UCIが最大ロールアウト距離(クランク1回転で自転車が進む距離)を「10.46メートル」という恣意的とも思える数字に制限し、それに対してSRAMが訴訟を起こすらしいことが海外掲示板で大きい議論になっています。一体何が起こっているのか、観察してみましょう。
こちらのトップコメントでは、投稿者の方が今回の問題をわかりやすくまとめてくれています(抄訳)。
- UCIはグループセットの最大ロールアウト距離(1回のクランクの回転で自転車が何メートル移動するか)を、明確な理由もなく10.46メートルに制限すると決めた
- ギアサイズを制限すると安全性が向上する、という通念をサポートするエビデンスはない
- 10.46メートルという制限は、Shimano(UCIの主要スポンサー)が販売するすべてのグループセットが変更を要することなくこの規定内に収まることを意味する
- 10.46メートルという制限は、現在のSRAMのギアが規定違反のものになるか、もしくは競技面で不利益を被ることを意味する
- 仮にUCIが最大ロールアウト距離を10.65メートルに制限していたなら、SRAMがサポートするチームの現行機材はルールに適合していたことになる
- 「より大きいギアはより小さいギアよりも安全でない」という主張は証明されていないことを私達は知っているが、10.46メートルの最大ロールアウト距離が10.65メートルの最大ロールアウト距離よりも明らかに安全だとは言えないということを私達は間違いなく知っている
- SRAMを罰しShimanoに報うような制約を選ぶことは、A:怠惰で愚かである B:UCIスポンサーを意図的に優遇している、そのいずれかである。UCIのことなので、船頭が悪人なのか、それとも無能なのかを見極めるのは難しい(166いいね)
これに対して寄せられたコメントをいくつかピックアップしてみます。
- (上の人に)この制限は明らかに一方の会社を優遇するものになっているだろう。答えはBだと思う(57いいね)
- (誰か5歳児向けに説明してくれますか、というコメントに対して)UCIはプロトンのスピードを落とし安全性を向上させるという名目で、ギア比に制限を課すことにしのです。彼らが選んだ最大ギアレシオは4.9で、これはShimanoでは54Tフロントリング、11Tリアコグを意味します。この組み合わせ自体は悪くはありません。SRAMユーザーにとっては、10Tリアコグが50Tのフロントリングと組み合わされることが多く、この場合は最大ギアレシオ4.9を上回る5.0となるのです。UCIはこのことを知っていますから、4.9ではなく5.0を選ぶこともできたはずなのです。SRAMとSRAMユーザーはこの新ルールに対応するために機材セットアップの変更を余儀なくされ、大迷惑を被ることになります。SRAMはUCIがこの決定を下した理由について合理的な説明をせず、この新ルールはShimanoをことさらに優遇するものであり、反トラスト法に抵触すると主張しているのです(135いいね)
- ニュートラルサービスのスポンサーは言うまでもなく…Shimanoだし(38いいね)
- UCIは、Shimano使用チームが使っているギアレンジを上限(54-11)と定め、SRAMチームは今後より小さい48-10を使わざるをえなくなります。そのためSRAMがスポンサードするチームの不利益になります。この問題はShimanoがUCIのオフィシャルスポンサーであるという事実のせいでより悪いものになっており、SRAMの訴訟が反トラスト法絡みになっている理由です(28いいね)
- UCIのこの恣意的なルールは、SRAMとCampagnoloを犠牲にしてShimanoを優遇するために作られたものだ。10tコグを持っていないのはShimanoだけだから(9いいね)
- (上の人に)Shimanoには10tのあるグループセットもあるよ、Shimanoがよりワイドレンジなカセットを採用できない理由はない。GRXのロード寄りのグループセットには10tとそれに対応するフリーハブもある(2いいね)
- でも標準的なHGロードハブとは違う設計だから、それをやるとカセットやチェーリングの変更に留まらない大規模な機材変更になるんだよね(4いいね)
- プロにギアの制限を設けるべきではない。踏めるのなら使えるようにすべきだ。山岳の下りも危険だから無効にしてみてはどうか。あと誰も落車しないようにすべてのレースをZwiftでやるべきなのかもしれないね(22いいね)
まあ、そういうことなのだろう、としか思えない内容かなと私も思いました。もしそういうことでないのならUCIは合理的な説明ができるでしょうし、しているでしょう。とはいえ、この新規定によってUCIだけでなくシマノのブランドイメージも下がってしまうのではないでしょうか(シマノがUCIに対して働きかけたものでないとしても)。一体何が起こっているのか、今後の展開に注目したいところです。
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