自転車ってどれだけ下調べをして、試乗を繰り返しても、やっぱり実際に所有して走ってみないと、わからないことってありますよね。
ブロンプトンみたいなヘンテコな、もとい独創的な構造の自転車ならなおさらです。
そんなわけで、ヤビツ峠に行ったり100km走ってみたりして思い知った、ブロンプトン生活の現実をダラダラと垂れ流してまいります。
コロコロの現実
想像:コロコロできると、輪行時の移動はすごくラクになるんだろうなぁ…!
現実:コロコロできなくて、わからんかった…。
ブロンプトンといえば、コロコロ。コロコロといえば、ブロンプトン。と、勝手に思っています。
輪行状態にした場所から切符売り場周辺までとか、列車を降りたあと改札を出て輪行解除する場所までの移動といったシーンで、重い自転車をコロコロできれば最高に楽チンにな輪行ができるはずです。
なのでコロコロ移動には、人一倍大きな大きな期待を抱いていました。
そんな自分が購入したモデルは、「CHPT3 V2」。型番は「S6E-X」ですが、そこに大きな罠があったとは…!
実は、ブロンプトンでコロコロ移動をするためには「泥除けorキャリアが装着されていること」が必須条件。型番の末尾「E」は、泥除けもキャリアも装備されないモデルになります。
型番の末尾と装備/コロコロ性能の比較
型番の末尾 | 装備 | コロコロ性能 |
---|---|---|
R | 泥除け、キャリア | 超コロコロしやすい |
L | 泥除け | コロコロできる |
E/E-X | どちらも無し | コロコロ不可能 |
ええーっ!そうなの? だってサドルの後ろに、ちっこい車輪ついてるじゃないですか!それさえあれば、スーツケース転がす要領でコロコロできると思い込みますよね?(「思い込まねーよ!」というツッコミ不可)
そもそも、そんな型番の種別なんて、ふつうの自転車乗りには知る由もありませんよね?(「事前に調べろよ!」というツッコミ不可)
わたくし、何も下調べをせずに「うひょー!!この限定モデルのブロかっちょえー!!これにする!!ください!!」と勢い「だけ」で、購入するモデルを選んでしまっていました。
はい、どこにも言い訳の余地がない、典型的なダメ客でございます…。
というわけで、コロコロは未だに未体験。
「後付けでキャリアを装着できるよ」と、購入店さんにはコメントいただいていますが、費用対効果がさすがに厳しそうです。あと、せっかくのスッキリした見た目がなぁ〜。
重さの現実
想像:ロードより重いブロンプトンを抱えて輪行するのって、結局はツラいよね…。
現実:どういうことだ!? 思ったより全然ツラくないぞ!
ブロンプトンとカーボンフレームのロードバイクを比較すると、重量ではブロンプトンが完全に不利。ブロンプトンは、圧倒的に重いです。
ということは「抱えて輪行移動するときにツラいのは、質量がより大きいブロンプトンの方である」と考えるのが、物理法則的には普通の結論になりますよね。
なんですが、人間の感覚はそんな物理的な条件の差を、軽々と無視してしまうのです。
ブロンプトンは折り畳むことで、体積が「異様なくらい」と表現してしまえるほど小さくなってしまいます。前後のホイールを外して輪行状態にしても、やっぱり巨大感が否めないロードバイクに比べて移動時の取り回しに必要な力が全然少なくて済む印象です。
これは完全に個人の感覚でしかありませんが、輪行袋に入れてフレームを持って運ぶにしても、ショルダーベルトで肩掛けして持ち歩くにしても、ロードで輪行するより圧倒的にラクでした。
たとえば町田駅で横浜線から小田急線に乗り換えるときは、「自転車を運ぶには絶望的な距離がある連絡通路を移動する」という苦行を強いられます。
そこで畳んだブロンプトンを運んだときに感じたのは、「思いのほかキツくない…」という感覚でした(「重い・ツラいと感じてない」とは言ってない)。ブロンプトンの車重はカーボンロードより明らかに重いはずなのに、コレいったいどういうことなんでしょうね?
輪行準備と解除の現実
想像:輪行準備、輪行解除がロードと比べてラクなんだろうなー。
現実:想像どおりラクすぎる…!この折り畳み構造は超すげえ!!
当たり前といえば当たり前すぎる現実ですが、ブロンプトンの輪行準備/解除のしやすさは、もう圧倒的ではないか我が軍は!という感じ。
輪行準備、解除のスピードはもちろん、作業ストレスの軽さが実に素晴らしいです。ブロンプトンの折りたたみ構造、本当によく考えられてます。
自分はブロンプトンの他にも、折りたたみ自転車を2台所有しています(「自転車持ちすぎだろお前…」というツッコミ不可。自転車は自己増殖しますから、仕方がありません!)。
それぞれスタイルや走行性能に個性があり、工夫された折り畳み方式を採用しています。が、「折り畳んだ時の体積の小ささ」「折り畳む作業のストレスのなさ」で、ブロンプトンは群を抜いています。それはもう「比較にならない」と、言ってしまえるレベルです。
「輪行準備、解除のストレスが小さいと、輪行がこんなにラクに感じられるのか…!」と、ビックリすることうけあいです。
ただし!輪行解除時、「絶対に」守らなければイケナイ手順が1点。それは「畳んだ左側のペダルを、最初に元に戻す」ということ。
左のペダルを畳んだまま組み立てると、リアのフレームとペダルが接触。ガリッという嫌な音とともに、思いっきり傷が入って血の涙を流すことになります(経験者談)。
列車内での現実
想像:輪行時は列車内でもロードと比べてラクなんだろうなー。
現実:想像どおりラクすぎる…!このサイズ感、自転車とは思えない!!
