チームイネオスは今季ツール・ド・フランスでLightweightのホイールを使う可能性がある、とroad.ccが伝えています。
出典 Exclusive: Team Ineos riding Lightweight wheels at Tour de France. Team confirms use of two wheel brands at the race
ツール開幕前のトレーニングライドで目撃される
同メディアはブリュッセルでのツール開幕の数日前、イガン・ベルナル, ルーク・ロウ, ホナタン・カストロビエホの3人がトレーニング中にLightweightホイールを使用している姿を目撃します。
しかしチームイネオスのピナレロを機材チェック記事用に写真やビデオに収める段階になると、Lightweightのホイールは忽然と姿を消していました。
この件についてチームイネオスは次のように回答。
今年のツールでは2つのブランドのホイールを使用するのは事実です。シマノは我々のメインのサプライヤーであり続けます、彼らはチームイネオスの大切なパートナーです。
同メディアによるとチームイネオスが今回使用しているのはペア935g(フロント395, リア540g)のマイレンシュタイン・オーバーマイヤー(Meilenstein Obermayer)ではないかとのこと。
特殊なホイールが使われた過去の事例
- ブラッドリー・ウィギンスは2012年のツール・ド・フランスでの優勝時、軽量な登り用ホイールを使用しているのが目撃されている(超軽量なTuneのハブにHED S3カーボンチューブラーリムという構成)
- Lightweightのホイールについては1990年代に使用が目撃されている。ヤン・ウルリッヒが1997年にツールで優勝した時に使用しており、数年後ランス・アームストロングも使用していた
Lightweightの唯一の「弱点」はチームイネオスには関係ない?
Lightweightホイールの性能の高さは多くの人が認めているところだと思いますが、一般人が使うには高価すぎる、という問題があります。
またLightweight自体にもプロサイクリングチームに機材提供できるような体力があるかどうかも疑問です。
するとチームイネオスは自腹でこれらのホイールを買ったのではないかと考えられます(お金にはたぶん困っていないでしょう)。
road.ccの記事執筆者は、バイク重量をUCI規定の最下限6.8kgにしてあるとしても、ホイールまわりを軽量にし、それ以外の部分に重さを割り振るなどしているのだろうか、と疑問を呈しています。
同記事にはこんな面白いことが書かれています。
There has always been a lot of debate about the impact of rotating mass. “An ounce off the wheels is worth a pound off the frame,” goes the old saying, implying that rotating weight, especially on the wheels, is supremely important.
回転する質量の影響についてはいつも多くの議論がなされてきた。「ホイールを1オンス軽くすることはフレームを1ポンド軽くするのと同じ価値がある」と昔は言われていた。これは回転する重量が、とりわけホイールでは非常に重要であることを示唆していた。
Problem is, it’s not true. In 2001 bike engineer Kraig Willett analysed the forces on wheels and concluded: “When evaluating wheel performance, wheel aerodynamics are the most important, distantly followed by wheel mass. Wheel inertia effects in all cases are so small that they are arguably insignificant.”
問題は、それは事実ではないということだ。2001年に自転車エンジニアのクレイグ・ウィレットはホイールにかかる力を分析し、次のように結論づけた。「ホイールの性能評価をする場合、最も重要なのはホイールのエアロダイナミクスであり、ホイールの質量の重要性はそれよりもはるかに低い。ホイールの慣性がもたらす効果はあらゆるケースにおいてあまりに小さいので重要ではないと言って良い」。
超軽量ホイールが活躍するのは山岳、それともゴール前スプリント?
チームイネオスがLightweightのホイールを使うとしたらやはり山岳ステージでしょうか。超軽量ホイール・Meilenstein Obermayerの慣性モーメントの小ささは果たして彼らの勝利に貢献するのか。
それとも何かが効くとしたらそれはヒルクライム時の回転辺縁部の軽さなのか、レース全体を通じての空力性能なのか。それともスプリントにおける最大速度に至るまでの時間の短さなのか…
上の記事の慣性モーメントについての記述に対しては、同記事の読者がこんなコメントを寄せています。
The conclusion seems obvious considering how much energy goes into overcoming wind resistance compared to the kinetic energy acquired by the bike, over the distance of a race. However it seems to my layman’s eye that the difference between winning or not is often decided in the final sprint, when a fractional advantage in acceleration may make all the difference.
レース全体で見ると、バイクが蓄積する運動エネルギーに比べ、空気抵抗を克服するためにどれだけ多くのエネルギーが必要になるかを考えると、上の結論は明白だと思う。でも一般人である自分の目には、勝敗は最終スプリントで決まることが多く、この場合は加速におけるほんのわずかなアドバンテージが全てを決めることがあるように思う。
昨日のツール・ド・フランス第1レースでのサガンとテウニッセンの際どいスプリント勝負を思い出せるような話で、なかなか興味深いと思いました。
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