VORREIはCOLNAGOが2018年モデルからラインナップした「フラットバーロード」です。コンポはクラリス(2×8速)、またはソラ(2×9速)。
購入から2年弱。性転換レベルの大手術の結果、今では1×11のフロントシングルロードになってます。
これは、吊るしのエントリーグレード完成車が、ナンバーワンよりオンリーワンの“世界に一つだけの花”になるまでのストーリー。
アンチ正統派
北国に転勤&当時持っていたブルホーンミニベロ(ルイガノ)と自分の体との相性がいまいちだったことから、スポーツ自転車とは数年間距離が開いていました。
しかし関東に戻ってきた&サイクルモードを機に自転車熱が復活。「そうだ新車買おう」と決意を固め、長い情報収集の日々が始まります。
当時想定していた用途は、50キロ程度のポタリング。すると、
- ミニベロ→飽きた
- クロスバイク→過去に持ってた(KHSのクロモリ)
- MTB→サスはメンテがたいへんそう
- e-bike各種→バッテリーがヘタった場合、交換すると高額
残った選択肢がロードバイクですが、体の硬い自分が乗りこなせるか不安があったため(レンタルではちょくちょく乗っていました)、逡巡。そして「フラットバーロード」という車種の存在を知り、「これだ!」と膝を打ちました。
普段着で乗っても違和感なさそうなのと、ニッチなジャンルであることも、へそ曲がりでアンチ正統派な自分にはポイント高かったです。
そうと決まれば、マイナー車種でそもそも選択肢が豊富ではないこと、COLNAGOがちょうど新モデルでフラットバーロードを出すと知ったことから割と即決。試乗はしませんでした。サイズが3種しかないから迷う要素もなかったんですが。
特に気に入ってる点は、
- ツールドフランスに機材供給してる古豪ブランドである
- その割に10万円で重量9.5キロ(クラリス完成車)と、価格とスペックのバランスも悪くない
- ペンギンとνガンダム好きな自分にぴったりのカラーリングです。割とヒット作だったようで、今シーズンも販売継続(マットネイビーもかっこいいなあ…)しています。
コイツ…走るぞ!
17年11月に納車され、さっそく当時住んでた千葉市から、市原市の湖畔部まで往復約70キロ弱のサイクリング…のはずが、気が付いたら養老渓谷までオーバーランして110キロ走ってました。それまで100キロライドをしたことなかった人間が、何の準備もせずに。
一体これはどうしたことか。秋晴れの天気と房総の自然に誘われたせいかもしれません。納車時の鉄下駄を速攻で捨てて履かせた軽量ホイール(NOVATECのJETFLY)のせいかもしれません。初期装備のサドルがなぜか完璧に尻に合ったせいかもしれません。理由の因数分解は今もできていません。
しかし素直に考えるなら、VOLLEIのフレームにそれだけ「走りを楽しませる」ポテンシャルがあったと判断していい気がします。代理店がHPで「最速のフラットバーロード」をうたっているとおり、チェーンステー長410ミリのジオメトリはクロスバイクとは一線を画すキビキビした加速性を実現。前傾も緩すぎず、きつすぎずでバランスが取れています。
当初の想定用途(50キロ程度のポタリング)はどこへやら、すっかりロングライドの魅力にはまり、毎週のように100キロ超のライドに出かけるように。自分史上最も熱い、そして現在も冷めていない自転車ブームの始まりです。
それと同時に、一つの問いが胸の内に湧いてきます。
…ロードバイク買えばよかったのでは……?
