Di2バージョンのみでの登場となった新型デュラエースR9250とアルテグラR8150。シマノの大きい強みである正確な機械式シフトを搭載したバージョンが投入されなかったことで、果たして今後も上位グレードからはメカニカルが完全に廃されてしまうのだろうか、と懸念されている方も多いと思います。
この件について、road.ccがシマノ関係者へのインタビューを交えつつ考察しています。
出典 Shimano doesn’t rule out 12-speed mechanical road groupsets – road.cc
意思決定は顧客の声を聞いてから行う
- シマノはついにDura-Ace R9200とUltegra R8100シリーズを発表した。いずれもDi2オンリーのコンポだ
- Ultegra R8150 Di2とサードグレードの105との間には巨大な価格差がある
- シマノは過去に105レベルでのDi2の提供は計画していないと語ったが、テクノロジーとマーケットの進展具合によって戦略が変わる可能性はある
- この巨大な価格差を埋める論理的な展開は、12スピード・メカニカルのUltegraまたはDi2バージョン105の登場だろう
- 我々はシマノに対し、12スピードのメカニカル版を提供するつもりはないかどうかを聞いてみた
- 「私達は12スピードのDura-AceとUltegraをレース・パフォーマンスライド用と考えており、そこでは電動シフトの利点が前面に出てくるのです。これは競技志向・パフォーマンス優先のライダーのかなりの割合が求めているものであり、私達が付加価値を与えられるのはここにおいてです」
- 「しかしながら私達は少なくとも2022年中までは11スピードUltegraのメカニカルグループセットを提供し続けるつもりです。これらは現行の11スピード・ロードライダーだけでなくシクロクロスライダーにも役立ちますし、カセットとチェーンはGRX 2×11でも使えます」
- 「私達は常に顧客の声を聞いた上で意思決定します。顧客はバイクブランド・小売業者・消費者を含みます」
- 「絶対にない、と言うことは絶対にないですが、マーケットは現在はっきりとDi2に向かって進んでいます。競技レースやエンデュランスサイクリングにはDi2がより進んだ性能を提供します」
- これは12スピードのメカニカル版が出る可能性がゼロではないということを意味するのではないか
- シマノは発売前の製品については常に口を閉ざすが、もし12スピードのメカニカル版Dura-AceやUltegraが絶対にないのなら、彼らがそう言うのはたやすいはずだ。シマノは今後登場しないものについて発言を躊躇ったことがない
- 他の可能性としては「105を12スピードに進化させメカニカルに留める」のも勿論あるだろう
- R7000系105は2018年に登場し、それ以降Dura-Ace, Ultegra, フォースグレードのTiagraが全て更新されたことを考えれば、次にアップデートされるのは105だ
- 世界的なパンデミックとそれに関連する製品供給の問題に影響を受けるかもしれないが、通常であれば2022年には105の更新があるかもしれない
- 次のシマノのトップ3コンポは、R9200とR8100の両方、あるいはいずれかのメカニカル版、または105のDi2バージョン、またはメカニカルのみの105、または完全に別の何か、のいずれかだろうか?
road.ccの記事を読むと、シマノは「これからこういう新製品が出るよ」とは絶対に言わない会社ではあるものの「こういう新製品は出ない」ということはハッキリ言ってきたそうです。しかしメカニカルについては「絶対出ない」とは明言していないので、可能性は十分にあるのではないか、という希望的観測になっています。
レースの世界における電動シフトの優位性はもはや揺るぎないものとなっていますが、Di2アルテグラと機械式11スピード105との間の価格差はやはり大きいので、この間を埋める新しいグループセットが登場するというのは間違いないでしょう。経済的余裕のない若い自転車競技者にとっても需要があるはずですよね。
それがDi2 105になるのか、メカニカル105になるのか。メカニカル用生産ラインをまだ持っているシマノとしては、コロナが収束してサプライチェーンの問題が解消されたらメカニカルを復活させたいのでしょうか。
一方でメカニカルから完全離脱しつつあるSRAMのエントリーレベル電動コンポと、機械式メカニカル105のどちらが完成車市場で有利に戦えるのか、という問題もあります。部品点数が少なく工場での組み立ても機械式よりは容易になるDi2。しかしDi2の半導体供給は十分か…等々、経営側としてもかなり悩ましい問題なのでしょうね。