SRAMがホイールメーカーのPrinceton CarbonWorksを提訴しました。SRAM傘下ブランドZippの「454 Carbon NSW」ホイール等で採用されている「波打ったリムデザイン」の特許を侵害している、というのが理由です。Bicycle Retailerが報じています。下の画像は訴えられたPrinceton CarbonWorksのWAKE 6560。
Zippはザトウクジラ Princetonは正弦波
下がZipp 454 Carbon NSWのリムです。これは「ザトウクジラの胸ビレ」にヒントを得たバイオミメティクス(生物模倣)的なデザインとされています。
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確かにPrinceton CarbonWorksのリムは上のZippとそっくりです。また、Princetonのほうが後発です。しかしPrincetonは、このリムデザインはザトウクジラにヒントを得たわけではないと主張しています。Bicycle Retailerは次のように伝えています。
- SRAMはPrinceton CarbonWorksに対し特許侵害で訴えを起こした
- Princeton CarbonWorksのカーボンロードホイールの波打ったリム形状が、ザトウクジラの胸ビレに着想のヒントを得たSRAMの特許を侵害していると主張している
- SRAMのその特許はZipp 454 Carbon NSWホイールで採用されている
- SRAMのホイールは発明者Dimitrios Katsanis氏による2017年の特許と2020年の関連特許に基づいている
- 同氏は2つの特許をMetronに譲渡し、Metronはその後SRAMにその特許を譲渡した
- 特許によると「波状に構成された」リムやスポークは空力抵抗、とりわけ横風を受けている際のそれを軽減するとされる
- 特許では1995年のJournal of Morphologyに掲載された”Hydrodynamic Design of the Humpback Whale Flipper”(ザトウクジラの胸ヒレの流体力学的デザイン)という論文が引用されている
- 2018年にホイールマーケットに参入したPrincetonは、少なくとも表面的にはZippに酷似するリム形状のホイールを販売している
- しかしPrincetonによれば同社のリム形状は「対称的な正弦波」的なデザインであると主張する(Zippはノコギリ的な形状である)
- Princetonの共同創業者Paul Daniels氏はCyclingTipsとの2018年のインタビューで「競合他社の製品を超えるような次世代製品の開発にリソースを集中させることが、我々にとって大切だ。特許問題で争うよりも、ロイヤルティを支払ったほうが経済的には良い決断だ、ということになれば、それでもいいと思っている」と語っている
- SRAMの訴えによると、PrincetonはSRAMの特許を認知した上でホイールの販売を続けていた
- SRAMは恣意的な特許侵害による損害の三倍額賠償と、Princetonが持つホイールの在庫の破壊を求めている
これを読む限り、Princeton CarbonWorksには確信犯的なところがあったのではないかと言われても仕方なさそうです。また、Zipp 454 Carbon NSWのリムの波打ちは確かに非対称な形状なのですが、発明者Dimitrios Katsanis氏による特許文書中のデッサンでは波打ちは対称的になっていて、Princetonの現行ホイールとそっくりだったりします。
この戦い、素人目にはPrincetonの分が悪そうに見えますが、SRAMが求めている対応が無慈悲ですごいなとも思います。
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