UCIが新たに英国Aerocoach製ホイール、Aeox TitanとZephyの使用を禁止しました。正確にはこれらのホイールのリムブレーキバージョン、そのフロントホイールで使用されているハブ・エンドキャップが「フェアリングである」として使用禁止となりました。Cyclingtips等が報じています。
この決定はジロ・デ・イタリア2021の第1ステージ(タイムトライアル)で、フィリッポ・ガンナがAerocoach Aeox Titan(100mmディープリムでウルトラナローハブ)を履いたピナレロ・ボライドで勝利を挙げた後に下されました。
出典 UCI BANS AEROCOACH FRONT HUB “FAIRING” USED BY GANNA IN GIRO TT – Cyclingtips
フェアリングとは
UCIの規定には次のようにあります。
Any device, added or blended into the structure, that is destined to decrease, or which has the effect of decreasing, resistance to air penetration or artificially to accelerate propulsion, such as a protective screen, fuselage form fairing or the like, shall be prohibited.
構造に加えあるいは一体化した,空気抵抗を減ずるものあるいは減少させる効果を持つもの,あるいは人為的に推進力を促進するもの,たとえば保護スクリーン,紡錘形のフェアリング等のいかなる装置も禁止する.
CLARIFICATION GUIDE OF THE UCI TECHNICAL REGULATION – ARTICLE 1.3.024より抜粋
なるほど、少し理解が難しい部分もありますが「フェアリング」なるものが禁止されているのはわかりました。では「フェアリング」とは一体何でしょう。一般的には「空気抵抗を減らすために被せる部品」を意味しますが、UCIのレギュレーション文書では次のように定義されています。
A fairing shall be defined as the use or adaptation of a component of the bicycle in such a fashion that it encloses a moving part of the bicycle such as the wheels or the chainset. Therefore it should be possible to pass a rigid card (like a credit card) between the fixed structure and the moving part.
フェアリングとは、自転車の部品を、ホイールやチェーンセットのような自転車の「動く部分」を包みこむように使用したり、適用するものと定義する。故に、固定された構造と動く部分の間には(クレジットカードのような)固いカードを通せるようになっていなくてはならない
この規定にひっかかったらしいのですが、CyclingtipsによるとAerocoachのハブエンドキャップは構造的であり、動く部分でもないので、この規則にどのように違反しているのかを理解するのは難しい、としています。
これを受けてAerocoachのオンラインストアでは現在、これらのホイールの購入オプションに「UCIイベントで使用するか」という項目が用意され、YesかNoかを選択できるようになっています。「Yes」を選択すると、下の画像のメッチャ普通なエンドキャップ版のホイールが送られてきます。また、既にこれらのホイールを購入したユーザーは連絡してほしい、と書かれています。
ZIPPなら許すのか!
ちなみにZIPPが過去にフランジリングが外れる不具合でリコールしたことのあるZIPP 88のハブエンドキャップ(クリンチナットと呼ばれるパーツ)は、今回禁止されたAerocoachのそれとそっくりなデザインです。これは許されるけれどAerocoachのエンドキャップはダメ、というのは確かに「UCIの匙加減で全てが決まる」という印象は受けます。
Zipp 88はAerocoachに比べるとハブが幅広なので「さりげなく」エアロ効果を狙ったもののように思えますが、海外サイクリストの意見を読んでいると「ZIPPやシマノやカンパニョーロのような大メーカーなら罰せられないのに、Aerocoachのような小規模メーカーだと違反になるのはおかしい」という声も見られます。