ヘルメット

スウェーデンの保険会社による自転車ヘルメットテストでMIPSが上位独占

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スウェーデンでは毎日3人のサイクリストが転倒や事故などで頭部に怪我を負っているそうです(2015年の統計)。そのスウェーデンの保険会社Folksamが12種類のヘルメットの安全性テスト結果を発表しているのですが、興味深い内容になっています。

出典 Bicycle Helmets 2019 Tested by Folksam

今回テストされた12製品はスウェーデン市場で流通しているCE基準をクリアした(垂直方向からの衝撃についてEN1078 2012基準のテストにパスした)ものです。

テスト対象ヘルメット

今回対象となったヘルメットは以下の12製品。

  1. 6D ATB-1T EVO
  2. Abus Pedelec 2.0
  3. Bontrager Charge WaveCel
  4. Giro Aether MIPS
  5. Giro Syntax MIPS
  6. Lazer Gustav MIPS
  7. Oakley ARO3 MIPS
  8. Occano Sport Helmet
  9. Oxford Hurricane F15
  10. POC Omne Air SPIN
  11. Specialized Propero 3 Angi Mips
  12. Tec Nice

6Dは米国メーカー。OccanoとTecはスウェーデンのメーカー。Oxfordは英国メーカーですが、それ以外は日本でもおなじみのAbus, Bontrager, Giro, Lazer, Oakley, POC, Specializedの製品がテストされました。

Bontragerは最新テクノロジーWaveCel搭載のCharge WaveCelが対象。

テスト方法

Folksamによるテストは以下の5つ。

  1. 衝撃吸収テスト(EN 1078)

    ISO頭部フォームを使用し、気温18度の環境で1.5mの高さから水平面にヘルメットを落とす。
    ヘルメットの頭頂部とサイドの両側の2箇所で衝撃を測定。落下速度は4.7m/s。

  2. 斜め衝撃(X軸まわりの回転)

    ヘルメット側面のX軸での回転をテスト。
    ダミーにはHybrid III 50th percentile男性用頭部を使用。落下速度6.3m/s。

  3. 斜め衝撃(Y軸まわりの回転)

    ヘルメット頭部のY軸での回転をテスト。その他詳細は同上。

  4. 斜め衝撃(Z軸まわりの回転)

    ヘルメット頭部のY軸での回転をテスト。その他詳細は同上。

  5. コンピューターシミュレーション

    すべての斜め衝撃についてコンピューターシミュレーションを行う。FEモデルへの入力値は上の3つの斜め衝撃テストで使用したHybrid IIIダミーで測定された回転および並進加速値を使用。26%以上のひずみが50%の脳震盪リスクに相当。

このうち斜め衝撃は脳障害の大きい原因となるため、この成績が最終評価の際にやや加重されています。

MIPSテクノロジー搭載のヘルメットが上位を独占

ではいよいよ気になる結果です。

Specialized Propero 3 Angi Mips

Specialized Propero 3 Angi Mips © Specialized

MIPSテクノロジーを搭載したヘルメットが上位を独占しています。そして今年鳴り物入りのプロモーションで登場したWaveCelテクノロジー搭載のヘルメットが苦戦しており、低い成績となっています。

製品名 テクノロジー 結果
Tec Nice MIPS 36%
Specialized Propero 3 Angi Mips MIPS 21%
Giro Aether MIPS MIPS Spherical 19%
Lazer Gustav MIPS MIPS 10%
Oakley ARO3 MIPS MIPS 7%
Bontrager Charge WaveCel WaveCel 2%
Giro Syntax MIPS MIPS -1%
Abus Pedelec 2.0 -3%
POC Omne Air SPIN SPIN(*) -9%
6D ATB-1T EVO ODS(**) -21%
Occano Sport Helmet -27%
Oxford Hurricane F15 -36%

(* = Shearing Pad Inside)
(** = Omni-Directional Suspension)

なおMIPSとWaveCelについては下の記事で解説してあります。あわせてお読みください。

MIPSがWaveCelのプロモーション内容に物言いをつける
先日Trekが傘下のBontragerブランドからWaveCel(ウェーブセル)という新素材を採用したヘルメットを発表し、大きい話題になりました。しかしその広告で謳われているWaveCelの「脳震盪防止効果」にMIPSが疑問の声を投げかけて...

上位3位を占めたTech Nice, Specialized Propero 3 Angi Mips, Giro Aether MIPSはFolksamによって「グッド・チョイス・ラベル」を与えられました。これは良い製品ですよ、という同社独自のお墨付きです。平均的なヘルメットよりも最大で36%高いプロテクション性能があることになります。

WaveCelの低成績が気になるところ

しかし気になるのはWaveCelの実力。このテストでは平均的なヘルメットよりわずか2%しか性能向上が認められなかったことになります。

こう見るとMIPSのほうがやっぱりいいのかな、と思ってしまいますが、同じMIPS搭載ヘルメットでもGiro Syntax MIPSはBontrager Charge WaveCelよりも成績が低いんですよね。

こうなるとMIPSやWaveCelといった技術そのものだけでなく、それらをどのように製品に実装するか、そのあたりの工夫も大事なのだろうと思わされます。

現時点ではWaveCelテクノロジーにTREK/Bontragerが宣伝するほどの能力がないのか、それともこの技術を活かしきれていないのか、Charge WaveCelが特に良くない製品なのか、判断は難しいところがありますが、少なくともMIPSはWaveCelに劣っていないと言えるのではないでしょうか。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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