サイクリング

伊豆諸島を自転車で探検してみよう!「大島」以外で私がサイクリストに推したい島【第1回・三宅島】

東京・伊豆諸島の「大島」は、首都圏の多くのサイクリストが既に楽しく走られていることと思います。この不定期連載では、そんな離島サイクリングの定番である大島以外にも注目し、私が読者の皆様に推したい伊豆諸島の島々を紹介したいと思います。第1回の推し島は「三宅島」。

三宅島のシルエット(神津島から望む)

三宅島のシルエット(神津島から望む)

▼ 大島の記事も読みたい方はこちらも是非!

関連 東京・伊豆大島!日帰りできちゃうお手軽な異世界【都心から最短1時間45分】

遠いけれど比較的短時間で着く

三宅島は、伊豆諸島のなかではやや遠めのところにあります。東京都心からは、直線距離で神津島とほぼ同じ約180km先に位置します。神津島と並んで「伊豆諸島のド真ん中」という感じです。

東海汽船の航路図

東海汽船ホームページより引用(赤枠は筆者)

東海汽船の船で行く場合は、ジェット船が就航していないため大型客船(橘丸)に乗るのですが、神津島に行く場合は夜10時出発・翌朝10時到着と12時間もかかるところ、三宅島に行く場合は夜10時半頃出発、到着は翌朝5時と、6時間半で着いてしまいます。船内でのちょうど良い睡眠時間になります。遠いけれど意外に近い、それが三宅島。おやすみおはよう三宅島。

なお調布飛行場から新中央航空の飛行機も出ています。空路ならなんと50分(飛行場に行くまでがちょっとかかりますけれど)。

一泊でも行動時間を長く取れる

客船は早朝5時に到着するため、一日の行動時間を長く取れるのも良いところ(季節によっては日の出まで1時間ほど真っ暗だったりしますけれども)。客船の到着が朝6時になる伊豆大島も似たところはあるのですが、伊豆諸島のその他の島に比べると行動計画を組み立てやすいとは言えます。

橘丸

東京方面への上り便は13時半頃。一泊の場合でも、初日は日の出から日没まで存分に走り回り、夜は美しい星空を眺めに出かけ、翌日午前のライドもたっぷり目に楽しむことができます。

メジャーな観光スポットが一周道路のそばにある

三宅島の主要な観光スポットが島の一周道路沿いにあるところも、実にサイクリング向きです。

三宅島ジオMAP

ひょうたん山・三七山といった小さい火山も道路から歩いて3分だったり、メジャーな名所は回りやすい印象を受けます(見晴らしの良い「七島展望台」などは林道で登る必要があります)。

ひょうたん山

歩いて楽しい火山地形がたくさんあるので、SPD-SLな方は別途歩きやすいシューズの携行をおすすめします。SPDシューズならまず問題なし。トレランシューズでも行けます。

ひょうたん山

これまた大島に近い感じではあるのですが、三宅島は大島よりもコンパクトで、大島一周がきついな〜と感じた方でも少し余裕を持って回れると思います。

道の状態がいい

三宅一周道路は、路面の状態が非常に良いです。道の幅や雰囲気は大島に似ていますが、たぶん舗装が新しいところが多めなのかなと思います。この一周道路に限っていえば、ロードバイクはもちろん小径車でも存分に楽しめます。

三宅一周道路

坂もそれなりにあり、多段ギアの自転車のほうがベターですが、獲得標高も最大勾配も大島一周を超えることは、まずないでしょう。ほど良いヒルクラ向きの林道も数本あります。次に紹介するオフロードも含め、三宅島はオールラウンドなサイクリングを楽しめる島だなと感じます。

オフロードも楽しめる

三宅島は林道も充実しています。現在は立入禁止になっている島の中心・雄山(おやま)のまわりに「雄山環状林道」があります(東側の3分の1強は通行止め)。距離は短いものの、ダートやグラベルも楽しめます。また、環状林道には三の宮林道・土佐林道・坪田林道・村道雄山線・南戸林道・伊ヶ谷林道など、いくつかの里道が通じています。

雄山環状林道

筆者の印象では、700×28タイヤのロードバイクでも、短い区間を押し歩く必要はあるかもしれないけれど大部分は走り切れるだろう、と感じました。伊豆諸島最大の淡水湖・大路池の近くも良いオフロード。東京西部の狭山湖付近を走れるような自転車なら、何を使ってもなんとか走り切れると思います(快適に走り切りたい場合は35mm以上推奨)。

大路池に至るグラベル

観光地として整備されすぎていないのがいい

三宅島は、もちろん島を挙げて観光産業の振興に取り組まれていると思います。しかし、例えば大島などと比較した場合、手取り足取りの親切な道標は少なかったり、道には迷いやすいところ、観光スポットの入口がわかりにくかったりすることもあります(大島を基準にしてしまうと他の伊豆諸島は大体そうではありますけれども)。

伊豆岬

公衆トイレも、どこもピカピカというわけではありません。商店も食事処も、多いとは言えないかもしれません。しかし三宅島の「観光地としてガチガチに整備されすぎていない」そうしたところが、私にとってはむしろ大きい魅力になっています。

伊豆岬サイクリングロード

至れり尽くせりのサービスを期待して「お客さん」として訪れてしまうと、期待とは違った、ということになる場合も、あるかもしれません。その意味では、旅の上級者向け。ちょっとした不便も旅の一部として積極的に楽しめる・楽しみたい、島の時間の流れを感じ取り、島の生活を理解しながら観光したい。そういう方に向いている島ではないかと考えています。

