サイクリング

伊豆諸島を自転車で探検してみよう!サイクリストなら八丈島に行かない手はない【第3回】

伊豆諸島(東京都)のサイクリングの話題になりますので、主に関東・首都圏在住の方向けの記事かもしれません。しかし他地域の方も、よろしければ是非お読みください!

シリーズ「伊豆諸島を自転車で探検してみよう!」第3回では、自転車で走る八丈島の魅力について書いてみたいと思います。程よいアップダウンのある平坦路、つづら折りのヒルクライム、林道・グラベル… 等々、あらゆるスタイルのサイクリングを楽しめる、懐の深い離島です。

八丈島と八丈小島

中央に見えるのが八丈富士・左が島南部。あいだの平地に人が多く住む。右は無人島の八丈小島(筆者撮影)

ミニベロ・ロードバイク・グラベルロード。どの自転車で行っても大満足できるでしょう(MTBだけはオーバースペックかも)。筆者の体験を踏まえつつ、ご紹介していきます。

▼ この連載シリーズの第1回・第2回記事です。未読の方はこちらも是非お読みいただけると幸いです

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八丈島へのアクセスなど

八丈島に行くのにどのくらい時間がかかるか。東京・竹芝桟橋からは大体夜の10:30に「橘丸」という大型客船が出港し、翌朝の9時頃に八丈島に到着します。船の中でたっぷり眠って、ゆっくり朝ごはんを食べておく時間もあります。高速ジェット船は、就航していません。島には港が2つありますが、客船が着くのは東の底土港(そこどこう)のみ。

さらに羽田空港から飛行機でも行けます(所要1時間・1日3便)。船で東京方面に戻る時は、八丈島出発が9:40頃、竹芝着が19:50頃というパターンなので、最終日も有効活用したい場合は帰路のみ飛行機にするという方法もあるでしょう。筆者は船旅が好きなので、いつも行き帰りとも東海汽船です(しかし船は欠航も少なくないので、予備日は確保しておいたほうが良いです)。

宿はたくさんあります。都営のキャンプ場も2カ所あり、年間を通じて営業しています。雨が多く、夏は高温多湿。サイクリングには本格的な夏以外の季節が個人的にはおすすめです。

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八丈島の概要と主な舗装路の様子

とりあえず八丈島の全体図を俯瞰してみましょう。全体的に「ひょうたん型」をしています(数十年前にNHKでやっていた「ひょっこりひょうたん島」という番組のモデルとなったという説がある)。島の北側に「八丈富士(西山)」、南側に「三原山(東山)」という大きい山があり、その中間の広く開けた平地に人がたくさん住んでいます。

八丈島の地図

出典:OpenStreetMap

上の地図では、黄色の太い線で描かれている道はよく整備された立派な舗装路。白い線は基本的に林道で、一部舗装されている区間もあれば、砂利道、大きめの石がゴロゴロ転がっている道など、路面は様々です。ライドタイプ別に考えるなら、黄色い道は普通のサイクリング・ポタリング向け。八丈富士に向かう2つの林道はヒルクラ向け(ただし非舗装区間が多い)。三原山周辺ではグラベルライドを楽しめる、というイメージです(ここは主に3本の林道があります)。

では一緒にバーチャルライドに出かけましょう。下は底土港前にあった現地の看板。島の中心の台地には、こんなふうに町の主要な機能が集中しています。この市街地だけでも結構広いです(底土港から反対側の八重根港までは5kmくらいかなと思います)。また、中心部に向かうにつれ、じんわり登っていくイメージです。

八丈島の地図

主要な舗装路には「八丈一周道路・八丈中央道路・八丈空港道路」があります。舗装の状態は素晴らしいですし、道幅はすごく広くはないですが、決して狭くもなく、交通量も少ないのでとっても走りやすいですよ。

八丈一周道路

あと伊豆諸島全体について言えることですが、ドライバーさんはどこも本当に親切で安心して走れます。

八丈島の道

町の中に入っていく道は下の写真のような雰囲気です。八丈島のおもしろいところは、「◯◯はこちら」といった名所や史跡を示す小さい看板のようなものが少ないこと(個人的にはそれが気に入っています)。また三根(みつね)・大賀郷(おおかごう)という市街地の道は、シンプルなようで入り組んでいる印象があり、よく迷子になります。

