実家の豆腐店の配達を手伝っていたnadokazu。
彼の駆る車Pacific CarryMe、そして彼自身は
とんでもないポテンシャルを秘めていた。
公道最遅伝説。ここから、神話が始まる。
というわけで、今回の駄文はこちら!
「霞ヶ浦を一周しろ」と、キャリミが言っている。
ここ数年参加し続けている、クエスト形式のサイクリングイベント「サイクルボール」が開催6年目に突入しました。
▼ 参考記事


霞ヶ浦一周、通称「かすいち」はサイクルボールの定番コース。基本は「期間中いつ走ってもOK」のフリーライド形式ですが、今年は5月3日に公式イベント「チャレンジDAY」が開催されました。

公式サイトより引用
参加費3,000円でエイドとサポート、さらに保険と記念品が付く大盤振る舞い。こんなん実質無料ですやん!申し込まない方が損!ルートイン土浦での前泊も手配して、レディ・パーフェクトリー!
今年のコース設定は湖畔からほぼ離れない、ポピュラーな「かすいち」になっています。坂がないド平坦で、難易度はゼロ同然。Tyrell FSXのほかにTyrell IVE16やDAHON K3での完走経験もありますから、走る前から勝ちは確定。まぁ、控えめに言って楽勝ですわ。
と、余裕こきまくったところで、考えてみたのです。自分が参加するイベントの名称は「チャレンジDAY」。それなのに、ちっともチャレンジになっていません。これって、どうなんでしょう…?
そのとき!こんな思いつきが、脳裏をよぎりました。
「霞ヶ浦一周にキャリミを使えば、チャレンジになるんじゃね?」
それは「やってはいけないことに手を出してみたくなる」幼稚な心が生んだ、あまりにも愚かな発想。だいたい自分はタイムラインでお見かけする超人の皆様とは違う、劣等自転車乗りでしかありません。明らかに無理!無茶!無謀!
だけど!!
徒町は、ここで──何かを成し遂げたいです!!
ちぇすとーーー!!
時間はかかるけど、完走できる!完璧なシミュレーション結果!!
以前、つくばりんりんロードの旧筑波鉄道区間をキャリーミーで往復したところ、所要時間は約4時間46分。平均速度は、約17km/hでした。
▼ 参考記事

りんりんロードもかすいちも圧倒的な平坦ですから、同等のペースで走れると考えて間違いありません。ということは、フルで霞ヶ浦を一周しても約7時間と少々で走りきれる計算になります。イベントの制限時間(17時)までにゴールすることだって、余裕!楽勝!!
走行時間は普段よりホンの少しだけ増えますが、完走タイムはDAHON K3やTyrell IVE16との比較データにもなります。
それに「キャリミで霞ヶ浦を一周するチャレンジに成功した!」という経験は、自己肯定感を爆上げしてくれるでしょう。
「俺様すげぇ!」という自己満足に浸りたい!
そんな下卑にもほどがある動機のもと、キャリミをクルマに積み込んでスタート地点の茨城県かすみがうら市交流センターに向かいました。
チャレンジ失敗!成果一切なし!終了!!
結果から申し上げます。拙者、負け申した。
「サイクルボール かすいちチャレンジDAY」にキャリミで参加して、霞ヶ浦をフルで一周。余裕の時間内ゴールで自己満足に浸れるはずが、実際に走ってみたらあまりにも遅すぎて完全にタイムアウト。西浦の高浜側およそ36kmを残したまま、霞ヶ浦大橋でショートカットして這々の体でスタート地点に戻るハメになりました。
すなわち、撤退・敗走!!
実に情けない終わり方で、「惨敗」と言うしかありません。負けるべくして負け、見苦しく無様な姿を湖畔に晒しています。
完走時間が取得できなかったので、過去データとの比較も不可能。労力と時間と交通費と宿泊費と参加費を費やして、タイトル詐欺をリアル化しただけです。
このチャレンジで自分が手にしたのは、ゼロどころかマイナスでしかない結果。「敗北」という現実を、骨の髄まで突きつけられています。
我々は…今回も…
なんの成果も!!
得られませんでした!!
私が無能なばかりに……!!
微風スタート!チャレンジ大成功の予感!!
霞ヶ浦一周を試みたとき、最大の阻害要因となるのは激烈な向かい風。けれど、予報を見る限りでは
- スタートから和田公園の手前ぐらいまでは、横風メインの微風。
- その先の北利根橋までの短い区間で、若干強めの向かい風。
- しかし!そのあとは高浜まで、強風追い風ボーナスステージが続く!!
という感じでした。
つまり「向かい風区間でちょこっと頑張れば、あとは追い風に乗って最終ステージまで辿り着ける」ということ。ブリーフィングでスタッフの方も仰っていましたが、「今日の霞ヶ浦は当たり」です!