大自然感は大島に劣らない

ここまで比較対象として、何度か大島の名前を出してきました。それは三宅島と大島が、まるで兄弟であるかのように似たところがある、と感じてきたからです。

島の中心にズドンと巨大な火山があり、地質は黒いスコリアが中心。ひょうたん山はミニチュアの三原山のような雰囲気ですし、一周道路の北の「伊豆岬サイクリングロード」は「サンセットパームライン」を想起させ、「新鼻新山」の断崖は「トウシキ園地」を思わせる風景です。林道のつながりかたも、よく似ています。

伊豆岬サイクリングロード

しかし火山活動によって生まれた三宅島各所の景観は、時に大島よりも荒々しく、ダイナミックで、より生々しく感じられるところが多々あります。人の手があまり入っていない大島、とでも言えるかもしれない、と私は思いました。あえて一言で言うなら、やはり「生々しい」。英単語なら”RAW”。洗練はされていない。そして、それが良い。そういう印象を持ちました。

新鼻新山

美しい星空も、神津島や新島同様に楽しめます。三宅島から望む伊豆諸島のシルエットも絶景です(特に新島が美しい)。気候や植生は八丈島に近いところもあります。大島さんがもっと南寄り・黒潮寄りに転生したら三宅さんだった、という感じでしょうか。大島とはだいぶ距離が離れているんですけれども。

七島展望台

三宅島名物? 出帆港ロシアンルーレット

三宅島には、大型客船が発着する港が3つあります。西に伊ヶ谷港と錆ヶ浜港。東に三池港。東京方面の上り便は、八丈島・御蔵島方面からやってくるのですが、どこに入港するかは出港の2時間ほど前にならないとわからないロシアンルーレット。

三池港

無論、2時間あれば三宅島のどこにいても、余裕を持ってどの港にも辿りつけるのですが、輪行袋を使わずに自転車をコンテナで運んでもらう場合は問題になることがあります。受託手荷物は、出港の約1時間前までに預ける必要があるからです。そのため直前の行動をどう組み立てるか、悩ましい時があります。

橘丸

今日は三池港の出発だな、まぁ間違いないだろう、などとヤマを張って「サタドー岬」の崖でのんびり遊んでいたら、今日は島の反対側の伊ヶ谷港だと知り、観光気分から一転、鬼の形相で島を半周する、といったこともありました。至近の港に寄っても「今日の上り便は◯◯港です」といった親切な看板は出ていません。マイバイクは輪行袋に入れて船内持ち込みにしたほうが、制約は少ないでしょう。

錆ヶ浜港

自然とともに生きることを再考させられる

三宅島では、2000年に雄山が水蒸気爆発を起こしてから4年5ヶ月にわたり、島民が島の外に避難していました。そのあいだ、三宅島に一般の人は住んでいなかったのです。1983年にも大きい噴火がありました。いくつかの産業が縮小・衰退し、小中学校は溶岩流に呑みこまれたりしました。島の東にある役場は、火山ガスが流れてきたため他の場所に移転しました。

火山体験遊歩道

伊豆大島もそうなのですが、いつまた大きい噴火が起ってもおかしくないのだそうです。かつて雄山の中腹には牛の村営牧場があり、山頂にはサウナや八丁平という美しい台地もあったそうです。それらは、もうなくなりました。むかしは牛もたくさんいたそうです。いまはほとんどいないそうです。

かつての牧場公園案内図(雄山)

しかし雄山は、入山規制の解除に向けて動きはじめています。火山地形を活かしたオフロードバイクの大会(WERIDE三宅島)も毎年行われています。壊れたら、作りなおす。自然に抗うことは無理だけれども、自然の脅威とともに、たくましく生きていく。そもそも日本で生きるということは、そういうことなんだ、これが基本なんだ、と、元気づけられるところもあります。

1泊でも充実・おすすめは2泊

三宅島は、1泊2日の滞在でも充実したサイクリングを楽しめると思いますが、林道めぐりや徒歩での観光も楽しみたい場合は、2泊のほうが余裕が生まれるとは思います。筆者は数回三宅島を訪れていますが、それでもまだ回れていないところがあります。

サタドー岬

なお秋〜春にかけて船は欠航になることが珍しくないので、予備日込みでスケジュールを組むのが良いでしょう。おもしろそうだな、と思った方は、是非行ってみてください。

楽天トラベルで三宅島の宿を探す

日帰り弾丸輪行は、不可能ではないかもしれませんが、海況によって船の到着が遅れたり、逆に出発が早まったりすることもあります。宿に泊まって、のんびり楽しんだほうが良いように思います。

最後に追記。私は使ったことがありませんが、錆ヶ浜港にある観光協会では電動アシスト自転車の貸出があります(ヘルメット付き)。ただし9時頃からだと思うので、それまでの時間は早朝から営業していることで有名な「ホテル海楽」で朝食バイキングを楽しみながら待つのも良いでしょう。昼食を食べたことがありますが、美味しかったですよ。

ホテル海楽

マイバイクで行く場合でも、ホテル海楽でまず朝食、というのは良いアイデアかなと思います。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

マスターをフォローする
CBN Blog
タイトルとURLをコピーしました