ベルギーのClassifiedというメーカーが内装変速ハブを開発しています。しかもグラベルロード愛好者にはかなり注目を集めそうな製品です。
Ridley Kanzo Fastのプロトタイプに…
まずは下の画像をご覧下さい。これはリドレーが開発中のエアロ・グラベルバイク、Kanzo Fastのプロトタイプらしいのですが…
リアハブの付近のクローズアップがこちら。スルーアクスルのレバーが何やら大きいですね?
スルーアクスルのレバーにグリーンのLEDライトが灯っています。キサマ…通信しているなッ!!
実はハブの中にはこんな遊星ギアが! このハブは「ワイヤレス通信による2段変速ギア」を内蔵しているのです。
Classified Power Shiftのスペック
このハブについての詳細を箇条書きにしてみます。出典はClassified公式サイトとBikerumorです。
- Classified社はベルギーに本拠を置き企画・開発・製造も全てベルギーのトゥルンハウトで行われている
- ワイヤレスの2段変速で「Power Shift」と呼ばれる製品
- 外側には専用の11スピード・カセットスプロケットを装着して使う
- 標準的な電動シフターまたはサテライトボタンで動作し、現行のShimano Di2で操作可能と思われる(ワイヤレス送信機はドロップバーの左側に入れる)
- ハブ本体はバッテリーを必要としない
- 変速アクチュエーターの役割を果たすスマート・スルーアクスルは12x142mmで充電用のmicro USBポートを備える
- 1回の充電で3ヶ月間は変速が可能
- トランスミッターのバッテリーは1年以上持ち交換時もバーテープを剥がす必要はない
- シフトに要する時間はフルに負荷がかかっている状態でもわずか150ミリ秒
- ハブ内部のPower Shiftモジュールは簡単に着脱可能なので複数のホイール間でスワップが可能
- Classifiedは11スピードのモノコック・カセットスプロケット4種を用意している:11-27, 11-30, 11-32, 11-34
- Power Shiftのギア比は1:1または1:0.686で、ちょうどフロントディレイラー的な役割を果たすと考えれば良い
- 使用可能なチェーンリングの下限は40Tで、11-34カセットの使用時には11-49.6に近いギア比(450%)が得られる
- SRAM Eagleの最大ギアレンジは500%なのでそれには及ばないが、1x GRX(40T x 11-42)の381%よりははるかに広い
FDが取り付けられない1xバイクでも2xの恩恵を
この内装変速ハブが誕生した理由は、近年のグラベルロードはリアのタイヤクリアランスを確保するためもあり、フロントディレイラーが取り付けられないモデルが増えていること、しかもフロントディレイラーを使うよりエアロ性能が優れていて、1xのセッティングでありながら2xのクロスレシオとワイドレンジが実現できるから、ということのようです。
内装変速ハブというと気になるのは重量ですが、Classified Power ShiftとShimano 1x GRX Di2の組み合わせでは、2×11のGRX Di2にDT Swiss 350ハブを組み合わせた場合とほぼ同じになるそうです。
つまり重量面では長所も短所もない変わりに、2xのメリットをそのまま1xバイクに持ち込める、という感じですね。
内部構造的には複雑なものらしいですが、Classified社によるとメンテナンスは特に必要なく寿命もかなり長いそうです。また補修パーツも用意されるとのこと。調整不要な点もフロントディレイラーより優れていますね。
11スピードカセットは専用品しか使えないのが少しだけ残念ですが、これは何らかの寸法をシマノ互換にするのが難しかったからでしょうか。あとは遊星ギアによるエネルギー損失がどの程度になるのかも気になるところです。
さてこのハブ、いつからどこで買えるようになるかというと、いまのところハブ単体での発売はまだ予定されてはおらず、まずOEMでメーカー完成車ホイールに組み入れられるようです。記事冒頭で紹介したRidley Kanzo Fastがそのパッケージの第一号になる可能性が高いと思います。
BikerumorによるとKanzo FastはNoah Fastがベース。こちらの完成車が100万円近くするので、Classified Power Shift Hub搭載のKanzo Fastは決して簡単に買える値段ではないかもしれません。