CeramicSpeedの低摩擦ドライブトレイン「Driven」が大きい資金調達に成功し、製品化が現実的なものになりつつあるニュースを下の記事でお伝えしました。その後、BikerumorにDrivenのJason Smith氏とのインタビューが掲載されていたので概要を抜粋してご紹介します。
CeramicSpeedの低摩擦ドライブトレイン「Driven」が2日間で100万ドルの資金調達に成功
駆動にチェーンを利用しないためフリクションを低減でき、さらにエアロダイナミクスにも優れるコンポーネントとして昨年話題になったCeramicSpeedの「Driven」。本格的な量産化に向けて株式クラウドファンディングで資金調達を開始したとこ...
出典 Interview: What’s next for CeramicSpeed’s Driven driveshaft bicycle group? – Bikerumor
- (Q: Drivenシステムを普通の自転車に載せられるようにするための技術的なチャレンジは相当大きいと思う。ユーロバイクのデモでは動きがスムーズでないことがあった。1年以上経ったいま、プロジェクトはどのように進んでいるか?)
A: ピニオンのスクリューがねじ切れてしまい、変速中にアラインが狂ってしまったのが原因だった。ユーロバイク以降、ベアリング=トゥース(歯)インターフェイスの強度を高めるための新しいアプローチを開発している。詳細は言えないが、新しいタイプのベアリングとも言えるような回転部品(rolling elements)を使い、以前とは違うやり方でドライブトレインに組み込んでいる - その新しいデザインのおかげで、よりワイドなコグを使えるようになり、剛性も高くなる。それでいて固定ベベルギア・セットに見られるような滑り摩擦(sliding friction)を解消できる
- 私達が「スナップシフト」と呼んでいる機能のプロトタイプも作った。これは変速に必要な時間を減らし、ユーロバイクでのプロトタイプよりもずっと高いケイデンスでのシフトを可能にするものだ
- (専用のフレームが必要であることを除いて、このシステムを生み出す際に最も大きい技術的なチャレンジは何だったか?)
A: アロイ素材のプロトタイプ・パーツがすぐ欲しい時に、進行が滞ってしまったこと。小さいチームなのでアイデア出しやデザインの改良にはスピード感を持って取り組めるし、1日でパーツを作成できる3Dプリンターも複数台あるが、作れるのは今のところプラスチックやカーボンパーツに限られる。ボールダーのラボにCNCミルがなかったために、アロイ製パーツをテストしたい時に時間がかかった。CNCミルがあったら強度や機能に関するアイデアをより速いペースでテストできていただろう。今回のファンディングが成功したのでCNCマシンの発注をかけたところだ - 変速タイミングのセットアップも難しいものだった。ドライブシャフトやピニオンには複数のセンサーとアクチュエーターが入っている。変速は時限イベントで、極端に複雑なものというわけではないが、全てを連携させるのにはやや苦労した
- 私達のチームのコア・ストレングスはメカニカルシステムにあり、エレクトロニクスにはない。しかしそのことに気付いたので、経験豊富なエレクトロニクスのエンジニア(できれば自転車の駆動系業界出身の人)を探しているところだ
- ユーロバイクで展示したSpecializedとCanyonのバイクは実際には乗れないコンセプト提示用のものだった。しかし展示されたS-Works Vengeはモーガンヒルでの風洞実験で、エアロ効果の分析のために実際に使用されたものだ
- 実際に乗れるバイクも存在しており、それは「ラバ」と呼ばれている。Drivenの動画でそのラバの1つを見られる(※下の動画4:07〜から)。タイラー・バターフィールドがボールダーのベロドロームで45km/hを出したものだ。これらの乗車可能なバイクは継続的に改良されており、ユーロバイクで展示されたものほどフォトジェニックな姿ではない
- (Q: ドライブシャフトの自転車は、Drivenが開発中のシステムのような外部ギアは持たなかったものの、過去にも存在した。なぜフロントのギアボックスや内装変速のリアハブを使わないのか)
A: 伝統的なベベルギアのドライブシャフトは非常に効率が悪い。ギアボックス(内装変速)も同様に非効率だ。この2つを組み合わせてしまうと、ライダーのパワーが最大20%持っていかれる場合がある。それでは台無しだ。シャフトとギアボックスの組み合わせがあまり一般的でないのはそうした理由だ。Drivenシステムの効率は99%だ - (Q: Drivenシステムの現状はどうなっているか? 「生産準備OK」バージョンまでどのくらいかかるか?)
A: 完全に機能するテスト済みのシステムで、製造パートナーと議論できるようなものができるまで6〜9ヶ月間を見込んでいる
これを読んで思ったのは、新しいアイデアを次々に試す際にネックになるのはアロイパーツなのか、ということです。しかし高価なCNCミルを今回の資金調達のおかげで発注できた、というのは良いニュースですね。
また最終的なDrivenの姿は、ユーロバイクでの展示車両や動画で見られるものとは見た目や雰囲気が結構違うものになるのではないか、とも思いました。Jason Smith氏の動画を見ると、スポーツバイクだけでなくコミュニティバイクでも使えるようなものを考えているようなので、インターフェースの剛性や耐久性については解決できる算段があるのかもしれませんね。来年の今頃には何らかの結果が出ているでしょうから、楽しみに待ちたいと思います。