イスラエル・スタートアップネイションのクリス・フルームは、ディスクブレーキの性能について懐疑的です。下の記事で詳しく紹介しましたが、一般人の私達同様、トップサイクリストの彼もまたディスクローターとパッドの摩擦にフラストレーションを感じることがあるようです。記事中で紹介したフルーム氏のディスクブレーキに関する意見は世界中で話題になりました。
そんな中、ツール・ド・フランス2021ではフルームがチーム標準のシマノ製品ではなくMAGURA社のブレーキキャリパーを使用していることが明らかになりました。road.ccが報じています。
出典 Chris Froome switches out Shimano disc brake callipers on Tour de France mountain stage
MAGURA MT8 SL FMを使用?
フルームが今回使用している「シマノでない」ブレーキキャリパーについて、正式なアナウンスはないのですが、ソース記事は独マグラ社のMT8 SL FM(フラットマウント)である可能性が高いのではないかと推測しています。確かに下の画像を見ると、フロントのディスクブレーキキャリパーはシマノ製品ではないように見えます。
下の画像左側は件のブレーキキャリパー部の拡大。右側はMAGURA MT8 SL FMの画像です(MAGURA公式サイトから引用)。フルームが使用しているものはリングの色が黄色ではなく赤ですが、形状は確かによく似ているように見えますね。
MAGURA公式サイトを見ると、現在ロードバイクでも使用できるフラットマウント版のブレーキキャリパーにはMT8 SL FMとMT4 FMの2種類しかないため、確かに上位モデルのMT8 SL FMである可能性が高いと思われます。
フルームはリムブレーキのバイクに乗っても良い
ではフルーム氏やチームメカニックがMAGURA MT8 SL FMを気に入っているかというと、そこはまだわかりません。というのもフルーム氏、ツールの第15ステージで1度バイクを交換しているのですが、その時はリムブレーキのバイクを受け取ったという情報があります。
実はフルーム、今回のツールでは本人が希望すればFACTORが特別に用意したリムブレーキバイクに乗ることもできるのだそうです。下はツール開催前にフルームがインスタに投稿した画像ですが、路面に映る影にはディスクブレーキローターの形状が見当たりません。マシン自体は用意されているものと思われます。
恐らく本人としてはメカニックと相談しつつ何とかディスクブレーキでやっていきたいのだと思いますが、件のステージではやはりイライラを感じたのでしょうか。長い下りでのブレーキングではローターやキャリパーに熱が蓄積し、ローターが歪みピストンも戻りきらないため両者間に摩擦が発生すると言われていますが、そうなりにくい組み合わせを模索しているのかもしれません。
またシマノの代わりにMAGURA MT8 SL FMを選択した理由も、必ずしもMAGURAが優れているからというわけではなく「シマノと同じミネラルオイルベースのブレーキだから組み合わせやすい」ということも考えられます。
ちなみにイスラエル・スタートアップネイションが使用しているローターはSwissStop Catalyst。しかしこれもこの製品が優れているから選んでいるわけではなく、SwissStopがスポンサーだからです。
しかしroad.ccの元記事の執筆者はこのSwissStop Catalystを試用したことがあり、個人的に使用していたDura-Aceローターよりも良かったと言っています。
シマノが今年発表を予定しているとされる新型デュラエース(現時点の海外情報では9月の公式発表説が濃厚)は「信頼性」の向上が大きいコンセプトのひとつになっているらしいので、ディスクブレーキ性能も改善されていると良いですね。