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ブレーキ

ヴィンテージパーツの雄にして迷作、カンパニョーロ・デルタブレーキの話

どうも、おはこんばんにちは(YouTuber風に)。PHILLYです。

今回の話のタネは「デルタブレーキ」です。ディスクブレーキで盛り上がる2020年現在の話題とは思えませんね。

デルタブレーキ

一口にヴィンテージパーツと言っても、年代やメーカーによって様々なものがありますが、販売終了から30年近く経過した今でもなお広く認知されているカンパニョーロのデルタブレーキは、ヴィンテージパーツの中でもひときわ目立った存在である事は間違いありません。

デルタブレーキとは?

デルタブレーキの事をよく知らない方のために、軽く解説をしておきましょう。

カンパニョーロが1985年にリリースした(1984年だったかも?)、空力性能を意識したレコードのブレーキキャリパーを指して「デルタブレーキ」といいます。

カタログ上では「RECORD Corsa group」と表記があり、競技向けののレコードという意味になりますが、これを略して「Cレコード」「Cレコ」などの通称で呼ばれる事が多いです。

デルタブレーキには、アジャスターの形状や内部のパンタグラフの構造の違い、カバー部分のカンパニョーロ盾のロゴがプリントか打刻かによって幾つか世代が分かれており、この個体は1988年頃に製造されたものです。

内部のパンタグラフは4ピヴォットの菱形になっています。

これが1990年頃に出た最終モデルのデルタブレーキでは5ピヴォットに変更され、制動力が上がっているようです。

デルタブレーキ

菱形の底の部分をワイヤーで引っ張り上げ、左右に出っ張った2箇所がスイングアームを内側から押し出す仕組み

デルタブレーキ誕生の経緯

ではいかにして、デルタブレーキというものが作られたのか。

1980年頃から、当時のロードレーサー(←ロードバイクを昔はこう呼びました)に「エアロブーム」が巻き起こりました。

リムやコンポーネントを空力的に有利と思われる形状に仕上げ、旧来のパーツとの差別化を図ろうというやつですね。

2020年現在に巷で流行っている「空力的に有利と思われるパーツやフレーム」と比べればチャチなものばかりですが、考え方としては先進的だったのかもしれません。

コンポーネントパーツにおいてその流れを生み出した鏑矢的存在が、イタリアのパーツメーカー「MODOLO」です。

MODOLO MORPHOS

MODOLO MORPHOS © MODOLO

MODOLOといえば、シマノとカンパニョーロ両方のインデックスに対応したブリフター「Morphos(モルフォス)」で有名ですが、今では当たり前な「エアロブレーキレバー(ブレーキアウターをバーテープ下に巻き込むタイプのブレーキレバー)」を初めて市販したメーカーでもあります。

そのブレーキレバーが「Kronos(クロノス)」という名前のカーボンレバーだったのですが、それとセットで売られていた「クロノスのブレーキキャリパー」こそが、エアロブレーキの先駆けだったのです。

Kronosに影響を受けた(と思われる)メーカーは結構多く、当時MODOLOに追随する形でエアロブレーキをリリースしたのは、シマノ、カンパニョーロ、HOOKER、WEINMANNといったところです(WEINMANNのエアロブレーキは、キャリパー本体はMODOLOのOEMでした。アジャスター部分のみWEINMANN内製です)。

Kronos自体は廃版になって久しいですが、現代のパーツメーカーでもKronosやデルタブレーキを模倣した製品は多く、確認できているだけでもFSA、ボントレガー、SIMKINS、TRP、マグラ、TriRigなどのメーカーが「エアロブレーキ」を出しています(いました)。

特に、一時期のTREK MADONEに組み込まれていたボントレガー製の専用エアロブレーキをご存じの方も多いでしょう。

TREK MADONE

洗濯バサミのようなブレーキを上からワイヤーで引いて作動させる構造はデルタブレーキそっくり(出典:トレックジャパン

1980年代のエアロブレーキはどれも短命で、ブレーキレバーは兎も角ブレーキキャリパー本体の販売期間が短いものがほとんどでした。

例を挙げると、シマノがデュラエースAXのブレーキとして発売したBR-7300は、1982年にデビューしたのち1984年にはBR-7400(普通のシングルピヴォットブレーキ)へとバトンタッチしてしまっています。

