GoPro Hero 9は大変気に入っていて使用頻度も上がっているのですが、使い込むにつれて弱点というか欠点が気になるようになりました。特定のセッティングでの撮影で、映像(動画)が不自然にブレたり、滲んだようになってしまうのです。本記事ではこの現象が発生する条件と、暫定的な回避策を考えてみます。
謎の高周波振動
私が最近よく使う設定は以下なのですが、この設定で超快晴ではない時に高頻度でその現象が出ます。
- 解像度・FPS:4K24
- レンズ:リニア+水平維持
- HyperSmooth:高
- ビットレート:高
- シャッター:1/96
- ISO最小〜最大:100-1600
- カラー:フラット
- シャープネス:中
- NDフィルター使用
ちなみにここで言う「映像の不自然なブレや滲み」は、いわゆる「モーションブラー」のことではありません。1/96というシャッタースピードは動いているものを撮るには確かに低速で、自転車に乗りながら撮影した動画の1コマ1コマを切り撮ると、撮影者が移動しているので風景側にはモーションブラーがかかっています(スピードが速すぎる時は1/192にすることもあります)。
しかし私がHero 9で新たに経験している「不自然なブレや滲み」はそれではなく、微振動を受けた時に「フレームが一時的に高周波で振動する」ような現象です(主に上下)。「ビリビリビリ…」と地震でもあったかのような動きをした後に復帰する、という不思議な動きで、ミラーレスカメラの手ブレ補正ユニットが誤動作している時に似ています。
Hero 9を使いはじめてからしばらくは光量がたっぷりある晴天時にしか使っていなかったので気付きませんでした(ガチの晴天だとこの症状はあまり出ません)。しかし最近は曇天の日が多く、さらにこの猛暑ですから、午後の遅くにライドを始めるようになり、この現象に気付くことになったのでした。
症状が発生する条件
何が起こっているのだろう? 解決策は何だろう? と調べてみたのですが、この問題を報告している日本語のウェブサイトは見当たらなかったため、英語で検索したところ、私と同じような症状を経験している方、これが原因で「Hero 9に失望している」人が相当数いることを知りました。何だ、みんな困っていたのか!
大まかに共通しているのは、
- 4K/5Kの24〜30fpsといった低フレームレートで発生しやすい
- リニア+水平維持とHyperSmooth HighまたはBoostの組み合わせで発生しやすい
- シャッタースピードが1/96のような低速だとほぼ必ず発生する
ということでした。シャッタースピードは低い場合で1/192、可能なら1/384が望ましく、もっと望ましいのはオートにすることだ、という解決策が提案されていたので私も試してみたのですが、確かに1/384設定ならこの症状はほぼ出なくなりました。1/192だと、若干は改善されますがやはり症状が出ます。
リニア+水平維持、は私がHero 7 BlackからHero 9に乗り換えた最大の理由なので、これを使わないという選択肢はありません。そこでHyperSmoothの「高(High)」をやめ、ただの「オン(つまり最弱設定)にしたところ、これも確かに有効でした(ハイパースムーズ自体を切れば良いんじゃないか、と思いましたが、オフにすると「リニア+水平維持」は当然ながら無効になります)。
私の基本設定4K24は、普段使っているミラーレスカメラの設定に合わせているので、これはあまり変えたくありません。
4K60や2.7K60、1080p60なども様々な設定で試したのですが、シャッタースピードが1/96や1/120である限り、まずあの「不自然なブレや滲み」が出てしまいます。
Hero 7や8では発生しない
えー、そんなもんじゃないの? 所詮GoProでしょ? と思われるかもしれません。が、Hero 7 Blackでは同じような設定でこういうブレは出たことがないのです。海外情報を見ても、Hero 7や8ではこんなことはなかった、Hero 9は画質が劣化した、明らかに何かしらの不具合がある、という声が多いです。
Hero 7 Blackには水平維持はなかったのでジンバルを使っていましたが、シャッタースピードが1/96や1/120であっても「不自然なブレや滲み」が出たことはなかったですね。
するとやはり「リニア+水平維持」機能に関連する不具合ではないかと思われます。
しかし「リニア+水平維持」だけの問題かというと、そうでもなくて、SuperViewや広角で試しても、光量が少ない時、シャッタースピードが1/96だったりすると、出る時は出ます!
