いこう!店へ。欲のMelodies〜(Move on! Move on!)
【 ストーリー 】
横浜・山下公園そばにある、洒落たインテリアと試乗車の多様さで人気のミニベロ専門店「Green Cycle Staion」。
折り畳み自転車の魅力にときめいた普通科2年のnadokazuは、なけなしの現金とともに「Green Cycle Staion」の門を叩く。
時にライバルとして、時に仲間として、それぞれの魅力を発揮しまくるミニベロたち。
届け!ときめき――。
第1話「BDのトキメキ」
生まれたときめき。あの日から、世界は変わり始めたんだ!
そう、それは自転車に興味を持ち始めて、まだ間もない頃です。ネットを彷徨っていた自分は、1台の折り畳み自転車に心を打ち抜かれました。
「r&m BD-1」。
- 折り畳める!よくわからないけど便利そう!
- フロントフォークがメカメカしい!よくわからないけどカッコいい!
- ブリヂストンとかミヤタとかじゃなくてドイツ製!よくわからないけどスゴイ!
こんな感じで
「もう完ッ全にときめいちゃった!」
と、目がハートです。
そのころの自分にとってのBD-1は、たとえて言うなら高い万年筆のような「わかってる人」の「特別な持ち物」。勝手なイメージを勝手に膨らませて、胸を躍らせまくりです。これってまさに、自分にとってスポーツ自転車の原体験であったのかもしれません。
当時、世間を席巻していたSNS「mixi(ミクシィ)」のBD-1コミュでのやりとりを、ディスプレイの向こう側から羨望の眼差しで眺めていたことを思い出します。
いまの若いもんは知らんじゃろうが、「mixi」はモンストの会社ではなかったんじゃよ…。あの頃マトモなスマホアプリを出して、オープン化を進めておけばTWやFBに駆逐されることもなく、ソシャゲとSNSで天下取れてたものを…。
「はいはいおじいちゃん、寒いからもうお部屋に戻りましょうね…」
そういえば自転車マンガの帝、「ろんぐらいだぁす!(現:ろんぐらいだぁすとーりーず!)」の第1話で、主人公が目を奪われるのもBD-1です。そのあと自転車専門店で値札を見て「ありえない値段が書いてあるんだけど…ひと桁間違ってるよね?これ…」というオチも、マンガとは思えないシンクロ具合でした…(遠い目)。
そんな出会いから時は流れ、BD-1はモノコック形状にモデルチェンジ。そのあと名前がbirdyに変わり(正確には元に戻っただけみたいですが)、さらにもう一度マイナーチェンジを受けて現在に至っている…みたいです。詳しい方、間違っていたらご指摘ください!
そうそう、あと「r&m→Pacific」にも変わってますね。いったい、何が起きてたの…?
▼birdyの特徴的なモノコック形状フレーム
それはさておき、自分のTLにはbirdy乗りの方は多くないのか、話題を見かけることが結構少なめです。そして自分も、いつの間にかブロンプトン乗りになっていました。
なのですが、ブロの購入後も山下公園近くのミニベロ専門店「Green Cycle Station」に行くたび、展示されたbirdyが気になって気になってしかたありません。
いつしか自分の中では、物欲の魔物がこんなことをささやき始めました。
「実はブロンプトンを買わずにbirdyを買っていた方が、幸せになれてたのかもよ…?」
心に刺さった小さな棘の痛みは、日を重ねるにつれて強くなっていきます。こんな気持ちを持ち続けてしまっては、通帳の赤い数値が跳ね上がる危険性も高まるばかりです。そんなわけでGCSさんのご好意に甘えまくり、試乗して確かめることにしました。
birdy!おまえは…おまえは…おれが断ち切らなければならない運命(さだめ)の糸だっ!!
第2話「Cutest♡ミニベロ」
世界でイチバンのワンダーランド、自転車専門店。
わたくしロードバイクは大好きですが、折り畳み自転車も大好きです。なにしろ折り畳み自転車は、5LINKSの700c折り畳みロード「MUSASHI/R」とか、BSのトランジットスポーツG26とかDAHONのEspresso D24などの変態的…もとい例外的なモデルを除いて、ほぼ20インチ以下のミニベロが主流。でもってミニベロって、もう無条件にキュートじゃないですか(異論は認めます)。
しかもデザインと機能性が極めて高度に融合していて、いろんなモデルが自由奔放で百花繚乱なところがもう最高。昨今のエアロロードが、どのメーカーのモデルも「カラーリング以外同じじゃない?」というシルエットなのに対して、折り畳み自転車は個性に溢れまくっています。買えよ、増えよ、地に満ちよと、思いっきり祝福されるべきですよね、これ。
だいたい「iruka」なんて後ろ三角を前方に回転させると、後輪が中空デザインのメインフレームからヒョコッと出てきちゃうんですよ?この発想、天才かよ…。
▼Green Cycle Stationの店頭に並ぶ試乗車たち。みんな個性のカタマリ
そしてbirdyも、初代から続くDNAを引き継いで進化した、まさに「機能美」としか言いようのないスタイルで実に魅力的です。
無論「機能美」という点ではブロンプトンだって、決して負けてはいません。ですが、方向性はもう真逆もいいところ。クラシカル方向のブロンプトンに対して、birdyは未来的。なんかシュッとしてグイッと前のめりな感じで、無茶苦茶カッコイイ!
