Specializedが昨年発表したフラットバー・グラベルバイク「Diverge Expert E5 Evo」についてCyclingTipsがウェブサイトとYouTubeで試乗感を公開しています。ざっくり言うと「楽しいけれど速くはない(速くないけど楽しい?)」バイクのことで、評価者は若干戸惑っている印象を受けます。
オンロードにはあまり向かない
YouTube動画では同メディアのCaley Fretz氏、ゲストのDan Cavallari氏が登場しています。個人的に面白かった点をピックアップしつつ下で要約してみます。
- 「Evo」というのはスペシャライズドが何かをちょっとスパイシーかつ荒っぽく仕上げる時に与える名前だが、このバイクもダウンヒルをより楽しめるようにフロントが寝ている。純粋な速さを求めるバイクではない。全モデルで30mm長く、ヘッドアングルは70度・トレイル量は69mmとなっている
- 20mmトラベルのFuture Shockは非常に良く出来ており、グラベルでは好感触である
- フラットバーは実測で760mm以上ある。オフロードでは明らかにコントロール性が高くなるので良いものだが、舗装路では不要だ。フラットバーがオフロードで使われ、ドロップバーがオンロードで使われることにはそれぞれ理由がある。オンロードでの長い下りではハンドリングがフラフラすることがあり、これは使わないほうが良い
- 上りではあまり良くない。立ち漕ぎするとフロントが少し寝すぎていて、ヘンな感じがする。他のグラベルバイクと違って、舗装路や本当にスムーズなグラベルロードではあまり良くない
- フレームはアルミだが、42mm幅以上のタイヤを使うとカーボンの快適性はあまり重要でなくなるから問題ない
- ドロッパーポストは「やばくて危ない(=gnarly)道」では活躍する場面もあるかもしれないが、しなりが少ないので快適性は失われる。1日に数回使うかどうかなのに、残りのライドが全部ガチガチになってしまうと考えると存在意義は微妙だ
- ブレーキにMagura MT4が採用されている点は大いに評価したい。最初、シマノ製品でなくこれを選択したのはコストダウンのためではないかと穿った見方をしていたが、使ってみるとシマノに比べてパワーは落ちるもののモジュレーションが非常に良い。それが700×42という(MTBに比べると)細いタイヤとの組み合わせには良くマッチしていて、スペシャライズドの人は実際に使った上であえてこれを選んだのだろうと感じた
遅いけど楽しい謎バイク
CyclingTipsのテキスト記事では、MTBになろうとしているグラベルバイクだが、あくまでグラベルである。快適で自信を与えてくれるが、バイクの属性よりもライダーのスキルがライドフィールを大きく左右する、と述べられています。
Future Shock 2はオンロードではなくても構わないが、あったほうがグラベルでは他のバイクよりもずっと快適だそうです。ドロッパーポストはむしろなくてもいいのではないか、という言及は興味深かったですね。あとMagura MT4はモジュレーションが非常に良いらしいので、これが気になる方も多いのではないでしょうか。
ガチのGnar(「ヤバい危ない道」の意。MTBの世界でよく使われる)を走るならMTBのほうが良いだろうし、オンロードではあまり快適ではない。彼等が最近テストしたグラベルバイクの中では、多くのシチュエーションでは最も遅いものの、最も楽しいバイクだが、軽くもないし、ハードテールXCバイクよりも多くの点で劣っている。楽しいバイクだが困惑している。という評価も。
ジオメトリー的には速く走るためのポテンシャルはあるものの、タイヤの性能が追い付いていないので、タイヤインサート(CushCore)を入れるとコントロール性が断然変わるそうです。重量増にはなるものの、かなり良いものだよと推しています。タイヤはもっと太いものを使って、下りに特化したほうが楽しいバイクになるのかもしれません。
全体的には「このバイクの市場は存在する」としながらも、誰向きのバイクなのかについては若干歯切れの悪い評価になっていると感じました。それでも製品のイマイチな点を正直に紹介しつつ、良い点も積極的に掘り下げていく内容はなかなか参考になりました。