自分が画面の真ん中に来るVlog的な撮影なら、この現象にはほとんど気付きません。距離が近い人物ではこれは目立たず、背景の看板や木だったりが微妙に「ビビビ…」となるだけで、普通はそんなところに注意を払わないからです。
多くの方がこの問題に気付いていないのも当たり前かもしれません。というのも、マニュアルでシャッタースピードを設定したり、そのためにNDフィルターを使う私のようなユーザーは少数派で、大部分の人は露出を初期設定のオートで使うと思います。また、スマホやタブレット等の小さい画面で見ていたら目立ちません。
私も結局は「1/384またはオート」での運用を試しているのですが、画面に鳥やクルマのホイールが映ったりすると、動きがあまりにもパキパキしているのでちょっと微妙な感じです。また1/384でも症状が出ることがあります。
とはいえ「好みではないけれど妙なビビリがない映像」のほうが「好みだけれどブレて滲んでいる映像」よりよっぽどマシなので、ここは今のところ受け入れるしかありません。
GoPro Support Hubやその他の海外掲示板でもこの問題は多く報告されているので、将来的にファームウェアで改善されるのを待ちたいところです(しかしもう1年前から報告されている事象ですが、私が現在使っている最新ファームウェアv1.6でも改善されていません)。
こういう問題があったとしても「リニア+水平維持」は自転車では超絶便利ですし、SuperViewではHyperSmoothがよく効くので、自転車を降りた後の散歩などではHero 7 Blackよりも使いやすくなったなぁと思います。
使いはじめは「ついに完璧なGoProが誕生した!」と感心しまくったものですが、やはり世の中そんなに甘いものではないようです。
そしてこの問題の解決は、そろそろ発表されると思われるHero 10 (X)でまず修正されるのかもしれません。GoProとしてはまずHero 10を売りたいでしょうから、Hero 9の修正は多分後回しかなぁという気もします。まぁ、のんびり待ちます。
現在の暫定的なセッティング
最後に、個人的なセッティングなのであまり参考にならないかもしれませんが、この問題を回避するための最近の私の暫定的な設定を書いておきます(車載・チェストマウントなどでサイクリング動画を撮る時・晴天時設定)。
- 解像度・FPS:4K24(他のカメラと設定を合わせたいため使用)
- レンズ:リニア+水平維持(Hero 9を買った理由がこれだから)
- HyperSmooth:オン(ブーストや高よりも症状が出にくい)
- ビットレート:高(低くする理由がない)
- シャッター:基本的にオート(パキパキ画像がよっぽど気になる時は1/384)
- ISO最大〜最小:100-400〜1600(※試行錯誤中。詳細は下で)
- EV修正:-1〜2EV(シャッタースピードがオートの時)
- カラー:フラット(本件とは恐らく関係ない)
- シャープネス:中(これも本件とは恐らく関係ない)
- NDフィルター:必要に応じてND 8/16/32フィルターを使用(オートの時は付けないほうが画質は良い)
ISO設定とNDフィルターの選択は少し苦労しています。GoProだとISO400を超えてくるとあまり良い画質になりません。しかしシャッタースピードがオートの時、上限をISO400にすると光量が不足した時にシャッタースピードは上がってきます。するとあの「ビビビ…」が復活! そのため、ノイズは増えますが800〜1600くらいまで広げておいたほうが無難なこともあります。
とはいえ、です。ここまで細かいことを気にしながら撮影するのはGoProの機動性の高さを考えると本末転倒という気がします。本当は黙って露出オートで使うべきカメラなのでしょう(するとPROTUNEって何のためにあるの、ということになりますが…)。
備考として、この現象はSuperViewや広角では「目立ちにくい」です。リニア+水平維持で目立つのはクロップズームされているからです。またHyperSmoothが「ブースト」または「高」の場合、水平維持を使わなくても同じ現象が発生することがありました。
いずれにしても、Hero 7 Blackでの撮影設定をそのままHero 9に適用してもうまくいかないことがわかりました。画素数も5Kに増えて高感度性能が悪くなっているのと、チップセットも違うのでかなり別のカメラと考えたほうが良さそうです。GoProはやっぱり一筋縄では行かないカメラですね…
NDフィルターを使わず、シャッタースピードはオート。HyperSmoothは「オン」以上は使わない。現状ではそれがいちばんトラブルフリーです。