畳んだブロンプトンは、とんでもなくコンパクトになります。掛け値なしで、スーツケースぐらいのサイズ感。
ロードバイクはどうコンパクトに収納しても「異常に大きい荷物」以下にはならないですよね。それに対して畳んだブロンプトンは、「ちょっと大きいだけの普通の手荷物」という感覚。車内持ち込み時の感覚が、あまりにも違いすぎ。自転車を持ち込んでいるとは、思えないくらいです。
新幹線で自分の席に持ち込んでも、最前列なら他の方に迷惑をかけません(実験済み)。
ラッシュアワーとかでなければ、普通の通勤電車のドア横に置いても平気。タクシーの車内にだってヒョイッと持ち込めてしまいます。
これまで感じていた輪行の敷居を、コンパクトサイズの暴力で粉砕してくれる自転車。それが、ブロンプトンです。
6段変速モデルの現実
想像:6段変速なら、坂もそれなりに走るでしょ。
現実:ツラい…たすけて…脚がモゲル…。
ヤビツ峠で人体実験した記事にも書いたのですが「6段のいちばんロー側なら、ギア比が軽いからクルクル回して激坂もクリア可能」と、こんなふうに思っていたんです。
ですが、現実は違いました。
甘い考えで秦野駅に訪れた自分を待っていたのは、また地獄だった。
蓑毛の坂に住みついた斜度の暴力。
秦野市が産み落とした長くキツイ坂道。
悪徳と野心、退廃と混沌とをアスファルトの路面にぶちまけた。
ここは、神奈川県道70号秦野清川線のヤビツ峠。
次回「押し歩き」
来週もブロンプトンと地獄につきあってもらう。
というわけで、大変にツラい思いをいたします。
平坦路での現実
想像:さすがに平坦なら、いくらブロンプトンでも普通に走るでしょ。
現実:ツラい…たすけて…脚がモゲル…。
うちのブロンプトンは、「CHPT3 V2」。数あるラインナップ中でも、「走り」にパラメータを振ったモデル(公式によると「ロードサイクリストが乗りたがるブロンプトン」)です。
なので「いくら小径車とはいえ、まぁ普通に走るでしょ」と、こんな風に思っていたんです。
ですが、現実は違いました。ブロンプトンで横浜から宇都宮まで走ったときの記事にも書きましたが、ブロンプトンの走行性能は正直、クロスバイク以下。平坦コースを走っても、疲労度はロードの2倍以上(個人の感想です)。
マスターさんの記事にある通り、「ブロンプトンで楽しむには、マインドの変更が必要」だと思わずにはいられません。
というか、普通に折り畳み小径車と、ロードで似たような楽しみ方できるって思う方が間違ってますよね!ええ…。
と、いうわけでブロンプトンで100kmとか走ると、ふつうにたいへんツラい思いをいたします。
シフターの現実
想像:6段変速の外装2段・内装3段って、FD/RDの感覚でしょ?
現実:なんだ…この変速のマニュアル感は…!?
ブロンプトンの6段変速モデルでは、左手側のシフターで「+」「ー」の2段、右手側のシフターで「1」「2」「3」の3段の変速が可能です。
コレをロードのFD/RDの感覚で、右手側シフターの3段だけを使って変速を済まそうとすると、ギアのつながりの悪さに泣くことになります。
左右のシフターを駆使して外装ギアと内装ギアを交互に使って変速して、ようやく普通にギアがつながる感じです。
左右のシフター位置とギアの重さ
最軽 | 軽 | やや軽 | やや重 | 重 | 最重 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 |
- | 1 | + | 1 | - | 2 | + | 2 | - | 3 | + | 3 |
と、マニュアル車のような変速操作をしながら走らないと、快適に走れません。自分はマニュアル変速大好きジジイなので全然楽しく変速してますが、オートマ感覚を求めると厳しいかも(買って1ヶ月以上経つのに、 +2 → -3 の変速で今でもミスってるなんて、恥ずかしくて言えないとは言ってない)。
スムーズで簡単な変速を求める人がブロンプトンを買ってしまうと、アルテグラ11速を備えた「Tern BYB」の発売をなぜ待てなかったのか…!! と、自分で自分を責め立てることになるでしょう。
ブロンプトン・ショップの現実
想像:リア充ショップは、おっさんに冷たそう。マニアックショップは、素人に厳しそう。…あれ、自分にはブロンプトンを買える店が無い!?
