新しいタイプのライトを見かけたのでご紹介します。「マグニック・マイクロライト(Magnic Microlights)」というダイナモライトです。クラウドファンディングのIndiegogoにページがあります。
参考 Magnic Microlights: Contactless dynamo bike lights
このライト、ダイナモですがハブダイナモでもリムドライブ式のダイナモでもありません。いや、リムドライブ式ではあるのですが、非接触式です。
Magnic Microlights
まずは動画を見てみましょう(ブランデンブルク門が映っていることからもわかるようにドイツのスタートアップのようです)。ブレーキシューの先端に取り付けたライトが発光しています。何かがリムと接触してはいません。しかし電池不要です。
ちなみにブレーキシューは「自転車店で売っている標準的なシュー」と互換性があるとのことです。
渦電流を発生させてライトを発光
ならどうやって…という感じですよね。これは「渦電流(エディーカレント)」という現象を利用しているようです。
渦電流(うずでんりゅう、英: eddy current)とは、電気伝導体を磁場内で動かしたり、そのような環境で磁束密度を変化させた際に、電磁誘導により電気伝導体内で生じる渦状の誘導電流である。1855年にレオン・フーコーにより発見された。
(…)
一般に、渦電流では周囲の磁場の変化を妨げる向きに磁場が生じるような向きに電流が流れる(レンツの法則)。そのため、物体の運動を抑える力を生じる結果となるので、渦電流ブレーキの原理として使われており、渦電流式ディスクブレーキや渦電流式レールブレーキといったものがある
これも動画で説明を見てみましょう。磁石のボールをアルミの板の上で滑らせるとこんな感じになるそうです。ここで働いているのが渦電流で、「マグニック・マイクロライト」はこれを利用するわけですね。
渦電流については、英語版のWikipediaにわかりやすい図解があったのでそれもご紹介します。
磁石(N)の下を伝導性のある金属板(C)がVの方向に動くと渦電流(I)が発生します。磁場(B)はプレート全体に対して下向きに発生しています。磁石の先端(左側)が反時計回りの電流を生み出し、それが「レンツの法則」により、上方向に独自の磁場を形成します。
磁石右端は時計回りの電流を生み、下向きのカウンターフィールドを形成。これが隣の磁場と反作用して、上の動画のような磁石ボールの抵抗を生み出しているわけですね。
というわけでこのライト、カーボンリムでは使用できません。駆動には金属製のリムが必要です。アルミリムがベストですが、マグネシウムリムでも動作するそうです。
どんなメリットがある?
この「マグニック・マイクロライト」にはどんなメリットがあるでしょうか。開発者のDirk Strothmann氏の説明によると
- 非接触式: 感じない、聞こえない
- バッテリー不要
- 前方の路面を明るく照らせる
- インストールは簡単
- クールな「見えない」デザイン:アダプターなしでコンパクトサイズ
- 環境にやさしい
- あらゆるタイプの自転車で使える:ディスクブレーキにはWEGAというモデルを用意
となっています。「聞こえない」というのは駆動音が聞こえないという意味でしょう。「感じない」というのは、ハブダイナモや接触式リムドライブダイナモのような抵抗を感じないということだと思いますが、物理現象を考えると抵抗がゼロというわけには行かないでしょう。
実際にどの程度の抵抗を感じるのかとても興味があります。電池不要というのは大きいメリットですね。
オプションと価格
このライト、本体は3Dプリンタで製造されています。3Dプリンタの普及のおかげで企画力のある個人がこういうアイデア製品を比較的スピーディーに低コストで発表できるようになったのは、とても良いことですね。
オプションとしてはキャリパー・Vブレーキ・カンチブレーキ・ディスクブレーキに対応した製品があります。
フロント用はキャリパー・Vブレーキ・カンチブレーキ共に30ユーロ。リア用は34ユーロ。
ディスクブレーキ用のWEGA(星座の「こと座」にちなむ名前だそうです。いい名前ですね)は、ブレーキシューではなくフォークやシートステイに取り付けるタイプ。フロント用が32ユーロ。リア用が35ユーロとなっています。
いま、磁力が新しい?
さてここまでお読みになった方はもう気付かれたと思いますが、「渦電流」を利用した製品で最近話題になったものがありましたよね。
そう、4iiiiの「Fliiiightスマートトレーナー」です!
4iiii Fliiiightも同じ仕組みを使って負荷を発生させているわけですね。スマートトレーナーで良好な使用感を得るのはまだ少し難しいようですが、自転車のライト程度であれば問題なく使えるような気もします。
さらに、最近はPraxis Worksがフロントチェーンリングからのチェーン落ちを予防するための手段として磁石を応用する特許を申請したりもしています。
参考 Patent Patrol: Praxis Works files for magnetic chainring… will they abandon Wave Tech? (Bike Rumor)
何か「磁石の力」がにわかに注目されているのだろうか、などと思ったりもしました。
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