ミニベロならではのキュートさと、「どうせ男児はこういうのがスキなんでしょ!?」という、メカっぽいカッコ良さを同居させているbirdy。この独創的で今なお先鋭的なデザインは、控え目に言って最高…最高です…。
第3話「多過ぎを叫ぶ」
birdyは、モデルラインナップが非常に豊富です。
たとえばブロンプトンはハンドル形状とギアとキャリアの有無とフレームの材質でモデルがわかれていますが、基本構造は大きく変わっていません。天ぷら蕎麦か、たぬき蕎麦か、コロッケ蕎麦か、ぐらいの違いに留まります。
それに対して、birdyはコンポーネントやブレーキシステムどころかフレーム形状まで違ってしまう。同じbirdyなのに、蕎麦とうどんとラーメンぐらいの差があります。もし違うモデル名を与えても、きっと誰からも文句は言われないでしょう。
モデル名 | 雑な概要 |
---|---|
P40 | 40周年記念モデル:新設計フレーム/ディスクブレーキ |
classic | 旧デザイン風モデル:初代っぽいストレートフレーム/Vブレーキ |
Standard Disc | スタンダードモデル:モノコックフレーム/ディスクブレーキ |
R | フラッグシップモデル:モノコックフレーム/前傾ポジションのハンドルステム/ハブスミスホイール/RDは105 |
GT | オフロードも走れちゃうモデル:モノコックフレーム/太めのブロックタイヤ/油圧式ディスクブレーキ/SRAMの10速RD |
Air | 最軽量モデル(9.87 kg):モノコックフレーム/細めのタイヤ(18×1.25)/キャリパーブレーキ/SORAの9速RD |
数あるラインナップの中から、試乗させていただいたのは「birdy Air」。キミに決めた!
選んだ理由は、ただひとつ。ラインナップ中、最軽量のモデルだからです。自分が嫌いなシチュエーションは、登り坂と輪行移動時の運搬。それを少しでもラクにするために、最も大きな効果を発揮するのは「車重」!!! いくらRの走行性能が高くても、1グラムでも軽い方を選ぶのが貧脚に課せられた義務です。
さらにさらに!Airが装備するのは、一般的なロードバイクと同じキャリパーブレーキ。より少ない力で制動できる、ディスクブレーキのメリットは享受できません。ですが、異音や整備性などのデメリットに泣くこともない。
ゆるポタメインなら制動性よりも、輪行時の取り扱いや普段使いのラクさ重視ですよね(異論は認めます)!
第4話「逆らうサカ」
坂の上から眺めた景色をみて…「自分も重力に逆らうサカに挑戦してみたい」って、そう思ったんだ…。
そうなのです。birdyの走行性能を確かめるには、イヤだけど行かなければならないでしょう。元町から港の見える丘公園に登る、谷戸坂(距離:0.27km/平均勾配:9%/標高差:25m ※Stravaのセグメント情報による)へ。
そんなわけで店を出てすぐに谷戸坂方面に向かいましたが、坂を登るまでも無くbirdyの走行性能がブロンプトンよりも明らかに高いことがわかってしまいました。それはもう、走り出してクランクを1回転させないうちにです。まぁ内装3速ハブとフル外装では、走行抵抗にそもそも違いがありすぎますからね。
▼birdy AirのRDはSORA
しかも、birdy Airは9速。選べるギアの幅が、もう明らかに広い。適正なギアが選べるって素晴らしい…!実に素晴らしいです…!
そして谷戸坂への登坂にトライしてみた結果ですが、ローでゆるゆる回してクリアできてしまいました(ヘトヘトになってないとは言ってない)。キャリミでは本当にヒドい目にあったので、蘇ってきたその記憶のほうがツラかったです…。
10kgを切る車重、細めのタイヤ、外装9段変速、そして16インチのブロンプトンよりひと回り大きな18インチのホイールは、ブロンプトン乗りをクラクラさせるのに十分以上の実力でした。
第5話「サスしかできないことを」
birdyの大きな特徴のひとつが、フロントフォークと一体になったサスペンションシステム。この造形、いま見てもしびれますねー。
こんな豪華なサスを装備しているのだから、さぞかし乗り心地が…と思っていたですが、そこまでシルキーな感じとか、フワフワした感じはありませんでした。サスペンションシステムが仕事をしている感じは、正直あんまり受けていません。タルタルーガに乗ったときは、サスの仕事っぷりに感激した記憶があるのですが…。
もしかすると普通の丸グリップなのに、走っていて手の平にイヤな感じがなかったのは、フロントのサスの振動減衰力のおかげなのかも?