わたくし、また日頃の行いの正しさを証明してしまいましたわ〜。
スタート地点には、サイクルボールのスポンサーでもあるホイールブランド「VRECORD」がブースを出していて、宇都宮ブリッツェンの廣瀬GMにお目にかかれました。とちぎテレビの「RideOn!」が大好きだったので、これは嬉しいぞ。
そして、いよいよスタート時間。廣瀬GMとかすみがうら市の公式ゆるキャラ「かすみがうにゃ」に見送られながら、チャレンジ開始です。気分あっがるぅー!
距離はあるけど、ド平坦。ペダルをクルクル回して、チェックインスポットとエイドで休憩しつつ走ってゴールするだけの単純作業にすぎません。後半には追い風ボーナスも待っている…はずだったのですが!!
走り出してから100mも行かないうちに、自分の脳内をこんな感情が支配するようになりました。
「あれれ〜 おっかしいぞ〜 キャリミって、こんなに進まなかったっけ?」
極小径ホイールで、シングルスピード。キャリーミーは、あらゆるステータスを可搬性に全振りしている自転車です。その走行性能は「普通の自転車」よりも、明らかに低い。このことは、すでに200km近いキャリミでの走行経験があるのでキッチリ認識しています。それにもかかわらず「進まない感」を、強く感じてしまうのです。
17km/h予定だった走行ペースは、15km/hで頭打ち。でもまぁ、脚が温まってくればペースも上がるでしょう。ネコミミ山を背景に写真を撮りつつ、最初のチェックインスポット、りんりんポート土浦に到着しました。
100名を超えるイベントの参加者が、すでに誰も見当たらない…という不都合な真実から目を逸らしつつ、チェックイン操作だけ済ませて早々に再スタート。
そして水郷橋を渡って進行方向が変わった途端、さらに巡航速度が低下しました。…いったい…これはどういうこと…?
キャリミを止めてみると確かに横風に加えて若干の向かい風を感じますが、無風に毛が生えた程度で普段乗っているミニベロロードなら気にも留めないレベル。
なんですが!もう認めざるを得ないでしょう。
- 乗っている自転車がキャリミ。
- 乗り手が自分みたいなへっぽこ脚。
この2つの条件が揃うと、微風ですらクリティカル攻撃へと簡単に変貌するのです。
土浦までは15km/hで走れていたのに、13km/hにまで巡航速度が下落。普段のサイクリングであれば、1〜2km/h程度の速度低下なんて微差でしかありません。しかしながら、今日は事情が違います。
たとえば28km/hから26km/hへの減速であれば、ペースダウン率は約7%。1割にも満たないチョロさです。けれどキャリミの速度域だと、同じ「2km/hの減速」でも15km/h→13km/h。ペースダウン率は13%以上で、2倍近くになってしまう。「ペダルを必死に回しても、自転車が前に進んでくれない感覚」の違いはもう絶大。
すでに何度も走ったことのある、霞ヶ浦の湖畔を以前と同じようにサイクリングしている。それなのに、絶望的なほど前に進みません。霞ヶ浦総合公園から、平和記念公園までの3km程度ですら、果てしない時間がかかります。霞ヶ浦って、いつから琵琶湖サイズに拡張されたの?
おかしいやん
ちょっと風が吹いただけで
全然進まんくなるなんて
これは絶対タイムスリップしとる
これはきっと陰謀や
うちらに霞ヶ浦一周されたら
困るヤツがなんやかんや
しとんのや
絶望の向かい風!涙の押し歩き!!
いくら自分の脚力がへっぽこだとはいえ、まだ50kmも走っていません。ペダルだって、それなりのケイデンスで回せているはずです。それに撮影で少し停車する以外はノンストップですから、可能な限りのスピードで走っています。
それなのに…それなのに!!
普段とは、あまりにも違うキャリミの巡航速度。スタート前に各チェックインスポットの通過目安時刻が書かれたコース図が配られているのですが、2つめのチェックインスポットに辿り着けていない段階で、すでに1時間どころじゃない遅れです。
いつもならとっくに通過している場所にだって、まだ近づいてすらいない。
おわかりになりますか!? この無力感が! 絶望が!!
しかも「ほんとうの地獄」は、まだ始まってすらいなかったのです…。
稲敷大橋を過ぎて進行方向が変わったところで、向かい風の攻撃が本格化。ただでさえ遅い巡航速度が、さらにさらに低下します。旅行に来たのであろう一般女子が乗っているレンタサイクルにすら、あっさりチギられる体たらく。
一切弱まることのない向かい風を受け続けながらの走行に、へっぽこ脚が音を上げました。斜度0%のド平坦なのに、自転車を降りて押し歩きです。
なんという屈辱っ…!
こんな体験をしたのは、さすがに初めて。向かい風吹きすさぶ霞ヶ浦の湖畔をひとりトボトボ歩いていると、完全に心が折れました。
「ギブアップーーーーーーーー!!!!」
無限に続く道!ゴール地点が遠すぎる!!
