GIANTのE-BIKE ESCAPE RX-E+は新たな伝説を作ることができるのか

GIANTが昨年暮れにE-BIKEを発表しました。伝説のクロスバイクESCAPE R3と同じ「ESCAPE」シリーズに属し、そのよりスポーティーなモデルである「RX」の名を含む「ESCAPE RX-E+」です。

外観と基本スペック

バッテリーを収納するマッシブなダウンチューブが印象的なデザインです。フレームとフォークは、意外なことにどちらもアルミです(ESCAPE RXシリーズは最下位グレードRX3を除きすべてカーボンフォークです)。シートステイはオフセットされています。

GIANT ESCAPE RX-E+

GIANT ESCAPE RX-E+ © giant.co.jp

基本的なスペックを観察してみます。

  • サイズ:445(XS),485(S)
  • 重量:20.0kg(445mm)
  • フレーム:ALUXX SL-Grade Aluminum OLD142mm
  • フォーク:ALUXX SL-Grade Aluminum OverDrive Column 12mm Axle
  • クランクセット:Aluminum
  • ブレーキ:SHIMANO MT200 160mm Rotors
  • サドル:GIANT CONTACT COMFORT NEUTRAL
  • ホイール:GIANT GX-28 WheelSet
  • タイヤ:MAXXIS RE-FUSE 700x32C
  • スピード:10 Speed (Tiagra 11-34T)
  • モーター:GIANT SYNCDRIVE SPORT、80Nm ブラシレスDC 240W
  • バッテリー:GIANT ENERGYPAK 500、36V-13.8Ah リチウムイオンバッテリー
  • コントローラー:GIANT RIDECONTROL EVO
  • 付属品:フロントライト 1500カンデラ、充電器、ベル、リフレクター
  • カラー:アイスグレイ, ブラック
  • 前後とも12mmのスルーアクスル。モーターはYAMAHAと共同開発したもので最大トルク80Nm、最大ケイデンス110rpmをサポート。ブレーキはシマノのMT200、これはノングレードの油圧ディスクブレーキです。タイヤは太めの32C。リアディレイラーはTiagraで10段変速。カセットは11-34T。

    E-BIKEというのは基本的にユーザーが走行性能を高めるために駆動系は改造してはいけないことになっているので(法律で定められたアシスト能力に影響が出るため)、自分で変えられる部分はサドル・シートポスト・ペダル・ステムくらいでしょうか。ハンドルはいろいろ付いているので純正品のままが良さそうです。

    GIANT ESCAPE RX-E+

    GIANT ESCAPE RX-E+ © giant.co.jp

    フロントライトに給電できるというのはすごくいいなと思います。気になるお値段は税抜き¥280,000。もはや「ジャイアントのエスケープ」の価格ではないですが、これが安いのか、妥当なのか、高いのか、個人的にはイメージがよくつかめない価格です。

    これが28万円か。いいね。とか、えっこれで28万円もするの? といった感想が素直に自分の中から出てきません。E-BIKEの価格感、それもスポーツタイプのE-BIKEはいくらくらいするものなのか、というイメージが湧きません。

    いや、これが10万円ならすごく安いとは思います。でも自分でこれを買おうと思う値段の上限は15万円くらい。税抜きで28万円であれば、よっぽどすごいバイクでないと納得できない気はします。これは乗ってみないとちょっとわかりません。乗らずに判断はしたくありません。

    走行性能

    RX-E+には4つの走行モードがあり、一充電あたりの走行距離はモード毎に次のようになっています。

    一充電あたりの走行距離
    SPORTモード 90km
    NORMALモード 110km
    ECO+モード 150km
    ECOモード 225km

    E-BIKEの電動アシスト性能や一充電あたりの走行距離、といった目安もなかなかわかりにくいものです。メーカーサイトには大体「※標準パターンによる」などと書かれているのですが、そもそもその「標準パターン」が何なのかわからない。業界団体へのリンク先もない。

