突然ですが、中学か高校の英語の教科書に「二槽式洗濯機」の話が出ていたのを覚えています。詳しい文章までは覚えていないのですが結構難しい長文で、
イギリス人は古いものをいつまでも大事に使う。たとえば二槽式洗濯機を今でも愛用しているのだ。
という感じの内容でした。
最近ブロンプトンに乗っている時、その話を思い出したのでした。
ブロンプトンはイギリスで生まれ、イギリスで生産されている自転車です。折り畳み機構が便利な、鉄の丈夫な自転車です。乗ろうと思えば100kmの距離も問題なく(?)乗れます(人によって疲労度は違うけれど)。
ブロンプトンでの変速
ブロンプトンの変速は不便ですか? と聞かれたら、
はい不便です
と即答します(笑)。私が乗っているモデルはS6Lという6段変速のモデルで、右手のシフターでスターメー・アーチャー社の内装3段ハブを変速させ、左手のシフターで外装2段変速機を操作します。その組み合わせで6段変速を実現しています。
「M3L」のような「3」という数字が入るモデルは内装変速のみで、下の写真のような左シフターはありません。
ブロンプトンの内装変速は不便です。不便というか、手順があります。右シフターは普通のロードバイクのように「ペダリングしながら変速する」ことはできません。脚をいったん止めて、そのタイミングでシフターを操作しないといけないのです。
長年使ってもそう簡単に壊れない。変速時は脚を止めるという儀式が発生する。イギリス製品。そんなところで「古くてもなかなか壊れない、脱水時には洗濯物を移動させる必要がある二槽式洗濯機」のことを思い出したのかもしれません。
不便さも含めて楽しむ自転車
最近ブロンプトンを入手されたなどかずさんが「ブロンプトンで100km走ってみたら、どうなった?」という面白い記事を寄稿してくださいました。ロードバイクより疲れる! というお話です。
この感覚はよくわかります。ブロンプトンに乗って思うのは「クロスレシオ(close ratio)」というものがいかに脚に優しいかということ。
最近のロードバイクのように20段、22段変速の自転車は「もうちょっとだけ重いギア」や「もうちょっとだけ軽いギア、それより少しだけ軽いギア…」というふうに、きめ細かく負荷を選択できます。
でもブロンプトンにそんな贅沢はありません。3つ、または6つしかありません(シングルや2速のモデルもあります)。
ギア比は3速のモデルで「大・中・小」のような「ざっくりした」感じであり、これが6速モデルになるとだいぶ贅沢な感じにはなってきますが、それでも走っていて
軽すぎる〜!
重すぎる〜!
なんでこの真ん中がないんだよ(汗 or 怒 or 笑)
とよく思います。
不便です。効率的ではありません。
私はだいぶ前に1度、ブロンプトンを手放したことがあります。ロードやMTB等のより変速数の多い自転車に乗っているうちに、あまり乗らなくなってしまったからです。
しかし2年くらい前に買い直しました。いったい何故でしょう。自分でも不思議です。
20万円もする、不便な自転車です。ドラム式全自動洗濯機というよりは、明らかに二槽式洗濯機に近いマシンですw
でもなんか、いいんですよ。この融通の効かないところが、ちょっと面白い。以前はこの「融通の効かないところ」を改善しようとしてブロンプトンを改造しまくりました。
フロントチェーンリングをダブルにしたり、より便利にしようといろいろな小物を追加したり。いまでもそういう欲求がないわけではないのですが、最近は
不便なところも含めて楽しむ
というふうにブロンプトンとの付き合い方が変わってきました。
ギア比について言えば、「この道、ロードだったらケイデンス70rpmくらいで回すのがちょうど良いのにな〜」というところを、
チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリ…..
というラチェット音とともに、4〜50rpmくらいでのっそり回しつつ、
ゴォォォーーーーー
と突進するのが楽しい。トップギアでハイスピードで爆走している時は自転車というより戦車を走らせているような気分です(※戦車を走らせたことはないので想像)。
もうなんというか、
お前の脚の事情とか知らん。お前の心拍事情も知らん。
俺にあるギアは6つだけだ。以上
とブロンプトンに言われているようで、それが面白い。
ロードより疲れるが、ロードよりつまらないわけではない
100km以上乗る場合、やはりロードよりは疲れます。
しかし「ロードよりつまらない」わけでは決してないんですよね。ロードバイクとMTBのどちらが優れているか、という問いに意味がないのと同じで、ロードバイクとブロンプトンはどちらが優れているか、という問いも成り立たないでしょう。
というわけで、ブロンプトンはやはり魅力的で面白い自転車です。「ロードバイクが示してくれる楽しい世界」をブロンプトンに期待すると、失望のほうが大きいかもしれません。ブロンプトンを楽しむためには「ブロンプトンが示してくれる世界」に入らなくてはならないと思うのですが、それを言葉にするのは面白くも難しくもあります。
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