もうイヤだ!ダメ!これ以上は無理!!ここでリタイアして、サポートカーに回収してもらうことにします。チャレンジ大失敗。いいですよ、それで!SNSには何も投稿せずに隠蔽して、今日のことは「無かったこと」にしますから!!
道路脇にキャリミを寄せ、本部に泣きの電話を入れようとスマホを取り出しました。
いや…でも…ちょっと待てよ?
このタイミングにサポートカーでゴール地点に戻ってしまうと、先行してゴールされている皆さんと思いっきり鉢合わせしちゃいます!すると…
「キャリミのおっさん、リタイアかよ(嘲笑)」
「勘違いしてたんだね。可哀想な奴(冷笑)」
「戦闘力…たったの5か…ゴミめ…(失笑)」
などなど、嘲りと悲哀の視線を向けられてしまうでしょう。
こんな状況でも、悲しい見栄を捨てきれない。実に残念な虚栄心だけをモチベーションに、再びサドルに跨がりました。
ちなみに、今日のリアビューレーダーはBryton!
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ようやく北利根橋を過ぎて、追い風ボーナスゾーンに突入。それでも巡航速度は上がらないまま、15km/hが精々です。
3つめのチェックインスポットであり、エイドでもある天王崎公園(5月3日のイベント限定)への到着は14時過ぎになりました。目安時刻が11時20分なので、実に3時間近い遅れです。1人分だけ残っていた、補給食のおにぎりをパクつきます。
そしてこの時間になれば、大半の方はゴール済み。サポートカーで戻っても、大丈夫な頃合いです。スタッフの方にリタイアを告げようとすると、
「ショートカットでゴールされますよね!?(圧)」
「アッハイ…」
あっさり逃げ道を塞がれてしまいました。
しばらくベンチで呆けていたいところですが、ショートカットしたとしても残り時間は僅か。食べ終わったら即リスタートして、地獄の旅路の再開です。
ホンの数キロ先にあって展望台もバッチリ見えてる「道の駅たまつくり」が、踏んでも踏んでもいっこうに近づいてこない!この道、もしかして無限に続いてませんか?
ようやく辿り着いた霞ヶ浦大橋を渡って、敗北のショートカット。これでチャレンジ失敗は確定ですが、口惜しさよりも「1秒でも早くゴールしてこの地獄から解放されたい!!」という気持ちで頭がいっぱいです。
だがしかし!
霞ヶ浦大橋の歩道って、タイル貼りなんですよね。普通の自転車はともかく、極小径車のキャリミにはキツい路面状態。というわけで、ここでも押し歩きになりました。
敗北のまとめ
キャリーミーで霞ヶ浦を一周したら、霞ヶ浦大橋でショートカットしても約8時間かかりました。距離はおよそ95kmなので、平均速度は12km/h。結構頑張って踏んだつもりだったのですが、自分の脚力だと、これが…もう…限界…です…。
普段から14〜20インチの小径車に乗っているので、700cのロードバイクとは比較にならない慣性モーメントの小ささには慣れています。それでも、キャリミはやっぱりレベチでした。平坦を走っていても、ずーっと登坂し続けているような感覚。無風状態ですら斜度1〜2%レベルの負荷がかかる感じで、向かい風になると重めのギアで斜度5%超えを踏んでいる錯覚に囚われます。
感じたキツさで言うと、先日走った走行距離200km・獲得標高2,729mのブルベ(BRM406定峰200)すら上回ります。いやー、想像より遥かに厳しい戦いでした。
自分みたいな普通以下の脚力しかない「持たざる者」にとって、キャリミは「ピーキー過ぎてお前にゃ無理だよ!」と言われてしまうマシンなのです。悲しいけどこれ、現実なのよね。
そう、ツラい思いをしたのは、決してキャリミのせいじゃない。ただ自分が愚かだった、それだけなのです。「俺様すげえ!」という満足感に浸って自己肯定感を爆上げするはずが、「己がゴミカスで無価値な社会の寄生虫だった」という事実に改めて向き合わされました。生きててすみません…。
キャリミでの走行中は、道行く方々からガン見されること多数。「カワイイ自転車〜!」という声を聞くことだって、全然珍しくない。こんなにキュートな自転車なのに、霞ヶ浦を一周しちゃおう!とか考えることが、そもそもの間違いなんですよ。
公共交通機関での可搬性においては、どんな自転車の追従をも許すことがないキャリーミー。「大したことのない距離を、歩くより少しだけ速く走る」ぐらいの用途に使うのが、やっぱりベストな使い方に思えます。
こんどキャリミで走るときは、ゆるゆる街歩きサイクリングにしよう…。と、心に刻み込みました。沼津…はもう何度も行ってるから、豊橋とかどうでしょうねぇ?
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