この記事では「Vブレーキ」と呼ばれるタイプのブレーキの基本的な調整方法、取り付け・取り外しの方法を解説します。
Vブレーキはクロスバイクやミニベロ(小径車)などに搭載されていることが多いものですが、キャリパーブレーキ(ロードバイクでおなじみ)やディスクブレーキ(MTBで主流)といった他のタイプのブレーキとは調整方法が全く違います。この記事で基本をマスターしてしまいましょう。
Vブレーキ各部の名称
最初にVブレーキ各部の名称を確認していきましょう。
- ケーブル取り付けボルト
- ブーツ(ラバーブーツ)
- フック
- リードパイプ(その形状から俗に「バナナ」とも呼ばれる)
- アーム
- ブレーキシュー調整ボルト
- リンク固定ボルト(本体固定ボルト)
- スプリング調整ボルト
- ブレーキシュー
パーツによっては複数の呼び方があります。しかし大切なのは名前ではなく、それぞれのパーツが何のために存在しているかを理解することです。各パーツの役割を理解してしまえば名前は何でも良いです。が、この記事では上に列挙した名称で説明していきたいと思います。
ワイヤーの開放
Vブレーキを使いはじめた多くの人が最初に悩むのが「ワイヤー(ケーブル)の開放の仕方」です。パンク修理をする時にホイールを取り外す必要があるのですが、この時多くの場合、ブレーキワイヤーを開放する必要があります。
そのためのいちばん簡単な方法がこちら。「リード」と呼ばれるパーツ(「Vブレーキバナナ」という愛称もあります)の先端を左手でつかんで、向かって右側のVブレーキアームを右手でリム側に押し付けます。
するとバナナの先端が「フック」から簡単に外れてくれます。
なお黒い「ラバーブーツ」はVブレーキの動作にとって必要不可欠なパーツではありませんが、バナナの中に水が入らないよう標準装備されています。インナーワイヤーの錆付きを防止するために付けておきましょう。
このセクションで最後にもうひとつ。タイヤがとても太い場合は、フックからバナナを外したとしても、タイヤから空気を抜かない限り、ブレーキシューにひっかかってホイールを外せないことがあります。逆に、入れることもできない場合があります。
なのでパンク修理の時は、タイヤに完全に空気を入れてしまう前にホイールをフォークやフレームに入れてしまいましょう。
ワイヤーの引き代調整
次に「ワイヤーの引き代調整」について説明します。ブレーキレバーを握った時、どのくらい握ればブレーキが効いてくれるのか。そのための調整は、まずは①の「ケーブル取り付けボルト」をゆるめて、ワイヤーの張りを短くしたり、長くしたりで調整します。
しかしここにひとつ問題があります。フックからボルトまでのワイヤーの長さを極端に短くした場合、バナナをフックから外せなくなることがあります。
そのため、ここでの「ワイヤーの張り」はそこそこにしておいて、ブレーキレバーにある「バレルアジャスター」も使って引き代を微調整します。
このバレルアジャスターは、緩めれば緩めるほど、少ない力、短いストロークでVブレーキを作動できるようになります。
注意点としては、このアジャスターを緩めすぎると当然すっぽ抜けてしまう危険があるので、これもほどほどにとどめておき、アジャスターを緩めたあとは、ロックリングを根本まで締め込んでおくことが大事です。これが根本まで締め込まれていれば、アジャスターが抜け落ちることはありません。
片効きの調整
次に「片効き」の調整方法について説明します。Vブレーキが搭載されたクロスバイクやミニベロを買われた方がこれを自分で調整する機会はあまりないと思いますが、もしブレーキング時にブレーキシューの片側だけが動いてしまう、その結果、片方のブレーキシューだけ減ってしまう、という場合は、これを参考に調整してみてください。
下の写真の「プラスネジ」の部分が「片効きの調整」のためのボルトです。ブレーキによっては、ここは六角ボルトになっていることもあるのですが、やることは同じです。ネジまたはボルトを締めていくと、ブレーキシューがリムから離れていきます。反対に、ネジまたはボルトをゆるめていくと、ブレーキシューはリムに近付いていきます。
ネジやボルトを締めたり、ゆるめたりすることによってバランスを取っていくのですが、片方をゆるめたらもう片方を締める。片方を締めたらもう片方をゆるめる。といったふうに、両側のバネが同じくらいのテンションになるように調整してみて下さい。
また、このネジをいじった後はレバーを何回か握ってバネの戻り具合を確認しましょう。
Vブレーキ本体の取り付け・取り外し
最後にVブレーキ本体の取り付け・取り外しについて解説します。「リンク固定ボルト(本体固定ボルト)」をゆるめてVブレーキのアームをフレームやフォークから取り外そうとしてもうまく行かない場合は、下の写真で矢印で示してある細長いスプリングを解除してみてください。
この縦長のスプリングをこんなふうに溝から外します。するとVブレーキのアーム本体を外すのも、取り付けるのも簡単になります。
また、Vブレーキのアームをフレームやフォークに戻す場合、下の写真で示したように「ストッパーピン」を入れる穴が3つあると思います。普通は「真ん中の穴」に入れます。
ほとんどの場合、これでうまくいくでしょう。
まとめ: 初心者にはちょっと難しい?
Vブレーキの調整や脱着について、やるべき作業は以上です。
リムブレーキのロードバイクにだけ乗られている方からすると、結構ややこしい作業をしているな、と思われるかもしれません。個人的にもロードバイクのキャリパーブレーキのほうがずっと簡単です。ホイールの脱着時もワイヤーをフックから外すといった作業がないので、Vブレーキはちょっと面倒くさいなぁ、というイメージがあります。
しかし「より少ない力で大きい制動力を発動する」という、純正な性能面では、Vブレーキはロードバイクに搭載されているキャリパーブレーキを凌駕しています。MTBにディスクブレーキが搭載される前は、ずっとこのVブレーキが主流でした。
他のメリットとしては、メカニカル・ディスクブレーキよりも全体が軽量になるはずなので、キャリパーブレーキ同様に死滅することなく当面は市場に流通し続けるパーツでしょう。特にクロスバイクでは今後も採用されていくことと思います。
さて、こうした作業に必要な六角レンチを持っていないという初心者の方には、下のホーザンのショートタイプはサドルバッグにも入るのでオススメです。携帯用の小さいマルチツールよりも使いやすく、家での作業にも向いているので、これひとつあれば当分いろいろなメンテンス作業に対応できるでしょう。
またトルクレンチを持っていない方は、安いもので良いのでセットを持っておくことをおすすめします。たとえばVブレーキのケーブル取り付けボルトは、強く締めすぎるとワイヤーが破損して切れやすくなりますし、逆に締め方が弱いとうまく固定されません。シマノのVブレーキの場合、ここは6-8Nmという単位で締めますが、トルクレンチがあるとこういう管理をやりやすくなります。
トルクレンチはいずれ他のメンテナンス作業でも頻繁に使うことになるはずなので、持っておいて損はありません。