自転車関連メーカーが「やめてくれてよかった」と思うことは何ですか、というスレッドを海外掲示板で見かけました。様々な規格が挙げられていますが、特にフックレスリムについての辛口な意見が目立ちます。

ZIPP 303 S Tubeless Disc brake © ZIPP
出典 What is something you are glad manufacturers stopped doing?
以下、個人的に注目したコメントの抄訳です。
- カーボンリムブレーキ。私はリムブレーキのファンで、今でもカーボンリムブレーキを使っています。摩耗アイテムであるブレーキング・トラックをホイール構造の一部にするのはグレートなアイデアではありません。素材がアルミと同じくらい放熱しないのなら、さらに良くありません。あとバイクをナロータイヤとナローなBBスタンダード中心に設計すること。そしてボーナスは、フックレスリムです。メーカーのいくつかは理解しはじめたようです。ナロータイヤ・高圧で運用するフックレスは、単純に多くの人々に対して十分な安全マージンを残してくれないのです。唯一の恩恵は製造コストが安くなることです。だからそれ以外の理由があるフリをするのはやめましょう(96いいね)
- フックレスとそれ絡みの「マーケティング」が大嫌いです。いつかUCIに禁止されて、フックレスホイールを使っている人がタイヤを見つけられなくなるといいなと思います(37いいね)
- (※筆者注:複数コメントの統合)(YouTuberの)Cade mediaがテストしたところによると、フックドリムではタイヤに220psiまで空気を入れても外れなかったけれど、フックレスは104psiで吹き飛んだ。どちらも28mmタイヤを使用していたと思う。しかしフックレスにもいろいろあり、タイヤとリムの組み合わせが良ければかなり丈夫。変動要素が多すぎるし、モルモットになりたくはありません(19いいね)
- フックレスが抱える多くの問題のひとつは、フックレスリムの完成車のタイヤのサイドウォールに85-125psiと読める数字があったりすること。これはクレイジーで誤解を与える情報です。これに加えて不正確なポンプや、気温による空気圧の変化、高度による空気圧の変化を考えると、ロード・フックレスには多くのリスクがあると言えます(13いいね)
- 「私達のフックレスリムに『ミニフック』を設置しました」。フックレスがひどい、安全でない考えだったと素直に認めたらいい。ただライアビリティ(法的責任)の問題からそうできないのだろうと思う。「いや〜、何百円か節約するために安全でない製品だとわかっていて売りました。訴えないでください」というわけにはいかないだろうから(9いいね)
- 製造が完全に終了したわけではないが、ありがたいことにメーカー各社はスレッド式BBに戻りつつあるようだ(58いいね)
- カーボンフレームにシートマストを組み込むこと(19いいね)
- 何でもエアロにすること。かつてはより適切なジオメトリやコンフォートが推されてきた。エアロや軽量さが活躍する時と場はあるものの、大部分の人々にとってどちらも決定的に重要なものではない(46いいね)
- (上の人に)一つだけ指摘させてもらいたいのですが、エアロだからといって快適さが劣るとは限りませんよ(41いいね)
フックレスリムについての批判は最近、このスレッド以外でもだいぶ目にするようになってきました。レース中の事故以外にも「ミニフック」なるものがまさかの登場を果たしてしまったり、超有名カーボンホイールメーカーの元技術責任者が「フックレスは詐欺」などと発言したことで疑問視する人が増えたのではないかと感じます。
ユーザーにとっての恩恵はない・あるいは非常に少ないけれど製造業者にとって大きいコストメリットがあったという点で、フックレスリムとプレスフィットBB(特に初期の諸規格)はよく似ている感じがします。
ところ最近、下の記事で電動コンポへの批判意見を観察しました。

しかし電動コンポは、コンポメーカーや完成車メーカーにとって「も」大きいコストメリットがあること以外に、一部のユーザーにとっては配線がなくなる・少なくなる等のメリットも確実にあるため、いわば「win-win」なイノベーションだったと言えるのではないかとも思います。退行したように見えるところがあるとしても、「新しい何かを可能にした」製品群ではないかと思います。
ディスクブレーキについても、リムブレーキ派の方から批判されることはあっても、やはり一部のユーザーにとっては”win”が確実にある製品カテゴリーだと思います(問題も増えたけれど「新たにできること」も生まれた)。
フックレス(※比較的高圧で運用するロードフックレス)やプレスフィットBBは、そういう意味でだいぶ違う話から生まれたようにも思います。ユーザーから見た場合、それらの登場によって新しい積極的な価値が何か生まれたかと考えると、微妙な感じはします。ユーザーにとってのwinがない、もしくは非常に少ないために歓迎されていないのかなと思うのですが、皆さんはどう思われますか。