シリーズ「伊豆諸島を自転車で探検してみよう!」第4回では、自転車で走る新島の魅力について書いてみたいと思います。新島は、走れる距離こそ長くはありません。しかし圧倒的な美しさの海景は間違いなく一見の価値があり、自転車は島巡りに大いに役立ちます。
ロードバイクでも良いですが、小径車でも十二分に楽しめる島です。この記事では筆者の体験をもとに、新島サイクリングをご紹介していきます。
▼ この連載シリーズの第1回〜3回記事です。未読の方はこちらも是非お読みいただけると幸いです
新島へのアクセス
まず新島がどこにあるかを把握しておきましょう。大きいイメージとしては、大島と神津島の真ん中近く。ジェット船なら東京・竹芝桟橋から約2時間30分ほど。大型客船では夜10時に竹芝を出ると、翌朝の7時30頃に到着します。大型客船で早朝に着いてから一日たっぷり走り回り、一泊して翌午前のジェット船または大型客船で帰って来る、というのが標準的なプランかもしれません。
船が到着するのは基本的に新島港(黒根港)です。海況が悪い時は、ジェット船に限り島北部の若郷(わかごう)漁港に着くことがあります。
空路は東京・調布飛行場からの新中央航空のみです(所要35分)。
新島には大きいキャンプ場もあります。また隣の式根島は「連絡船にしき」で15分の距離なので(基本的に1日3便)、2泊して新島・式根島をセットで楽しむ計画を立てるのもありでしょう。
新島サイクリングの概要・留意点など
新島でのサイクリングは、基本的に島の南部がメインになると考えて良いでしょう。下の地図で赤線で囲ったエリアです。というのも、島の北部(若郷地区)に行くには「平成新島トンネル」を通る必要があるのですが、トンネルを通行できるのは自動車のみだからです。
そのため若郷地区も走りたい、となれば、自転車をバスやタクシーで運ぶしかありません。万一悪天候でジェット船が若郷漁港に着いた場合なら、そのまま若郷を走れますが、それでも島の南部に移動する時にはやはりクルマで自転車を運んでもらう必要があるので、注意が必要です。
新島港の周辺はいちばん栄えているところで、集落のかたまりかたは神津島によく似ています。宿は新島港のまわりに集中しています。キャンプ場は島の反対側、羽伏浦(はぶしうら)海岸側にあります。
新島は神津島や八丈島同様、ひょうたんのような形をしており、島北部の「宮塚山」と南部の「向山」のあいだの谷に、本村(ほんそん)という大きい集落がある、というイメージです。
レッツライド!
それでは一緒にバーチャルライドに出かけましょう。
新島港で下船後、すぐに数多の新島名物「モヤイ像」が目に入ります。新島特産の「抗火石(コーガ石)」から出来ています。JR渋谷駅のモヤイ像もここ新島から贈られたもの(竹芝桟橋やお台場にもあります)。イースター島の「モアイ」を連想しますが、「モヤイ」は「助け合う」という意味の島言葉「もやう」に由来するのだそうです。
まずは本村のメインストリートに入り、島の真ん中の市街地をサイクリングすることにします。宮塚山と向山のあいだの平地を回る、1周約10kmのコースです。
島東側の羽伏浦海岸に向かいます。突き当りの左手には羽伏浦キャンプ場があり、その先には平成新島トンネルが続いています。しかし先述の通りそのトンネルは自転車通行禁止のため、羽伏浦海岸側はこのあたりまでしか走れません。
羽伏浦キャンプ場は広々として素晴らしかったですよ。伊豆諸島のキャンプ場の中では最大規模だと思います。ただ神津島同様、西風がものすごく強いのでそこは要注意。
羽伏浦海岸へ
キャンプ場の近くから、羽伏浦海岸に抜けます。これは「メインゲート」と呼ばれる建物で、ものすごく写真映えするスポットです。
メインゲートの向こうに渡ったところ。ここから見る新島の海の美しさは、まったく想像していなかったもので、圧倒されました。伊豆諸島では神津島の海も大変美しいのですが、新島ではコバルトブルーに加えてエメラルドグリーン寄りの色も印象的でした。下の海岸はずっと奥まで歩いていけるのですが、海岸は後でまた寄ることにします。
メインゲート脇の舗装路を南下し、新島空港の隣の道を通りすぎます。このあたりから農道的な雰囲気になります。
途中で左側に「堀切階段入口」という小さい看板を見かけたら、自転車を停めて小径を抜け、長い階段を下っていきましょう。すると地元のサーファーが大切にしていると言われる、「シークレット」という有名なスポットに降りていけます。
海岸はこの「シークレット」から南に歩いていくのも良いと思います。ここは「白ママ断崖」と呼ばれるところで、三宅島から見てもはっきりそれとわかるほど長く巨大な白い崖が続いていて、圧巻です。