しかし、デルタブレーキだけは別でした。1985年に初登場したデルタブレーキは複数回の仕様変更を受け、最終的にはなんと1993年まで販売が継続されたのです。

1993年時点では、まだカンパニョーロからはデュアルピヴォットブレーキは出ておらず、翌年のレコードとコーラスのブレーキから変更されました。1994年型アテナやヴェローチェのブレーキは「モノプラナーブレーキ」と呼ばれる特殊なシングルピヴォットブレーキです。

カンパニョーロ 1994年のスペアパーツカタログより

出典:カンパニョーロ本国サイト 1994年のスペアパーツカタログより

デルタブレーキの性能について

肝心の制動力ですが、すこぶる悪いです。
よくこれを競技用ブレーキとして世に出したなぁという感じですが、KOOL STOPの赤色ブレーキシューに交換するとそれなりに効く、と聞いた事があります。

5ピヴォットに変更された後期型デルタはもうちょっとちゃんと効くよ、という意見もよく耳にしますが、いずれにせよ、現代のサイドプルブレーキの性能には遠く及ばないのは確かです。

1990年型のATHENAのブレーキ

1990年型のATHENAのブレーキ。前期型デルタブレーキよりもよっぽど効く

それ以上に問題なのが、ブレーキの引きが尋常じゃなく重たいという事です。

1980年当時のブレーキキャリパーのリターンスプリングは、現代のそれとは比べものにならないくらい強いものがほとんどなので、デルタブレーキが特に酷いという事はありませんが。

これを引いているブレーキレバーは2011年モデルのエルゴパワーで、前ブレーキは普通のデュアルピヴォットブレーキなのですが、前ブレーキをかけるのと同じような調子で後ろブレーキのレバーを握ろうとすると、あまりに引きが重すぎてレバーがピクリとも動きません。体感レベルで、2~3倍以上の握力を要します。

長距離ライドで多用すると、まず間違いなく右手が使いものにならなくなるでしょう。

フロントブレーキはデュラエース

不足するリヤブレーキの制動力を補うため、フロントブレーキはデュラエースにしてある

未だに人気を集めるデルタ

にも関わらず、デルタブレーキは根強い人気を誇っています。

他のエアロブレーキに比べて圧倒的に長い販売期間も理由のひとつかもしれませんが。

性能がアレなので、実際の購入層はレーサーではなく、パーツマニアやコレクター(筆者含む)が大半を占めると思われます。それ自体は不思議なことではありません。

しかし「デルタブレーキ」というと大抵のロード乗りはそれが何なのか認知できますが、「デュラエースAX」や「BR-7300」と聞いてピンとくる人は、それよりは少ないはずです。

「Kronos」に至っては、「何それ?」となる人のほうが多数派でしょう。クロノスがなければデルタブレーキも生まれなかったと言っていいくらいの存在なのに、これほどまでに認知度に差があるのも面白いですね。

補修パーツの入手の可否

上のほうで、デルタブレーキの展開図付きのスペアパーツカタログを載せました。

品番の振り方からして、かなり細かいパーツのひとつひとつであっても購入が可能であったようです。

2020年現在、これらのパーツは流石に入手不可に・・・なっているのかと思いきや、ブレーキシューだけは未だに新品が「メーカーから」買えるようになっています。

日本国内でいうと、ショップを介してカンパニョーロジャパンに注文すれば売ってもらえるという事です。

1985年のデビュー当初の品番は「7289003」、1988年には「7289008」へとマイナーチェンジ、1994年頃には「BR-DE021」に変わり、現在では「BR-REDE」と三度変更されています。

デルタブレーキ専用ブレーキシューホルダー

デルタブレーキ専用ブレーキシューホルダー。いもねじの先はスパイクになっていて、ブレーキシューを押すことでトーイン調整が出来る

こんな古い製品であっても永く使えるような努力をメーカー自ら行ってくれている、それがそもそも普通ではありません。

売る側の立場で考えるなら、何十年も前の自社製品をずっと使い続けるユーザーの相手をするのは手間でしかないでしょう。

ですが、こうした企業努力は長期的な視点で見れば間違いなくプラスに作用します。本当に凄い事です。自転車業界に限らず、大抵の企業にはマネできないと思います。

(トヨタ自動車も、旧スープラの補修部品の復刻をするようですね)

