アメリカ合衆国の税関・国境警備局(CBP)が「台湾GIANTの工場で生産された自転車関連製品」の輸入を即時禁止する、と発表し、海外掲示板で大きい話題になっています。

image: giantbicycles
出典 CBP issues Withhold Release Order on Giant Manufacturing Co. Ltd.(アメリカ合衆国税関・国境警備局 公式ページ)
参考1 US bans all products made by Giant in Taiwan from entering the country effective immediately (Reddit)
参考2 US Customs is now detaining all Giant bikes and parts at the border over forced labor concerns (Reddit)
参考3 US bans all products made by Giant in Taiwan from entering the country effective immediately (Reddit)
TrekもCannondaleも禁輸に?
CBPのウェブサイトによると、対象となるのは「Giantにより台湾で製造された自転車・自転車パーツ・アクセサリー」で、これらは即時、留置の対象となるそうです。
海外掲示板では「アメリカを自転車旅行やレース目的で訪問する場合、Giantの自転車は持ち込めなくなるのだろうか? それとも販売目的で輸入される商品のみが対象なのだろうか?」という質問を複数見かけましたが、これに対する明確な答えはまだ誰も知らないようです(しかしありえないことではないので旅行計画のある方は事態を注視しておいたほうが良さそうです)。
台湾GiantはTrek, Cannondale, Scottをはじめとするメジャーブランドのカーボンフレームや完成車及びパーツ・アクセサリー(Stages Cyclingのパワーメーター等)をOEM生産しているため、今後の影響が多方面に及んでくることが懸念されています。
影響を受けそうなメーカー・ブランドは他にもKinesis, Jamis, 米QBP傘下のSurly, Salsa, Costocoが手掛けるバイク, SRAMのパーツ, Cervelo, BMC等々、枚挙に暇がありません。
Giantの工場で「強制労働」が行われていた?
そもそもCBPはなぜ今回の措置に踏み切ったのか。同局のページによると、Giantの台湾工場で「強制労働」が行われていることが判明したためだそうです(以下、一部原文から抜粋)。
U.S. Customs and Border Protection issued a Withhold Release Order against bicycles, bicycle parts, and accessories manufactured in Taiwan by Giant Manufacturing Co. Ltd, based on information that reasonably indicates forced labor use.
Effective immediately, CBP will detain bicycles, bicycle parts, and accessories manufactured in Taiwan by Giant. This WRO, the third issued in 2025 and the fourth in Fiscal Year 2025, was issued due to violations of 19 U.S.C. § 1307, the law prohibiting goods made with forced labor from entering the U.S.
トランプ政権が何らかの政治的な目的で今回の措置を発動させたのではないかという憶測もあるのですが、一方でこの「強制労働」の件については2024年頃から既に調査されていたという情報もあり、背景事情はいまのところよくわかっていません。
とはいえトランプ政権はつい最近も自転車レーン等のインフラ整備をやめる、といった発表をしていますし、共和党支持者の多くは自転車・サイクリング全体に対して好感を持っていません(レーパン・ジャージ姿のサイクリストは一言で「ゲイ」と呼ばれて差別される風潮がますます強くなってきている)。
さらに台湾がトランプ政権に対して十分な「贈り物」をしなかったのが原因ではないか、トランプ氏の暗号通貨を十分に買わなかったからではないか、黄金の自転車を贈呈するのを忘れていたのではないか、はたまたTikTokの売却先を巡って交渉を続けてきた中国との関係もないだろうか、等々、本当は政治的な理由があるのではないか・今後の外交カードにするのが目的ではないか、という声も見られます。
昨今の米国の厳しい自転車事情
今回の件とは別に、今年になってからトランプ政権が課してきた様々な関税措置のために、アメリカのサイクリストは海外から自転車本体やパーツを購入する際に多額の関税を支払わなければならなくなったり、Aliexpressから小物を買っても全然安くならなくなったり、日本のショップからNittoのパーツを買おうとしたところスチールを扱うためのライセンスの提示を求められてパーツを税関で留め置かれてしまった、等々、苦労をしている方が増えているようです。
また今年の春頃にはカナダのサイクリストたちが、カナダをアメリカ合衆国の51番目の州にしたい、と発言したトランプ大統領への反感から「アメリカ合衆国の自転車ブランドを拒否しよう」という動きを見せ、米国内の自転車ブランド・メーカーも打撃を受けている模様で、現在のアメリカにおける自転車事情はかなり大変なことになっているように見えます。