繰り返されるオペ(改造手術)
上述したフレームのポテンシャルの他、
- グリップはエルゴノミック形状(ERGONグリップではない)
- シートポストは短く詰められ肉抜き加工もされており、実測280グラムとアルミにしては軽量
- ハンドル幅も460ミリ(実測)とフラットバーとしては短めで、クイックなハンドリングと空気抵抗削減に貢献
…と、VORREIは細かいところにも気が利いたバイクです。
しかし上をみればキリがなくなるのは自転車界あるあるで、年が明けて2018年になるころには毎月のようにオペ(改造手術)に着手していました。
- ペダル:初期装備→ピン付き軽量ペダル→SPD
- グリップ:初期装備→ERGON GS3
- タイヤ:初期装備→GP5000
- シートポスト:初期装備→カーボン(アウトレット品で1000円。いろんな意味でドキドキした逸品)
巷で言われる通り、タイヤとチューブは性能アップを感じやすい改造でした。ペダルのSPD化はスピードアップというより体力(脚の持久力)消耗を抑える効果の方を強く感じました。エンドバー付きのERGON GS3はダンシングのしやすさが絶大で、いつか何かに再利用したいなと思っています。
これらと並行してサイコンをGARMINにしたりと、アクセサリ類にもかなり投資。
あと上述したホイール(NOVATECのJETFLY)は海外通販で5万弱~国内実売価格6万とお手頃な割に、重量はペア1500グラム未満と優秀です。漕ぎだしが軽い。
もはやこの時点で、金額的価値は「フレーム<それ以外」状態に(笑)
そうだブルベ出よう
ロングライドは目的地がないとしんどいものです。ちょうど「ツール・ド・御朱印」という、関東一円に散らばった神社10社を、いつでも好きな順序で回って御朱印をいただくというキャンペーンに参加していたのが、モチベーション維持に役立ちました。
東京を中心に放射状に神社が分布していて、東京駅辺りからの自走だと往復15~200キロ超のライドが楽しめるので、ポタリングからロングライドまで、新装備の性能チェックや自分の体力・マネジメントスキルの向上にうってつけ。
ちなみにツールド御朱印は今もいつでも参加可能ですが、御朱印をもらう前に参拝を済ませるのがマナーだそうなので、そこんとこはよろしくお願いします。
ツール・ド・御朱印をコンプリートし、1日の最長走行距離を200キロ超まで伸ばすようになると、新たな野望が芽生えます。
そうだ、ブルベ出よう
生粋のヘタレである私は、レースには全く興味がありません(誘ってくれる人がいるならチームエンデューロは出てみたいです)。
しかし自転車にハマった「証」のようなものが欲しいと考えていたところ、完走者はかっちょいいメダルがもらえる(買える)ブルベの存在を知り、いつか絶対出るぞと決めました。
ブルベは最短カテゴリでも200キロ。しかも、順位は問われませんが、CP(チェックポイント)ごとに到達タイムが設定されており、スタート~ゴールのトータルタイムは13時間半以内(未満でしたっけ?)と決まっております。
単純計算で15km/hをキープし続ければOK…ということから甘く考えがちですが、信号待ちも休憩も激坂も向かい風も含めての15km/hというのは実は結構シビアです。
「200ブルベはママチャリでクリアする人もいる」といったエピソードは広く語られていますが、それって「周富徳は家庭用コンロでもおいしいチャーハンが作れる」みたいな話ですからね。凡夫は身の丈に合った装備と戦略が必須ってものです。
そして、トレーニングにいそしむ時間も根性もないけど、自由になるカネはある独身男はマシンのさらなる高速化改造をもくろむのですが、打つ手はもはやドロップハンドル化しか残されていないのでした。
GRXでワンバイイレブン
フラットバー⇒ドロハンは高速巡行には寄与しますが、視界が狭くなりブレーキも握りにくくなるため、街乗りにはマイナスです。ポタリングもそれなりに楽しんでいた自分にとって、トータルの使い勝手は悪くなります。
いっそ新しくロード買うか…?とも思いましたが、既に愛着が湧いていたうえ、今自分が妥協抜きで求めるスペック(カーボンフレーム、油圧ディスク、電動変速、ケーブルフル内装、カーボンホイール)だと60万オーバーは堅いので、「(実現は怪しいが)将来の夢」にとっておこうと踏み止まり。
幸い、VORREIはワイズロードの一部店舗が在庫をドロハン仕様に改造して売り出すほどの「ドロハン化ありきのフレーム」です。クロスバイクをドロハンにしたけどなんか違う…というあるある問題に陥る恐れはありません。
問題は費用です。単に安いアルミハンドルとステム、クラリスのSTIを買ってポン付けすれば、ショップに頼んでも工賃込3万弱に収まるでしょう。
しかしここでまた自分の中の天邪鬼が火を噴きます。
フロントシングルってかっこよくね?
