7月に手持ちのクロモリフレームを再塗装するにあたり、「もう少し手を加えたいなぁ」と思った時に目に留まったのが、マスターのmicroSHIFT ADVENTを紹介するこちらの記事でした。
しかも輸入代理店のSimWorksに問い合わせたところ、国内在庫があるとのこと。これはIYH神のお導きと確信し、早速注文を入れました。
ただ、フラットバー用のシフターだけ私が注文する直前に在庫が尽きてしまい、入手が遅れていました。
そこで取り急ぎシマノ9速と互換性があるのか、手元にあるパーツで調べてみました。答えは、やってみなくちゃ分からない。
ADVENTコンポーネントについて
実験に先立ちまして『ADVENTとはそもそも何ぞや』という簡単な紹介をします。
ADVENTとはシマノ、スラム互換のコンポーネント(以下コンポ)を製造している台湾のmicroSHIFTが2019年に打ち出した、新作の9速コンポです。(※一部8速用のパーツもありますが、説明は割愛します)。
シフター、リアディレイラー、スプロケットの3点を基本セットとして設定してあり、残りは他メーカーと混ぜて運用することを想定しています。
ところで、「今頃新作の9速?」と疑問に思う方は、下記のような前提でコンポに限らず自転車機材を考えているのではないでしょうか。
- プロレーサーが使用している機材は、ホビーライダーにとっても使いやすく、恩恵を得られるものである
- コンポは新しければ新しい程、また上位グレードになるほど良いものであり、上位互換である
- 最新の優れた機能は最新の変速段数にしか組み込めない
その思い込みに対し、ADVENTははっきりと”NO”を突きつけます。
- パーツ単体の価格が手頃で耐久性があり、消耗品の入手が容易で、メンテナンス頻度が低いコンポこそが、ホビーライダーにとって優れたものである
- 必要十分な優れた機能は、最新の段数でなくても組み込める
- 上記のバランスが取れているのが9速である
3大メーカーが隠している「不都合な真実」というと大げさですが、なかなか言えないことを売りにしている、挑戦的なコンポと言えます。
互換性実験
公式サイトの互換性欄では、フロントディレイラー以外”microSHIFT ADVENT Only”と明記されています。
しかし上記の通り、普段は互換性があるパーツを作っているメーカーなので、何とかなるのでは?と思いますよね。
という事で本題です。
実験環境
- シフター:シマノ SL-R440-9 9速フラットバー用
- チェーンリング: RACE FACE ナローワイド 42t
- リアディレイラー:ADVENT RD-M6195M
- スプロケット:シマノ CS-4600 12-30tまたはADVENT CS-H093A 11-42t
スプロケットはギア間距離が一緒だったので、シマノのままで実験しました。
実験結果
まずはADVENTのマニュアルに従って、トップギアでワイヤーの張りを調整しました。
ここからロー側に8回変速レバーを操作しましたが、7枚目付近までしかディレイラーが移動しません。
今度は逆にロー側でワイヤーの張りを合わせてみました。イレギュラーですが方法は簡単です。シフターをロー側に変速させたうえで、ディレイラーをグイっとホイール側に押しつけた状態でワイヤーを固定しました。
ここからトップ側に8回変速レバーを操作しましたが、こちらも3枚目で止まってしまいます。
またトップギアでワイヤーの張りを合わせた場合は、ワイヤーを手で無理矢理引っ張るとローギアまで移動できます。
ディレイラーの可動域はシマノと同一であり、ワイヤーの引き量の問題であることがわかります。
この状態でチェーンを掛けて、1枚目の写真の状態で実走しましたが、案の定レバー操作1回ないし2回で1段変速するようになりました。ワイヤーの張りの微妙な差で、どのギアで2回変速操作が必要か変わってしまいます。途中のギアも音鳴りがしたりしなかったり、典型的な変速不良の状態です。
これはシマノ、ADVENTのスプロケットいずれも同じ症状でした。
シマニョーロ的な「大回し」も使えず
ちなみに、カンパニョーロのレバーにシマノの変速系を組み合わせる、通称シマニョーロでバイクを組む場合、「大回し」というディレイラーのワイヤーの固定位置を変えて、引き量の微妙な差を吸収するテクニックがあるのですが、ADVENTには指定位置以外にワイヤーを通せる隙間がなく、この手段は使えませんでした。
後述しますが、かなり引き量の差が大きいので、もし可能だとしても是正しきれないと思います。
残念ながら互換性なし
ということで、残念ながら公式サイトの情報通り、ADVENTとシマノ9速に互換性はありませんでした。
植木算の要領で、本来トップギアからローギアまで8回変速しないといけないのが、どちら側から始めても6回分の距離しか引けていないので、8÷6=1.3333…となります。つまり、ADVENTのワイヤーの引き量がシマノ比で約1.3倍であることも分かりました。
スプロケットのみシマノを入れることは可能ですが、ローギアが最大34tまでになるので、今時のMTB用コンポとしては物足りない歯数になります。
なお、これを書き上げた日に丁度シフターの入荷連絡がありましたので、個々のパーツ紹介、変速フィーリング、コストパフォーマンスなどは、「RIDEALIVE2019 山梨」というバイクパッキング 、激坂、キャンプ、登山、グラベル、リアルぶどうの実…となんでもアリの愉快なイベントで実走したのちに発表できればと思います。