シリーズ「伊豆諸島を自転車で探検してみよう!」第5回では、みんな大好き「伊豆大島」でのややマイナーなサイクリングルートをご紹介します。島の中腹の「林道」を巡ります。大島はもう走り尽くしてしまったしなぁ…という方は、次回遊びに行く時のプランに組み入れてみてはどうでしょうか。
伊豆大島サイクリングといえば、一般的には大島一周道路・三原山に至る複数ルートからのヒルクライム・北西部のサンセットパームラインなどが有名です(どれも最高で、何度走っても全然飽きないですね)。それらはもう走ったことがある、という方向けの記事になります。
「裏」伊豆大島(?)を走る
この記事でご紹介するルートは、下の地図看板上に私が赤でラインを引いたところになります。大島の中腹を横切る林道になり、配置的に三宅島の「雄山環状線」に似ているかもしれません。ただしぐるりと一周はできず、三原山の主に南西側をなぞるようなイメージです。
オレンジ色の線も林道なのですが、ここ数年は通行止めになっている区間です(記事の最後で軽く紹介します)。深緑色のルートはてめぇの血はなに色だーっ系ヒルクラルート・御神火スカイライン。紫色は三原山頂に比較的楽に登っていける、あじさいレインボーライン。淡いグリーンで引いた2本の道が三原山登山道です(元町と岡田の近くからアクセスできる。自転車ももちろんOK)。
林道間伏線(延長約8km)
最初に林道間伏(まぶし)線を見ていきましょう。島の東側の大島一周道路沿いにある「月と砂漠ライン」の近くから入るルートと、波浮港近くの「筆島」側から一周道路を北上して途中で左折して入るルートがわかりやすいので、この記事ではそれらを一緒に見ていきましょう。
「月と砂漠ライン」の近くからアプローチ
まずは「月と砂漠ライン」近くからのアプローチ。一周道路の南下中に「差木地(さしきじ)中心街」という小さい看板が出てくるので、それが目印(飛ばしていると見逃すかも)。下の写真では、右の小径に入っていきます。
地図上で白い矢印で示しているところが、この地点です。「月と砂漠ライン」の入口を過ぎたら筆島まで下りきらず、右側に分岐がないか気を付けながら走ります。
(余談ですが手が真っ黒。今年の夏はグローブをせずにポタリングしてしまった日が結構あったせいか。いろんな意味でやっぱりグローブはしたほうが良いですね)
さて、この小径を東進します。ここは「林道間伏線」に至る名もなき林道という感じで、ご覧のように道の状態も良く、とても走りやすいです。ただし3kmほどは上り基調です。
たまに工事・作業車両が通るくらいで、交通量は皆無に近いです。大島一周道路とは雰囲気が全く違います。地味で景観に優れたところも特にないと思いますが、鳥の声が賑やかなのが良いですし、大島の植生も観察しやすいです。姿こそ見えなかったものの、珍しいカラスバトの鳴き声も頻繁に聞こえます(フォォォウ、フォォォウ、みたいなユーモラスな鳴き声)。
道はやがて三叉路になります。左は差木地方面に至る道で、後であらためて紹介します(そちらから登ってくる道も面白い)。ここは道なりに右方面へ。
僕は、同級生のなどかずくんが持っているようなナビ付きの立派なサイコンは持ってない。でも、僕にはコンパスがある。ぼくには、これしかないんだ! だから、これがいちばんいいんだ!
さて、この三叉路で黄色い花を見かけました。たぶん「セイタカアワダチソウ」でしょうか。この花、後でまた登場するので覚えておいてください。
三叉路を道なりに進みます。ほどなくして林道間伏線の「終点」を示す看板が現れます(この記事では終点から起点に向かって走ります)。
心が落ち着く一般的な日本の林道、という雰囲気です。八丈島の三原林道を思わせるところもあります。基本的には全面舗装路です。
道の状態は9割がたは良好で、14インチのミニベロでも疲れずに走れるほどです。グラベルバイクが必要になるような箇所はなく、700x25Cタイヤのロードバイクでも全く問題なく走れるでしょう。
絶景などは、ほぼありません(でも、それでいい。それがいい)。それでも時折ちらりと利島や新島の姿が見え隠れします。恐らく数十年前は、木々の背も低くて眺望も良かった道ではないかと想像します。
林道間伏線の「起点」に着きました。正直、徒歩だとあまり面白味のない道のような気がするのですが、自転車なら登りも下りも楽しめて、所要時間的にも「ちょうどいい」散歩道と言えるでしょう。わりとたっぷり走れます。
林道間伏線の起点の先には「林道野増(のまし)線」があります(本記事の後段で紹介します)。野増線は下の写真で「売物件」という看板の向かいにある、右への分岐に入った先にあります。
間伏線と野増線のこの連絡路・接続区間は発見しにくい場合があり、ここだけ道が悪いので気を付けましょう(でも短い区間。あと激坂です)。
インフラ整備が進んでいる伊豆大島だけあって、こうした林道でも9割がたは立派な走りやすい道です。しかし下の写真のようなグレーチングの隙間がたまにあるので、油断せず。これは下り中にタイヤがはまったら一発でリム打ちパンクするやつですね。
差木地側から北上するアプローチ
ここで林道間伏線(の終点)にアプローチできる、もうひとつの道を辿ってみましょう。下は大島サイクリング経験者の方なら見覚えがあるに違いない「筆島」の先の橋梁です(大島一周道路沿いの「大滝橋」)。