いずれにしても、このサスペンションシステム、自分にとっては「カッコイイ」が最大の性能ですね。
第6話「輪行時のカタチ(〃>▽<〃)」
折り畳み小径車は、とってキュート。ですが折り畳み機構による重量増とホイールサイズが小さいことによる走行性能の低さは、物理的にどうしようもできません。
じゃあ、なぜ折り畳み自転車に乗るのか? それは走行性能よりも、凜…おっと誤変換。梨子…おっと今度は打ち間違えです。てへぺろ。
折り畳み自転車を選ぶ理由、それは「輪行性能を何よりも重視しているから」にほかならないでしょう。
700cのロードバイクでは、到底実現できないコンパクトさにたどり着ける折り畳み小径車は、畳んで運んでナンボです。「輪行時、どれだけコンパクトに持ち運べるか」は、極めてウェイトの大きな評価項目だと言えるでしょう。
で、比べてみた結果ですが、そこはブロンプトンの圧勝でした。
ただ、これについてはbirdyの折り畳み時サイズが大きいとかではなく、ブロンプトンが優秀すぎるだけです。Tern BYBだって、Tyrell FXだって、こんなサイズにはなりません。折り畳み時のブロに勝つには、それこそキャリミをぶつけないと駄目でしょう。
▼畳んだブロンプトンのコンパクトさは異常
それを考えると、birdyの輪行時フォームは、相当頑張ってると言えます。比較対象からブロンプトンを外せば、コンパクトさでだって決して見劣りしません。
10kgを切る軽さと走行性能を考えると、むしろこの折り畳み性能は魅力的ですらありますです。
第7話「キズガツイタ」
折り畳む前にギア位置やクランク位置を適切なところに調整しないとイケナイなど、折り畳み時の地雷ポイントはそれなりにある印象を受けました。
そしていちばん衝撃的だったのは、クランクの根元部分が前に回した後ろ三角に思いっきり接触するところ。これは自分の折り畳み方法が間違っているのでは無く、そういう設計になっているからです。本当です。
なので、何もしないで折り畳むと、ほぼ間違いなくキズがつきます。クランクの根元が接触する後ろ三角のフレームには、保護シール的なモノを貼付したほうがよいでしょう。特に、新車購入するなら。
▼思いっきり当たってます
第8話「うずく、モディファイ欲」
birdyが危険なのは、パーツのグレードアップを行うための敷居がガッツリ低いこと。たとえば今回試乗したモデル「Air」に使われているのは、一般的なキャリパーブレーキです。
▼ロードバイクで見慣れた形状のブレーキ
我が家では「生命を預けるブレーキは105グレード以上にすること」が先祖代々から続くしきたりになります。なので納車の前に、アルテグラに交換するしか選択の余地はないでしょう。
ほかにもブレーキレバーやシフター、クランクなども、かなり一般的なパーツでグレードアップできそう。そのうえググったら11速化やドロップハンドル化などの、尋常じゃないレベルの魔改造例までわさわさと出てくる始末です。
ブロンプトンはフル外装化しようと思ったり、ブレーキをグレードアップしようとしたりすると、その敷居がとてつもなく高いという事実に容赦なく直面するので、モディファイの諦めがつきやすいです。もしかして、この辺はむしろブロの安心ポイントなのかも?
第9話「仲間でライバル」
というわけで、birdyの魅力にクラクラしながらお店に戻りました。試乗の動機が動機だったので、ブロンプトンと比較してどうか?という面を中心に見てきましたが、いやー、いい自転車ですね。birdy。
個人的には、ブロンプトンの最強のライバルだと思える一台です。
走行性能は高いし、折り畳みのシステムもスマートだし、そこそこコンパクトサイズに収められる。高い性能と機能、そして魅力的なスタイルのすべてを高レベルで併せ持つ折り畳み自転車だと言えるでしょう。
走りの方向性は真逆とも言える、birdyとブロンプトン。ですが、そのどちらにも共通しているのは「折り畳み自転車として、最高レベルの魅力と性能がある」というところ。
つまり、仲間でライバル。ライバルだけど…仲間!!
あれ? 断ち切らなければならない運命(さだめ)の糸、ぜんぜん断ち切れてなくない???