    というわけで調べてみたところ、次の3つのドキュメントが参考になるようでした。

    1. 電動アシスト自転車の一充電当たりの走行距離測定自動化の検証(一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所)
    2. 電動アシスト自転車の評価機器と品質性能調査方法の検討(一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所)
    3. 電動アシスト自転車−一充電当たりの走行距離測定方法(日本工業規格 JIS D 9207: 2000)

    一通り読んでみて、電動アシスト自転車の定量的な性能評価が簡単ではないこと、「一充電あたりの走行距離」の「標準パターン」は大体わかりました。が、「E-BIKEを買おう」という人にはまったくイメージがつかめないと思います。

    さらに数字以外ではわからないこと、たとえばトルクの発生具合とか、アシストの切れ方といった官能性能に関する部分は乗ってみないとまったくわかりません。

    普通の人はたぶん「フル充電でフルパワーで使うなら90km持つのか!」という感覚で十分なのでしょう。しかし、体重80kgの人が斜度18%の坂道でこのバイクに乗っても、90kmは持たないでしょう。このあたり、「一充電あたりの走行距離」には各社もう少しわかりやすい「使用シーンごとの例」を添えてくれたらありがたいです。

    「ECOモードで225kmの巡航が可能!」と言われても、あまりイメージが湧きません。

    E-BIKEの本格普及に必要なもの

    果たしてこの「ESCAPE RX-E+」は、クロスバイク「ESCAPE R3」のような伝説を作ることはできるでしょうか。多くのユーザーに熱狂的に迎えられ、「最初のE-BIKEならRX-E+!」という立ち位置を占めることはできるでしょうか。

    これはRX-E+に限ったことでは全くないのですが、個人的にスポーツタイプのE-BIKEの普及の鍵はとにかく軽量化にあるんじゃないか、と思っています。いろんな意見があると思いますが、私の意見はそう。

    スポーツバイクは室内保管が基本です。一戸建て住宅でガレージがあればいいのですが、人口が多い都市部では集合住宅に住んでいる人のほうが圧倒的に多い。するとエレベーターなり階段なりで自転車を部屋の中に運ぶ必要があります。玄関に置けなければ、バイクラックにセットする必要があったりもするでしょう。

    その時に20kgという重量はやはりちょっと重い。フルサスのMTBよりも重い。なんともならない重さではありませんが、心理的な負担にはなると思います。

    それとこれだけ車重が重いとパンク修理をする時も、バイクを持ち上げる時に少し大変でしょう。これも大したことではなさそうに思えますが、「ちょっとめんどくさそう…」というイメージが積み重なってしまうのは問題です。

    あと重すぎて輪行しようとは思わない。というかメーカーもそんな使用シーンは想定していないと思いますが、やっぱりいろんなところ行ってみたいじゃないですか(そういえば少し前のサイスポの特集で、E-BIKEでフェリー輪行するという面白い記事があった)。

    下の動画では「しまなみ海道」や林道が出てきますが、このバイクを持っていくのはちょっと大変そうです。楽しそうだな〜、とは思うのですが、でもどうやって行くんだろ? とも思うのです。

    新しい需要をつくる

    少し郊外の住宅地に住んでいる人、地方都市に住んでいてクルマもガレージもあるような人にはおもしろい選択肢になるとは思います。このRX-E+もそういうユーザーをターゲットにしている… のでしょうか。

    ターゲットユーザーがよく見えません。ただ、ターゲットが見えないということは、個人的には決して悪くないことだと思っています。プロダクトには既存の需要を満たすものと、新しい需要を生成するもの、両方あります。

    このRX-E+がいまのところどんな乗り手を想定しているのかよく見えてこないとしても、このバイクが「新しいタイプのサイクリスト」を生み出していく可能性はあるでしょう。

    でもスポーツタイプE-BIKEを爆発的に普及させるためには、とにかく軽量化するしかないんじゃないかという気がします。これは「一充電あたりの走行距離」との兼ね合いになるところが大きいと思いますが、なるべく走行性能のキャパシティを落とさずに12kg以内に収まるような製品がたくさん出てきたら、もっと普及するんじゃないでしょうか。