。
- 逆三角形:肩幅と胸囲がお尻よりも広い人
- 長方形:肩幅とお尻の長さが同じくらいの人
- 三角形:お尻の幅が肩幅や胸囲よりも広い人
- アワーグラス(砂時計型):お尻と胸囲がほぼ同じ幅であり、かつウエストが細い人
私の場合は肩幅のほうがお尻よりも明らかに広いので「逆三角形」を選んでみました。「三角形」と「アワーグラス」は女性向けの選択肢でしょうか。
サドルの厚みを選ぶ
最後にサドルの厚みを選びます。
選択肢は3つ。
- THIN(薄い)
- MEDIUM(ふつう)
- THICK(厚い)
とりあえずミディアムを選んでみました。
おすすめのサドルが表示される
するとWTBのサドルラインナップからオススメの製品が表示される、という仕組みです。
私に提案されたのは「VOLT」というモデルでした。な、なるほど…
また、上の画面には次のように書いてあります。
YOUR SIT BONE MEASUREMENT 98.08MM
SIT BONE RANGE 69-101MMあなたの坐骨幅 98.08MM
坐骨レンジ 69-101MM
そして”NARROW WIDTH”(ナロー幅)のサドルがオススメされています。パディングのMEDIUMは自分で選んだものです。
坐骨の長さは手首の2倍?
と、ここでふと気付いたことがあります。私が入力した手首の長さは「49.04mm」でした。そして上で表示された「あなたの坐骨幅」は「98.08MM」。
ん? 「49.04」と「98.08」の関係は…
ちょうど2倍!!
ということは、WTBによれば坐骨幅は手首の2倍になるということなのでしょうか。ず、ずいぶん簡単すぎる…
ここで疑問に思い、体型を変更してみたりすると、最後の「あなたの坐骨幅」はぴったり2倍ではない数字に変化しました。
ということは、私が検証中にたまたま選んだ「出生時性別・男性、ポジションはパフォーマンス、体型は逆三角形、パディングはミディアム」というのはもしかするとこの「FIT RIGHT SYSTEM」の基準値的なものなのかもしれません。
疑問点
もうひとつ大きい疑問点があります。それは手首の長さの測り方です。私はデジタルノギスで測ったのですが、今回の「49.04mm」というのは測定箇所でノギスが骨にあたるくらいのギリギリのところの数値です。
これが手首まわりの肉まで入れて自然に測ると数センチくらいは余裕で誤差が出てしまいます。どうもどのあたりで測ったらいいのか釈然としません。
「手首の幅と坐骨の幅に相関関係がある」というくらいなので、「手首の骨」のことではなかろうかと思い、骨付近で測定したのですが、WTBのサイトをよく見ると「手首」としか書いておらず、「手首の骨」とは書いていないんですね。
測定方法として「定規の上に手首を平たく置いて…」とあるので、この場合は「つまむ」という行為が入らないので、骨の長さではなく外側の肉、皮膚も入れた長さになるでしょうから、そちらで試すのが正解なのかもしれません。
というわけで何度か測定しなおし、再度「FIT RIGHT」をやってみたところ、上の「VOLT」以外にも数種類のサドルが提案されました。
新たなマーケティングな何かなのか…
果たして手首の幅と坐骨幅に相関関係はあるのでしょうか。WTBのプレスリリースも読んでみましたが、「解剖学的な相関関係をもとに…」という説明はあるものの、どのような実験データをベースにしているのか、何らかの学術的研究に依拠しているのかどうか不明です。
身体の柔軟性を「カメレオン・ブル・スネーク」の3タイプに分類するフィジークの「スパイン・コンセプト」のような、ざっくりしたようなものなのでしょうか。少なくとも販売戦略的にはフィジークをかなり意識しているように思いました。