その橋梁を過ぎて1kmほど登っていくと、左(西)側に分岐路が見えてきます。看板を見ると左は「差木地中心街」方面となっています。ここに入っていきます。
このあたりで標高200mくらいです。
西進を続けると、やがて三叉路に出ます。左(南)に下っていくと、差木地の市街地。右(北)に上っていくと林道間伏線に繋がります。
このあたりからも利島や新島の美しいシルエットがたまに見えます。アングルが斜めになっているのは、察してください。ここから間伏線に至るまではなかなかキツい坂なのです。
短距離で200mくらい標高を上げていきます。クルマ通りはほとんどなく、道の状態も良いので競技志向の方・ヒルクラ好きの方はこの小径、かなり気に入ると思います。繰り返し走ってタイムを計るトレーニングなどにも良いのではと思います。
北上を続けると、また三叉路に出ます。右に行くと大島一周道路で、この記事の冒頭で紹介した「月と砂漠ライン」近くの林道入口に至ります。左が間伏線方面。そして白い円で囲ってあるのは…
先ほど見たセイタカアワダチソウ(と思われる黄色い花)です。これでさっきの道と繋がりました。
間伏線にむかって南から登ってくるこのルート、めっちゃ登り甲斐があって好きな方にはたまらないと思います(私はもう結構です)。
林道野増線(延長約4km)
さて、林道間伏線を終点から起点に向かって走り終えた地点に話を戻します。間伏線の起点の先(西方面)に現れる分岐を登ります。
この区間は少し道が悪いのですが、短いです。
「林道情報 この先 通行注意」とあります。通行止めじゃなくて良かった。
林道野増線の終点に出ました! 林道のこの青い看板を見ると、ワクワクしますよね。
野増線は間伏線よりもさらに自然感が強く、植生の雰囲気も八丈島や三宅島の林道にだいぶ近いように感じます。
木漏れ日が気持ちいい! ちなみに間伏線も野増線も作業道ですから、道中にトイレ・テーブル・ベンチ・自販機などはありません。林道に入る時点で水は1Lくらいあったほうが良いでしょう。
のんびり北上を続けると、左に分岐する道がいくつかあります。ここは左に下っていくとものすごい激坂で…
野増駐在所に出ます。このすぐ先が一周道路。大島の西側から林道にアクセスしたい場合、この道から登ってくると良いでしょう。
さて、先の左への分岐を下らずに道なりに行くと、ふたたび野増・前浜港への下りと、林道元町(南)線に至る上りの三叉路に出ます。この日、前浜港に下る道は工事で通行止めでした。林道元町(南)線は数年前から通行止めが続いていると思います(走れない)。
この三叉路が林道野増線の起点になります。三原山南部の中腹を横切る林道間伏線・林道野増線を、これで走破したことになります。
林道元町(南)線へ
ところで林道元町(南)線が通行止めなのは知っていたけれど、いまでも全区間がそうなのだろうか? 反対側の入口から少しは走れないだろうか? ということで、みんな大好き御神火スカイラインに向かいます。最近は崩落箇所の補修工事も終わり、本当に走りやすい美しい道になりましたねー。
本当に気持ち良い道です(でも軽く死ぬ)。
この道は本当に眺望が良く、グイグイと高度を上げていく時の西側の海景は、神津島では天上山に至る黒島登山道、三宅島では七島展望台近く、八丈島では八丈富士登山道や鉢巻道路を思わせる爽快感があります。
御神火スカイラインを3分の1ほど登ったあたりで、南西方面への分岐が現れます。
あっ見えてきた!でも嫌な予感…
はいやっぱり通行止めでした。2年後くらいにまた覗いてみよう…
ちなみに御神火スカイラインをさらに登っていくと、林道元町(北)線への分岐もあります(本記事時点では通行止め)。
島の印象がより立体的になる
この記事でご紹介した林道間伏線・野増線は、伊豆大島で走れる「まとまった距離の静かな林道」として、とても楽しめると思います。たとえば大島一周道路を何周かする、という走り方をする時に、西の野増・前浜港から、または南の差木地市街地から、または東の波浮(筆島の先)・月と砂漠ラインの近くからこれらの林道に入ってみると、島の印象がより立体的になって楽しめると思います。
そしてもちろん、連泊して一般的なコースも楽しんできましょう。こちらは波浮港。港に降りて自転車を停めてカフェでのんびり!(たいやきやコロッケがおいしいお店がある)
サンセットパームラインでうっとり!(何度走っても最高)
伊豆半島を眺めてパチリ!サンセットパームラインは元町港の近くなので、日暮れ時になったらここを走ってそれから食事、という組み立てがおすすめ。
キョンにほっこり!(サンセットパームラインで撮影。あんなところにいてほっこりというかびっくりした)
締めは元町港の人気店「寿し光」で乾杯です。この日はまだ移動する必要があったので、珍しくノンアルコールビールを飲みました。おつまみは「べっこう」のお刺身(青唐辛子醤油に漬けこんだ白身魚)と明日葉のてんぷら(おひとり様用のハーフサイズもあって嬉しい)。
最後に登山・ハイキングも楽しみたい方のための補足です。林道間伏線については、有名なバームクーヘン(地層大切断面)の上に差しかかるあたりで三原山の「赤ダレ(三原キャニオン)」に至る登山道(かなり細いトレイル)と接続する箇所があります。そこに自転車を停めて、三原山頂までピストン登山を絡めるのも面白いと思います(かなりの薮なので上下長袖必須。シューズはトレラン用以上でないと難しい)。