八丈島の道

八丈一周道路は約43kmで、町の近くでなければ信号も皆無。北西部にほんの数メートルだけ舗装が剥がれているところがあるかもしれませんが、基本的に全域が立派な道。パンクリスクも非常に少ないと思います。

八丈富士への林道ヒルクラと登山を楽しむ

ロードバイクでヒルクラも楽しみたい方は八丈富士へ。ヒルクラルートは山の南側と北側に1本づつあり、ダート区間が多いので700×28以上は必要かなと思います(走れなかったら一部押して行ってもよいでしょう)。このヒルクラ向きの林道がそれぞれ5〜6km程度。それらはいずれも八丈富士登山口のある「鉢巻道路」という舗装の一周道路に出られるのですが、これも6km弱。麓から登って・鉢巻道路を一周して・下ってくると距離17kmくらいになります。

だがしかし。鉢巻道路からすぐ目の前に見えているあの八丈富士の山頂をスルーするのはもったいない、と思うに違いません。というわけで登山口の駐車場に自転車を停めて、1280段の階段を登ってお鉢めぐりしてくるのがおすすめ。お鉢ルートまで30分(往復1時間。お鉢一周は1〜1.5時間程度)。

八丈富士の登山口

ここは寄っていかない手はないんじゃないでしょうか。ただ誰もが登山に興味があるわけではないと思うので、ここでは軽いご紹介にとどめておきます。また八丈島を一回の訪問で味わい尽くすのは絶対に無理ですから、ここに来るのは次の楽しみに取っておく、というふうにするのも良いと思います(なおロードシューズでは登れません。最低でもオフロード対応ソールのSPDシューズ以上が必要)。

八丈富士

下は八丈富士から、島の南東部を見たところです。遠くに見えている山が三原山(伊豆大島の三原山と同じ名前。別名・東山)で、そちら側では「鬱蒼とした山の中の林道ライド」を楽しめます。南東部の模様は、後ほどご紹介します。

八丈富士から三原山方面を望む

鉢巻道路沿いには牛が放牧されている広々とした「ふれあい牧場」があるので、是非寄っていきましょう。ここは飲料の自販機とトイレもあるので助かります。SPD-SLな方でも、この写真の先の展望台まで散歩していって大展望を味わってみてはどうでしょうか。

八丈富士ふれあい牧場

登龍峠を経て島の南部へ

八丈島は一記事ではとても紹介しきれないので、やや「巻き」で進行します。これは八丈一周道路・南東部の「登龍峠(のぼりょうとうげ)」に至る道です。こんなつづら折りが続き、それがまるで龍が登っている姿のようだから、というのがその名の由来とされています。

登龍峠

下は「龍の壁」。この峠道はカレーの辛さにたとえると中辛〜辛口という感じで、激辛以上の区間はない印象です。いい汗を流せる感じの坂で、さらにその汗を流せる温泉がこの先にいくつかあります。

登龍峠・龍の壁

登龍峠には立派な石碑が建っています。「この峠に立つ人 その幸運 まさに登龍の如し」と記されています。ヒルクライマーがここに来たらもっと速くなるご利益があるんじゃないか、と思わされるメッセージですね。運気上昇のためにもここまで来ましょう。

登龍峠

登龍峠には見晴らし台もあり、さきほど登った八丈富士がここから見えます。右側の港は、客船が発着する底土港です。遠く左上に見えているのは八丈小島。

登龍峠・展望台

東山に迷いこみ林道ライドを楽しむ

さて、八丈島の南部もぐるっと一周道路で回れるのですが、山の中に向う林道・オフロードが3〜4本あります。ただ、アクセスがやや難しいところがあり、本気で走りたい方は自分で地図を入手して調べることになるでしょう。これらの林道はすべてを「一筆書き」では回れないため、八丈一周道路ライドとは別枠で行動計画に組み込んだほうが良いかもしれません。

八丈島南部の林道

三原林道、それに至る防衛道路、また登龍峠の先(南)で名所「ポットホール」に向かう林道などがあります。道の様子は、代表的なものに感じられた写真を3枚掲載しておきます。一部区間を押し歩いても構わない、というのであれば、ロードバイクでも行けると思います。ここは小径車ではさすがに厳しいです。