カーボンリム用ブレーキシューについて

ここからは割と実用的な内容になります。

21世紀を生きる現代サイクリストにとっての悩みの種のひとつが、デルタブレーキを如何にしてカーボンリム相手に使用するか、という事です。

(デルタブレーキを実使用するサイクリスト自体ごく少数派だろ、という指摘は受け付けません)

先ほども書いたように、デルタブレーキの販売は1993年いっぱいで終了です。

それに対して、カンパニョーロがカーボンリムの完組ホイールを発表したのは1994年の初代ボーラが最初なので、デルタブレーキの純正ブレーキシューにカーボンリム用のものが無いのは当然です。

1994年からレコードのブレーキはデュアルピヴォットになりましたが、このブレーキは(材質の変更などはありましたが)2006年まで大きな仕様変更無し、ブレーキシューに至っては現行品がそのまま使える為、入手は余裕です。

CORIMAのブレーキシュー

これを解決できるブレーキシューが、かつてCORIMAから出ていました。

先ほども書いたように「カンパニョーロ初の」カーボンホイールは1994年型ですが、ロードバイク界全体での最初のカーボンホイールはもう少し前から存在します。

コリマは1988年からフルカーボン製ディスクホイールの製造に着手しており、当時のブレーキ事情に合わせたブレーキシューがコリマ純正で存在するのはこれまた当然の事です。

コリマのブレーキシューの色は赤で、これは現行品も同じなのですが、上の画像のものより古い年代のブレーキシューは黄色でした。

「じゃあ、このブレーキシューをデルタブレーキのシューホルダーに取り付ければいいんだな!」と思ってしまいがちですが、そうではありません。

このブレーキシューはデルタブレーキのシューホルダーとの互換性が無いのです。

CORIMAのブレーキシュー

実際に取り付けたところです。ブレーキシュー以外は全て純正のままにしました。

元のブレーキシューとコリマシューで微妙にサイズが異なるため、ギリギリでシューホルダーに収まっておらず、0.5mmほどはみ出しています。

また、シューホルダーのくびれに合わせてヤスリで削っておけばよかったところを無理やり押し込んだため、端っこが若干ヒビ割れています。この程度ならば問題はありませんが。

普通に使えそうに見えますが、この状態で組みつけると、ブレーキシューとリムとの距離が異常に遠い状態になります。

それだけでなく、ブレーキシュー下部の羽根がシューよりも出っ張っており、ブレーキシューがリムに触れるよりも先に羽根とリムが当たってしまうため、ブレーキをかけられません。

下の画像を見てもらうと分かりやすいですが、純正シューとコリマシューでは厚みが全然違うんです。

純正シューとコリマシュー

ノギスで調べたところ、純正シューの厚みが約12.8mmであるのに対し、コリマのシューは約9.1mmしかありません。

純正シューとコリマシュー

純正シューとコリマシュー

左右合わせて実に7.4mmもの差が出る事になります。

ワイドリムホイールに履き替えるという力技に頼れば何とかなる可能性はありますが、フレーム側の事情でワイドリム化が困難(というかほぼ不可能)であるため、それは選択肢にはなりえません。

加えて、ブレーキシューの羽根を外さないと、いずれにせよ実使用は不可能なのですが、「デルタブレーキ本来の外観」というのをなるべく損ないたくないのです。

ではどうするのかというと、「コリマ製のブレーキシューホルダーを使う」というのが正解になります。

コリマ製のブレーキシューホルダー

上の画像が、コリマ製のブレーキシューホルダーです。

もっと上のほうに貼ってある画像にもしれっと写り込んでいますが。

このシューホルダー、見て分かる通り、上下に分割されたホルダーを小さなキャップスクリューで結合してブレーキシューを保持するというとんでもない作りになっています。

それなりのトルクでボルトを締めなければブレーキシューを保持できず、かといって少しでも締め付けトルクが大きいとシューホルダーが破損しかねない、なかなかにふざけた設計なのですが仕方ありません。

実際、2つあるシューホルダーが「未使用であるにもかかわらず」小さなクラックが入ってしまっています。

コリマ製のブレーキシューホルダー

シューホルダーのボルトを緩めて分解したところ

デルタブレーキをはじめ、カンパニョーロのブレーキキャリパーにコリマのシューホルダーを取り付ける場合、ブレーキシュー固定ボルトを呼ぶナット部分を交換しなければいけません。

