SRAMからRival eTap AXSが発表されました。SRAMのロード用ラインナップではRed, Forceに次ぐ3番目のグレードで、シマノのラインナップでは105に相当するコンポとなりますが、大きい注目点が3つあります。
公式 Rival eTap AXS | SRAM
出典 SRAM Rival AXS Power Meter: Hands-on and First Rides – DC Rainmaker
まず、メカニカルバージョンは発表されませんでした。シマノが次の105を12スピードのDi2にするかどうかはまだわかりませんが、ワイヤレスコンポが今後ますます身近なものになるのは間違いないでしょう。また、リムブレーキ版は発表されず、ディスクブレーキ版のみとなります。
Quarqパワーメーター内蔵クランクあり
もう1つの注目点はパワーメーターのオプションがあること。ROTOR inPower等と同様、スピンドル計測で、チェーンリング込みのクランクセットでは$349、アップグレードキット(スピンドル付きの左クランクのみ)では$249となります。片側計測ではありますが、サードパーティ製ではなく純正品(QuarqはSRAMの傘下企業)と考えるとかなり安価です。
仕様的には、
- 計測精度は公称値ベースで+/-3%(実際は+/-1.5%の2倍)
- バッテリーはリチウムAAA(単四電池)
- バッテリー持続時間は400時間
- IPX7防水
- 重量はパワーメーターなしのクランクに比べて+40gほど
- 通信はANT+またはBluetooth SmartでANT+の場合はコネクションに制限はなく、Bluetooth Smartの場合は同時接続はシングル
となっています。
基本的にはStagesや4iiiiのような片側クランク式パワーメーター同様、左側の数字を倍にしてパワーを算出することになりますが、チェーンステーとのクリアランスの関係でStagesや4iiiiを装着できないバイクに乗っている方にとっては選択肢の1つになるでしょう(SRAM DUBクランクの使用が前提ではありますが)。
計測精度は続報を待ちたい
しかしDC Rainmakerによる初期レビューでは、Rivalのパワーメーターはあまり良いテスト結果が出ていません(※あくまでファーストインプレッション程度に受け止める必要はあります)。同氏によると、
- 最初の30分のライドでは、Garmin Rally RS 200(両側計測)ペダルと一緒にテストしたところ、RivalのパワーメーターはRallyよりも40-50w低い数字が出た
- どのパワーメーターも最初は数字が安定しないことがあるので、どちらの製品もトラブルシューティングしてみたが、2時間経過してもRallyとRivalの数字は近付かなかった
- その後もグラベルを含むコースでRivalは200w時に18w低く出たり、30-40w低く出ることもあった
- しかしSRAMのエンジニアに分析してもらったところ、Rivalパワーメーターの左側の数字はRallyの左側の数字とほぼ一致していることがわかった
- その時に筆者が乗っていたテストバイクはサイズが小さかったため、普段よりペダリングの左右バランスが狂っていた可能性はある
- そこでPowerTap P2とも比較をしたが、やはり左右バランスに開きがあった。しかし今度は、Rivalは60w低い数字が出た
- SRAM RivalのパワーメーターはGarmin Rallyの左側と同じ数字を出しているので、その意味では良い
ただしこれはあくまで最初のテストなので、DC Rainmakerは今後まとまったレビューを出すそうです。Rivalパワーメーターの精度がいまひとつ、とは今の段階では言えませんが、片側計測に特有の問題を含んだものではありそうです。
また、同氏によれば30-40wの違いは論外だとしても、どんなパワーメーターも日によって10w程度の誤差が出る日があるので、片側計測だから使えないとも言えないとのことです。
Rival eTap AXSの価格
Rival eTap AXSのフルセット価格(米国定価)は次の通り。最も安い1xのパワーメーターなしセットで約13万円。パワーメーターありでも約15.3万円となっています。
- Rival AXS 2x パワーメーターあり $1,639
- Rival AXS 2x パワーメーターなし $1,420
- Rival AXS 1x パワーメーターあり $1,409
- Rival AXS 1x パワーメーターなし $1,190
重量的には、Rival eTap AXSの総重量は2xの基本的な構成の場合、Force eTap AXSより191gほど重くなります。Red AXS比で677gの重量増です。
Rival eTap AXS搭載完成車
Rival eTap AXSを搭載する完成車は、本記事作成時点では次の通りです。
- 3T Exploro Team
- Berria Belador Rival AXS
- BMC Teammachine SLR Four
- BMC Timemachine01 Disc Two
- BMC Timemachine01 Road Three
- Boardman SLR 9.4