湯の浜露天温泉へ
農道はシークレット先でやがて行き止まりになるので、右折して島の西、新島港方面に向かいます。この崩壊したギリシャ神殿風の建物は「湯の浜露天温泉」。24時間営業で、水着で入れます。足湯もあるので寄っていきましょう。
湯の浜露天温泉のすぐ隣には「鳥ヶ島」があり、中段まで登っていけます(スリルがあって楽しかった。ここで釣りをしている人が結構いました)。この付近は「間々下(まました)海岸」といいます(ママ=崖、を意味する古語らしい)。
自転車を停めて石山を歩く
さて、本村一周コースを少し戻り、親水公園の先で「向山林道」に入ります。林道はやがて分岐し、右に行くと「石山トレッキングコース」の入口に辿り着きます(「石山」は「向山」の中の小さい山、というイメージ)。ここに自転車を停めて、往復90分ほどの山歩きを楽しみましょう。この先は、自転車の乗り入れが禁止です。
実はこのコースの終点は、先ほどの「向山林道」のずっと先のほうに通じています。そのため自転車を担いでいけば、ピストンで戻って来る必要はないのですが、白くて大きいコーガ石がゴロゴロ転がっていて足場は良くありませんし、距離も大したことはないので、のんびり徒歩を楽しんだほうが良いと思います。
ほんの少しですがロープを使う道もあり、自転車を担いで歩くのは結構大変だろうと思いました(8kg前後のロードバイクであれば不可能ではないかもしれませんが)。
下の写真で洋上の手前に見えている平べったい島は、お隣の式根島です(行政区分的には新島村)。その向こうに見えているのは、神津島。神津島の手前左あたりが、この石山トレッキングコース終点の広場です。
石山トレッキングコースの終点には、新島観光パンフレットでよく目にする立派なモヤイ像があります。ここを左折して下っていく舗装路があり、それが向山林道に通じているというわけです。
島の最南端へ
先ほどのモヤイ像から下ってくると、向山林道のこの場所に出てきます(向かって右側の道の先にモヤイがある)。山歩きにあまり興味がない方は、ここからモヤイ像のある広場に出て海を眺める、という方法もあります。しかし石山トレッキングコースは新島観光のハイライトとも言えるので、歩かない手はないかなと思います。
向山林道コースを辿っていきます。林道といっても路面状態は非常に良く、距離は短いながらも程よいアップダウンのライドを楽しめます。
林道の最南端に至ると「寄り道」コースがあり、しばらく下っていくと突き当りとなり、左側に自衛隊の施設があります。右側も防衛省の敷地で、立入禁止になっています。
この突き当りからは早島(はんしま)という離れ小島を眺められます。早島の向こうにうっすらと見えているのは、三宅島と御蔵島です。このスポットまで立ち寄れるのは自転車ならでは、という感じで、得した気分になります。
大峰展望台からの新島の眺め
早島を眺めたら向山林道に戻り、「大峰展望台」へ。展望台からは新島の谷に位置する本村地区と、その向こうにある宮塚山方面を眺めることができます。
この場所は、八丈島でいうとちょうど「登龍峠」のようなスポットで、新島がひょうたん型の島であることを体感できます。
まとめ
さて、新島の本村一周コースの北側には「富士見峠遊歩道コース」というものがあります。島北部の宮塚山に向かって伸びている道です。しかし、残念ながらその7kmの道は、自転車の通行が許可されていません!
それは八丈島でいうなら、島北部の八丈富士方面には走っていけない、というのと同じで、サイクリスト的には残念なところです。
新島は、そういうところも考えると伊豆諸島の中では「サイクリストフレンドリー」とはあまり言えないところではあります(※レンタサイクルなどはありますし、サイクリストが歓迎されていないわけではありません)。
しかしビーチやマリンスポーツにはあまり興味がない私でも、新島の海の美しさには心底感動しましたし、走った距離こそ短かかったけれど、自転車での新島巡りは心から楽しめるものでした。
サイクリングをメインの活動として訪れるというより、新島という素晴らしい海景を味わい尽くすために、その手段として自転車を便利に活用する、という感じで訪れると良いのではないかと思いました。自転車もほどほどに楽しむけれど、山歩きや温泉もたっぷり楽しむ、という感じが良いような気がします。
最後に、新島での食べ物の印象を書いておきます。
新島の人々は、めっちゃグルメだな〜! と思いました。そして食いしんぼう。どこで何を食べてもボリュームたっぷりで、おいしい食事ばかりでした(「くさや」もたくさん食べてきました。うまかったー!)。