これは現在でも同じなのですが、シマノとカンパニョーロではブレーキシューの固定方法が異なり、それによってブレーキシュー固定ボルト(またはナット)を通すスリットの前後幅が違うため、それぞれの形状に合わせた調整が必要なのです。

画像左が標準装備のナット、右の長ナットがカンパニョーロ用

画像左が標準装備のナット、右の長ナットがカンパニョーロ用

特にデルタブレーキの場合、トーイン調整用スペーサーが綺麗に収まるように、スイングアームの裏側が段付きになっているので、長ナットに交換しないとシューホルダーの使用は実質不可能です。

下の画像は、ブレーキシューとスイングアームの間に挟むスペーサーですが、ナットの外径とスペーサーの内径がほぼピッタリになっており、「この状態であれば」シューホルダーに対してスペーサーの位置が一ヶ所に定まり、セッティングに支障をきたす事もありません。

長ナットにスペーサーがピッタリはまった様子

長ナットにスペーサーがピッタリはまった様子

短ナットの場合、ナットの端面がシューホルダーのツラから出ず、スペーサーの内径と取り付けボルトの外径との差の範囲内でスペーサーが上下に動き、取り付けが非常にしづらいです。

シュー固定ボルトに必要な全てのパーツを通した状態が下の画像になります。

ボルトの首下のワッシャーは、デルタブレーキではなくブレーキシューの方の付属品です。

羽根だけはボルトと穴の隙間を埋める手段が無いので、固定ボルトを締め切るまでは上下前後にカチャカチャ動きます。

デルタブレーキ

こうなっていればOK

そして、シュー交換後の外観がこちらです。

デルタブレーキ

どうでしょうか。遠目にはブレーキシューを換えた事すら判別しにくいと思うのですが。

スペーサーによってシュー位置を内側に突き出してあるので、羽根とリムの干渉も起こりません。

恐らくはこれを狙って設計しているのだとは思いますが、ボルトの首の外径がスイングアーム外側の窪みともピッタリになっているのが良いですね。

デルタブレーキ

羽根の上下位置ですが、シューに当たらない範囲でなるべく上に上げた方がいいです。

というのも、アーム内側にはスペーサーを収める段とは別に、羽根の向きを決めるスリットが別で設けてあり、羽根を下げすぎるとスリットからはみ出してしまうのです。

デルタブレーキ

その他注意事項

デルタブレーキの組み付けには、5mmのヘックスレンチの他、3.5mmヘックスレンチという特殊な工具が必要です。

デルタブレーキ

3mmや4mmと異なり、自転車以外の規格でもほとんど使われていないらしく、普通のヘックスレンチのセットを買っても3.5mmは含まれていませんし、これを単体で販売しているところもあまり見かけません。

そこで、これはデルタブレーキユーザーの間では有名な小技なのですが、3.5mmの六角ねじはT20のトルクスレンチで回す事ができます。

T20であれば、大抵のトルクスレンチセットに含まれていますし、ビットソケットのトルクレンチに付属している事も多いです。

あくまでも「代用可」なだけであって、推奨する訳ではないのですが。

また、ワイヤーを通してセッティングをする際、左右のスイングアームの外側の面がブレーキの「がわ」とツライチになるよう調整するのはデルタブレーキユーザーの嗜みです。

リム幅によっては無理ですが。

デルタブレーキ

ここがツライチでないとカッコ悪い気がします

最後に

近頃は某ウィルスの流行のせいで、ロングライドはおろかポタリングでさえ少し躊躇してしまいますよね。

Zwiftでも出来ればいいのですが、筆者の部屋はちょっとローラー台を回せるほどの防音性が無いので、休みの日はこうして自転車を眺めたり弄ったりするくらいしかする事がありません。

この記事の実用性がどうこうは置いておいて、暇な時の読みものとして眺めてもらえればいいな、と思って書きました。

少しでも退屈な感じがやわらげばいいのですが…。

著者
PHILLY

京都に生息するロードバイク専門サイクリストにしてランドヌール見習い1年目。初めてのブルベを寝坊でDNS。愛車はラグカーボンバイクと軽量アルミロード(軽いとは言っていない)、最近新たに迎えたシクロクロスが1台ずつ。自他共に認める甘党であり、ドリンクボトルで如何にしてタピオカミルクティーを持ち運ぶか考え中。山に囲まれた地域に住んでいながら平地のサイクリングにうつつを抜かしてばかりの今日このごろ。

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