自転車がテーマの映画を最近2本観たのですが(amazonでレンタルしました)、どちらもおもしろかったので紹介しつつ感想を書いてみたいと思います。ネタバレはしないので安心してお読み下さい。
クイックシルバー(Quicksilver)
まず「クイックシルバー」という映画です。1986年の映画で、主演はケヴィン・ベーコン。YouTubeに予告編があります。
ケヴィン・ベーコンが演じる株の天才トレーダーが一夜にして自分と家族の全財産を失い、いろいろ思うところあってメッセンジャー(自転車便)になります。舞台は、一瞬NYCと錯覚しますが、おそらくサンフランシスコ。
自分が負える以上の責任を負ってしまう実体のない株の世界に対して、メッセンジャーの仕事は、実物を人から人に届けるというわかりやすいもの。リスクにさらされるのも自分だけ、という世界。主人公はそこに心の安らぎを感じたようです。
メッセンジャーであることに満足している主人公ですが、困っている昔の同僚を持ち前の頭脳で助けたりしているうちに、いろんなトラブルに巻き込まれてしまい、なんとかそれを切り抜ける、というアクション・サスペンス映画です(我ながら雑な説明だな・・・)。
驚いたのが、同僚の黒人の自転車乗りを演じているのがローレンス・フィッシュバーンだということ。えっ誰それ? 映画「マトリックス」でモーフィアス船長を演じていた人です。
80年代の映画なので映画の出だしは雰囲気が少し古臭く感じたのですが、見ていくうちにひきこまれました。ケヴィン・ベーコン扮するジャック・ケイシーは、主にラレー(Raleigh)のシングルスピード、主に固定ギアを乗り回します。同僚はWレバーのロードレーサー、という人が多いです。
メッセンジャー会社の社長はGIOSのキャップをかぶり、サンマルコ・コンコールサドルが見えたりと、ロードファンにはたまらない描写がたくさんあります。
自転車のスタントを見ているだけでも面白いのですが(スタントマン以外に本人も相当練習したものと思われる)、それ以外のアクション・サスペンス要素も楽しめました。
ただこの映画、批評家の受けは良くなかったらしく、ケヴィ・ベーコン自身も「自分のキャリアの中で最低に位置する作品」とまで酷評しています。でも、いい演技していたと思います。そこまで言わなくてもいいだろうと思いました。ヒゲのトレーダー役は似合わないけど。
エンターテイメントとして十分に楽しめる映画で、自転車乗りなら2倍楽しめるでしょう。
プレミアム・ラッシュ(Premium Rush)
もう1本は「プレミアム・ラッシュ」という映画。これは2010年撮影・2012年公開の映画で、最近の映画という感じで見られます。「クイックシルバー」だとまだインターネットが普及していない世の中ですが、この映画の頃にはGoogle Mapがすでに世の中にあり、それっぽい描写も出てきます。
舞台はNYC。コロンビア・ロー・スクール卒の主人公が自転車の魅力に取りつかれ、メッセンジャーとして働く。しかしある日、特殊なものを配達させられることになり、トラブルに巻き込まれる・・・という映画。これもアクション・サスペンスものです。
ピストからトラックバイクへ、そしてシングルスピードの復権へという記事でも書きましたが、この頃、日本では固定ギア・シングルスピードバイクが「ピスト」という言葉で、チンピラ半グレギャングの乗り物、みたいなイメージが発生しつつあったと思います。この映画の中での自転車はまさにそんな感じの乗り方です。そのせいなのか(?)、日本では劇場公開が見送られています。
この映画も、エンターテイメントとしては面白かった。ただ「クイックシルバー」もそうなのですが、ものすごいストーリーで魂を揺さぶるような名画、という感じではなくて、ヒマな時に見てスカッとできるという、そういう意味でのいい映画です。いいカーチェイス映画の自転車版という感じがします。
ローラー回しながら観たりすると楽しめると思います。
この映画も批評家からの評価は高くなかったらしく、興行収入的には赤字だったようです。でもそんなに質の低い映画ではないと思います。ありがちな展開・ストーリーですが、でもそれがいい。丁寧につくられています。
自転車は、固定ギア以外にParleeのロードバイクや、BMX、NYPDの自転車ポリスが乗るTREKのMTBなどが登場します。
2本の映画の不思議な共通点
この2本の映画には、不思議な共通点がいくつかあります。
まず主人公が2人ともメッセンジャーであること。
そして片や元トレーダー、方や法科大学卒の青年で、ある意味エリートコースにいる人たちです。
そういうエリートコースにいる人間が、「大人の世界」に失望または幻滅し、自転車の持っているリアルな魅力にハマる、というところも似ています。自転車=地に足のついたリアルなもの、という感じです。
そしてメキシコ系のマフィアとか、チャイナ系のマフィアとか、サンフランシスコやNYCの裏社会が登場すること。
メッセンジャーに託される荷物が原因でトラブルが発生してしまうこと。
主人公は2人ともノーブレーキのシングルスピード乗りだけど、同僚の黒人はブレーキ付きロードレーサーに乗っているところ。
等々です。後発の「プレミアム・ラッシュ」が、同じメッセンジャーを題材とする「クイックシルバー」を意識していたのは間違いないでしょう。
続けて見ていると、こういう共通点のせいで余計に楽しめました。
気分転換には、どちらもオススメできる映画です。レンタルで199円で観られるので、損はしないと思いますよ。
気がつくと、もうレンタルビデオ・DVD屋なんて行かないし、そもそもそんなもの、もう存在していないのかもしれない。オンデマンド映画は「アクトビラ」とか「TSUTAYA TV」などを使っていた頃もありますが、最近はamazonばかり使うようになりました。便利です。