現実:リア充ショップでも、普通に気持ち良く買えました。
ブロンプトンは普通のロードバイクとも、ママチャリとも、いろいろ違う点が多すぎる自転車です。いろいろなトラブルと、トラブルシューティングの経験値を有するスタッフさんがいらっしゃる専門店で購入する。というのは、後々のことを考えたら必須条件だと言えるでしょう。
なので、買うなら「正規販売店以外ありえねーでしょ?」と、個人的には思っていました。
オプションの取付とか、メンテとか、トラブルシューティングとか、その辺の安心感は絶対に抑えておきたいところですので。
だがしかし、そんなブロンプトンの正規販売店なのですが、少なくとも自分の観測範囲では(←そもそもの問題がここにあることは、重々承知しております…)、一部の大手チェーンを除くと
- ゴリゴリと廃人級の魔改造を施される、小径車専門ショップ
- オシャレでキラキラしてる、おっさんには近寄りがたいリア充ショップ
この「どちらか両極端な店しかねぇ!」という印象でした。
自転車に詳しくもなく、キラキラもしていない薄汚れたおっさんであるところの自分。どちらのタイプの店にも入りにくく、高い高い敷居を感じてビビりまくりでした。
結果的には、そんなの杞憂どころかただの妄想でしかなくて、普通に丁寧に応対していただいて気持ちよく買い物できたわけで結果オーライ。
ちなみに購入時、私が買った店のスタッフさんからは「何かありますから!(ニッコリ)」と、何かしらトラブることを宣言されてしまいました。
個人的にはそれで不安になるよりも、何かあっても全然頼れる店なんだ。という安心感の方が大きかったです。
とはいうものの…、やっぱりトラブる可能性はあるんですね。そうですか…。
ベルの現実
想像:道交法警察だ!ベルの装着義務を果たしていない軽車両を運行した罪で貴様を処刑する!
現実:シフターにベルがビルトインされてる!せっかく買った、OH-2400が無駄に…。
ブロンプトンのシフターには、ベルがビルトインされていました。買う前はまったく気付かなかったので、キャットアイの小型ベル買っちゃいましたよ…。
これからブロンプトンを買う皆さんは、納車時にベルをドヤ顔で持ち込んで恥ずかしい思いをしないようにしましょう…(涙)。
バルブの現実
想像:ロードで使ってるポンプそのまま使えるよね!?
現実:ブロンプトンのバルブ、仏式でも英式でもなく、米式かよ!
ロードバイクで使い慣れた、フレンチバルブ。ブロンプトンは一応スポーツサイクルにカテゴライズされる自転車のはずなので、まぁフレンチバルブですよね?
…そう思っていた頃が自分にもありました。
ブロンプトンに標準で付いているチューブのバルブは、米式。まあ、仏式に対応したポンプはだいたい米式にも対応してるので、ポンプ買い増し!とかにはならないケースがほとんどだと思いますが、ポータブルポンプを使い回そうとか思うと、いちいち内部パーツを組み替えないといけないので面倒なことこの上ないですよね。
もちろんチューブをフレンチに変えちゃうぐらいなら、お店に全部お任せして交換してもそこまで高額な工賃はかかりません。が、私の購入店では、バルブ近辺が傷ついてそこからエア漏れ発生!というケースがあるようで、あまりオススメはされませんでした。
整備性の現実
想像:携帯工具はロードで使ってるのがあるから、買わなくても大丈夫!
現実:ホイールすら外せる気がしない…。
ブロンプトンがいくら独自構造部分が多い自転車だとしても、ロードでの経験値があるんだからパンク修理ぐらいはできる。
…と、思っていた時期が自分にもありました。
ブロンプトンのリアホイール、どこをどうすれば外れるのか、まったく検討がつきません。そもそもホイールの真ん中から出てる、このチェーンなに!?
ホイール取り外しの動画を見てみたりしましたが、取り外した後に戻せる自信がまったくありません。ロードバイクがどれだけ整備性に優れているのか思い知らされます。工具とチューブを携帯してても、交換作業の途中で破壊的なダメージを与えてしまいそうです。
もしブロンプトンが出先でパンクしたら、タクシー呼んで輪行帰宅するほかないのでは…?
そして日常のメンテにしても、ロードバイクの整備をするのに工具類はひと通り買いそろえてありますが、ブロンプトンには使えなさそうな印象…。専用の工具セット買うか…。
広がる世界の現実
想像:ブロンプトンを買っても、自転車ライフの中身はそこまで大きく変わらない。
現実:ロードとは別の世界が広がります。
ママチャリ並みとは言え、それなりにちゃんと走る自転車をあらゆるシーンで携帯できる。そんなブロンプトンは、自転車生活に割と革命的な変化をもたらします。
たとえば電車で都心部に移動して、自転車であちこち回ってから、また電車で移動して帰宅する。なんていう、自転車始めた頃に夢見た輪行スタイルが、ノーストレスで実現可能です。
ほかにも、それこそ電車で家族旅行するときに、一緒に持って行くことだってできてしまう。
ロードバイクの替わりには、そりゃあなりません。なんですが自転車の楽しさを、普段の生活に恐ろしい敷居の低さでプラスできてしまう。コレができるのは、ブロンプトンだけじゃないかなー。異論は認めます。