パワーメーターやGPSサイクルコンピューター、スマートウォッチ等のデジタル製品レビューで世界的に高い支持を得ているオランダの人気ブロガーDC Rainmaker氏が、シマノのパワーメーターDura-Ace R9200Pのレビュー記事を公開しました。昨年の夏から8ヶ月間ほど使用し、他社の9製品(スマートトレーナー内蔵のパワーメーター含む)とのデータ比較を行ってきたそうです。
▼ 同氏は動画でもレビューしています。Shimano Power Meter (R9200P): How is it this bad?(なぜこんなにダメなのか? なぜプロチームは使いたがらないのか?)という厳しいタイトル
出典 Shimano R9200P Power Meter In-Depth Review: Astonishingly Inaccurate | DC Rainmaker
誤差に規則性が見られないのが大きい問題だ
以下、記事と動画の主要な部分の抄訳です。
- パワーメーターのテストで生計を立てている者として言うと、Shimano Dura-Ace R9200Pがある一点で先代製品の轍を踏んでしまっているのは明らかだ。恐ろしく不正確なのである
- これはシマノから貸与されたテストユニットに限った話ではない。複数のバイクの複数のユニット、複数の大陸でテストされたデータにもその不正確さは見られる
- R9200Pは正確でもなければ、データが一貫してオフセットされるわけでもない(=誤差の発生状況に規則性が見られない)
- どのライドのデータが良いもので、どのライドのデータが悪いものなのかがわからないのが問題となる
- R9200Pを実際に分解して検査してみたというある会社に聞いたところ、問題はシマノの歪み計測ゲージの配置にあるものでもなければ、クランクアームのキャスティングやデザインにあるものでもなく、大きめのパワーメーターの一部としてシマノが使っているその他の特定の電子部品にあるのではないかと考えていると語った
- 7月に行ったテストではパワー低下と同時にケイデンスのドロップアウトも記録されている。ケイデンスはパワーを決定するためには必要不可欠なもので、ケイデンスデータが短時間不安定になるとパワーデータも影響を受ける
- サイコンとの接続性に問題があるわけではないと考えている
- 小さいチェーンリング(インナー)のデータは多くのシチュエーションで一貫して不正確である(20wほど高く出る)
- 右側(ドライブサイド)はスプリントでは不正確で、パワーを大幅に低く見積もってしまう(100wまで低く出ることがある)。しかし正しく計測される時もあるのが問題だ
- ペダリングを停止してもパワープットアウトを示してしまう
- 多くの短いパワー急上昇(many short surges)を300w+まで低く見積もってしまう
- グループライドの時のような楽なペダリングでのパワーは扱えず、不正確なデータを出す(ロードレース中に足を止めることもあるプロトンでも問題になる)
- ケイデンスセンサーはしばしば2-3秒のラグが出る(マグネットがあるにもかかわらず)
- Ultegra R8100Pはテストしていないが、全く同じ電子部品が使われているならR9200Pよりも少し正確だと考えられる理由はない
シマノのパワーメーターについてはこれまでも正確でないと指摘する声が少なくなく、新型のR9200Pではそれが改善されるものと期待されてきましたが、同氏のテストデータを見る限り、まだ問題を抱えていると言わざるをえないのかもしれません。
ただし、問題はハードウェアそのものというよりアルゴリズムの問題である可能性も指摘されています。自分のR9200Pでデータが不安定であるように見えても、それは個体差や製品自体の不良という可能性は恐らく少なく、計測アルゴリズムに起因するものかもしれません(DC Rainmakerの読者や同氏の友人ブロガーShane Miller氏も同様の問題を報告しているそうです)。
DC Rainmker氏は若干シマノに批判的なところは確かにあります。Di2よりもSRAM AXSのほうが好みらしいですし、愛用しているHammerhead Karoo2でDi2情報を利用できなくなったことなどでもシマノに対してあまり好印象は持っていないように見えますが、厳しい記事ではあっても公正なテストを行った結果であるようには見えます。
シマノの内部でも当然この問題は把握しているでしょうから、今後の製品アップデートに期待したいですね。このピンチを乗り越えてこそ日本が誇る世界のシマノ。DC Rainmaker氏にテストユニットを送付した時点で、こうしたレビュー結果になるのは予想がついていたことでしょう。フィードバックが改良に活かされるのを待ちましょう。