現在進行形でエレベーターのないアパートの3階に住んでいる自分にとって、室内保管のための担ぎ上げの苦労を思うと軽量化は大・正・義です。
また、クラリスの「ガッチャン!! ガッチャン!!」という重たいシフトタッチ(フロントはもちろんだがリアも割ときつい)にもうんざりしていました。
当初は普段着で乗るつもりだったのでつけてもらったバッシュガードは、チェーンリングやBB周りを掃除する際のお邪魔虫と化しています。
これらを同時に解決する手段が、リアを105以上にグレードアップさせ、フロントはシングルにして不要になるチェーンリングやフロントディレイラー、シフトワイヤーの分を軽量化する「1×11速化」でした。
ただ、持ってるクランクによっては、ウルフトゥースなどサードパーティのナローワイドチェーンリングとクランクアームを合体させ、費用を抑えてフロントシングル化ができるようなのですが、私にその手は使えません。
- SRAMのAPEXにする→ダブルタップは自分の好みではない
- SHIMANOのMTB用のシングルクランク買う→さすがに歯数が小さい
- ティアグラか105のクランク買ってチェーンリングはウルフトゥースを別途購入し装着→ウルフトゥース買うカネをFDに充てて普通にフロントダブルで運用した方が安く済むから本末転倒
…と八方ふさがりになってきたところ、まさに私のために開発されたような新製品ニュースが飛び込んできます。
「SHIMANO GRX」です。
GRXはSHIMANO初のグラベル用コンポで、フロントシングルのクランクがあります。詳細はCBN Blogの記事を参照いただきたいのですが、チェーン、スプロケは11速であればロード用、MTB用双方と互換性があります。
そして当然ながら、ロード用のチェーンやスプロケを使う場合、RDはGRXのものではなく105やアルテグラを使ってもまったく問題ありません。
絶好のタイミングで登場した新製品にヒャッホウ状態だった私は、ついでにハンドルをカーボンにしたりと当初想定を上回る予算を気前よくぶっこみます。お代は工賃含め11万円也。
VORREI本体が10万、ホイールが6万、無用になったエルゴングリップの代金など過去のパーツ投資も含めると…CANYONかGIANTなら、カーボンフレームに紐アルテが付いた完成車買えたな~(遠い目)
おかげで200ブルベは完走できました。。。メダルはよカモン。
そして世界に一つだけの花
こうして愛車は現在の姿となりました。コスパが重視される昨今、自分の進んできた道はぶっちゃけ失敗とされる類でしょう。
しかし「最適解に最速・最短でたどり着く」のだけが趣味の楽しみ方ではないとも思います。旅行は準備段階が一番楽しいと言われるように、次はどんな改造を施そうか考え、クランクアームのPCDなどマニアックな情報までチェックする時間は仕事のしんどさを確かに忘れさせてくれました。
スペック的にVORREIを上回る完成車は山ほどあります。しかしこのバイクは私専用の“世界に一つだけの花”なのです。少しでも長く咲き続けてくれるよう、メンテにいそしみ今後も思い出を作っていきたいと思います。
以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。
スペックリスト
- フレーム:アルミ
- フロントフォーク:カーボン(コラムはアルミ)
- ハンドル:TRIGON RB120S2(カーボン)
- ステム:TNI Black17ステム(アルミ)
- サドル:初期装備。メーカー不明。
- シートポスト:ZERO9(カーボン)
- ホイール:NOVATEC JETFLY
- タイヤ:Continental GP5000
- ペダル:SHIMANO PD-ES600
- コンポ:105~デュラとGRXのごちゃまぜ
- サイコン:Garmin Edge 820
- 総重量 8.3キロ(ペダル、各種マウントやセンサー、ボトルケージ込)