八丈島南部の林道

三原山側は八丈富士側とは雰囲気がまったく違い、目隠しで連れてこられて「ここは埼玉県の小鹿野町だよ」と言われたら信じてしまいそうになるような、ダークで鬱蒼とした林道があったりします(杉の植林もありました)。

八丈島南部の林道

グラベルライドに興味がある方は、数泊してこれらの三原山まわりの林道探検に一日費やす、という計画にすると良いかもしれません。登山もする方は、三原林道ライドに三原山の徒歩登頂コースを加えることになるでしょう(八丈富士よりもきついコースになるので、普段登山をされていないサイクリストの方にはおすすめしないでおきます。でも八丈富士のほうは、やっぱり頑張って登っておいたほうがいいかも)。

八丈島は、島の北部・上半分はシンプルな行動計画を立てやすいけれども、南半分をどう組み立てるかが(楽しい)悩みどころかなと思います。八丈島は雨も多いので、複数のプランを用意しておくのが良いでしょう。自転車のタイプとしては、やっぱりグラベルバイクがいちばん便利で面白いかなという気はします。

自転車だからこそ存分に回れる名所の数々

八丈島は「自転車だからこそ」ゆっくりたっぷり楽しめる名所がすごく多いなぁ、と感じます。勿論レンタカーを借りたりバスを使って観光される方も楽しめると思いますが、「ここは自転車じゃなかったら来るのが大変だった」や「これは自転車ならでの楽しみ方だろうな〜」と思わされることが多いのです。

名古の展望台

例えばいちいち駐車場にクルマを停めて… ということをしなくても、こんなすごい風景を見られるのもそうですし(大坂トンネルの展望)、

大坂トンネルの展望

下は「宇喜多秀家公と豪姫の碑」という名所なのですが、この周りは他に特に見るものはなくて、ここは徒歩だったらコースに入れるのは時間的に効率が悪かったかも、と個人的には思えたところですが、そうはいっても名所はやっぱり外さずに見ておきたいという気持ちがあります。自転車なら、躊躇せずにさっと寄っていけます。「ここを見るなら自転車が正解だったな!」と思った瞬間です。

宇喜多秀家公と豪姫の碑

現在では無人島の八丈小島も、レンタカーで回る感じの旅行だと、下の写真のような海沿いの小径から眺めるのは難しいと思うので、これも自転車旅ならではの風景です。

八丈小島

下は「八丈オリエンタルリゾート」という建物で、廃墟マニアのあいだでは有名らしいです。私はまだ寄れていないのですが、いつか近くまで行ってみたいところ。

八丈オリエンタルリゾート

あとは八丈植物公園。ここはかなり敷地が広く、中では飼育されているキョンなども見られるのですが、ありがたいことに園内は自転車で回れるのです。徒歩で歩き回ると結構な歩数になると思いますが、自転車なら非常に回りやすい(ここに来るまでちょっとだけ登るんですけれども)。

八丈植物公園

こんなふうに、八丈島はスポーツとしての自転車以外に、モビリティとしての自転車も活きる島であると感じます。一周道路を回りながら温泉巡りをするのも楽しいと思います。

まとめ

どうですか八丈島。たぶん多くの方が「伊豆大島よりもずっと遠いしなぁ…」という理由だけで行っていないと思うのですが、「こんなんサイクリストが来えへん理由ないやろ…」と私は行くたびに関西弁で呟いてしまいます(※関東人です)。

八丈島の空

しかし走れる距離はたっぷりありますし、量だけでなく体験の質も素晴らしい。舗装路もオフロードも楽しめる。伝統的な雰囲気のヒルクラルートも、魅力的な林道もある。

そして八丈島は、どこで何を食べてもうまい。食堂・レストラン・居酒屋は言うまでもなく、スーパーのお惣菜でさえめっちゃうまい。酒もうまい。そして何より、八丈島の人々は、親切で人懐っこく、温かい。

最低でも現地で二泊はおすすめしたいところですが、仮に現地一泊であっても「今回は島一周+温泉めぐりにしよう」とか、「今回は鬱蒼とした三原山のダークな林道を探検し尽くす!」とか、そういうふうにテーマを決めて何度も来る楽しみがあると思います。

八丈島、おすすめです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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