- Colnago V3
- Fezzari Empire Elite Race Rival AXS
- Fezzari Empire Elite Rival AXS
- Ridley Fenix SLiC
- Specialized Aethos Comp
- Specialized Diverge Expert Carbon
- Specialized Roubaix Comp
- Specialized Tarmac Comp
- Speedvagen Ready Made GTFO
- Speedvagen Ready Made OG Disc
- Trek Domane SL 6
- Trek Domane SLR 6
- Trek Emonda SL 6
- Trek Emonda SLR 6
- Trek Madone SLR 6
ミドルレンジのコンポーネント、ワイヤレスコンポとしてはエントリーグレードとは言っても、ほとんどのRival AXS完成車は4000ドル以上。価格がこなれてくるのを待ちたいところ。また、シマノがDi2版の105を出すのか、新型105はメカニカルも維持するのかどうかが気になりますね。
ただ、105 Di2が出るとしても、新型デュラエース(6月末頃、ツール・ド・フランスの開催に合わせて製品発表が行われるという説が現在濃厚になっています)やアルテグラが出ていない現状を考えると早くても登場は2022年でしょうか。その間にRival eTap AXSに完成車市場を完全に奪われてしまわないかどうか心配です。Rival AXSよりも安い105 Di2に期待しています。
海外サイクリストの反応
Rival eTap AXSは海外のサイクリストにどのように受け止められたのでしょうか。Redditのコメントを観察してみます。
- Rival AXSだって? 12スピードでパワーメーターのオプション? クレイジーだな。あほらしいほど人気が出るだろう
- 105より900gも重い。値段を考えると、ずんぐりしたグループセットだ(※筆者注 900gも重くないという説があります。しかしメカニカル105より重いのは間違いないようです)
- シマノはマジですぐに何かグレートなものをリリースしないとヤバい、そうでなければ完全に置いていかれるだろう
- 105 di2が出たらマジですごい量が売れるだろう
- (上のコメントに対して)500ドル上乗せされるのでなければね。メカニカルで十分だよ
- 全パーツで$1100だって? 大バーゲンに思える。しかもクランクベースのパワーメーターがプラス$349というのも大バーゲンだ
- Rival AXSのほうがAXS Forceよりカッコいいと思う人はいないかい?
- (上のコメントに)うん、レバーはRivalのほうがずっといいね
- Rival AXSは実際は良いものではない、なぜならメーカーはRival AXS搭載バイクを105搭載バイクより高く値付けするか、(同価格帯の値付けをするなら)安っぽいパーツでスペックせざるをえないだろうから
Cyclingtipsのコメントからいくつか紹介します。
- 105 Di2が間違いなく来るな!
- 安いエレクトロニクスでShimano 105より900gも重いんだからお笑いだ。でもForceよりは見た目が良い。しかしメカニカルのUltegraのかわりにこれを選ぶ理由がわからない
- 見た目はいいね。しかしこれは、SRAMのメカニカルロードコンポはもう死んで埋葬されたという意味ではないかと思う。良くても保守があるだけで、新製品の開発は計画されていないだろう
個人的には下の長文コメントが興味深く思えました。
製品マーケティングの視点からすると、Rival eTap AXSはSRAMによる最高の仕事だ。非常にユニークで、あまりお金を使いたくないけれど「クールな」ギアを持ちたいという人向けの、はっきりとしたセールスポイントを持っている(12スピード、電動ワイヤレス、ディスクブレーキ)。
現在はメカニカル、リムブレーキで10スピードまたは11スピードの105やUltegraに乗っているけれど、雲の上の値段ではないこのRival AXSに乗り換えたい人がどれだけ多いかを考えてみるといい。全体をわざと重くして、ForceやRedと差別化したのも非常にスマートな選択だった。
SRAMが自らをシマノの上位の「手の届くプレミアムブランド」に位置付けようとしているのも明白だ。2000ドル以下の完成車の領域を完全にあきらめて、そこはShimano 105やそれ以下のグレードに譲っているのだから
つまり、SRAMはもう機械式の105のような安いものを売らない方向なのでは、という考察です。一見すると良い棲み分け、とも思えますが、実際のところは整理されたラインナップで高単価路線に走ったほうが企業としては利益率が大きいのは明白です。
シマノとしては105 Di2は出さないわけには行かないと思いますが、問題はいつ出せるか、でしょうか。ツール・ド・フランスの開催に合わせて、新型デュラエース(セミワイヤレスDi2 12スピード)が発表されるともっぱらの噂ですが、同時に新型アルテグラ、そして大穴としては12スピードの105 Di2も同時発表、ということがあってもおかしくないような気がしてきました。