過去数年、当ブログでは自転車パーツに関する最新情報をピックアップしてお届けしています。それらを振り返りながら、ロードバイクをはじめとするスポーツバイク関連パーツの今後数年の進化をまとめて予想してみたいと思います。1〜2年で大きい変化はないと思いますが、3〜5年後のスパンで考えると、ドロップハンドル車の姿は大きく変わっているかもしれません。
チューブ
インナーチューブについてはサーモプラスチック・ポリウレタン(TPU)素材の製品が増えてきています。Tubolito以外にもSchwalbeとPirelliがこのジャンルに参戦しています。ContinentalやVittoriaあたりもこの流れに乗ってきたら、チューブはブチルでもラテックスでもなくTPUが主流になるかもしれませんね。
タイヤ
タイヤではプロロードレースの世界でチューブド・クリンチャーが採用されていくかどうかが注目されています。Roval/Specializedがサポートチームでチューブド採用の動きを進めています。利便性の高いチューブド関連製品の性能が飛躍的に上がっていくなら、ホビーライダーには間違いなく売れます。今のところ小規模な動きですが、他社もこれに乗ってくるでしょうか。
タイヤ関連で他に注目しておきたいのがタイヤインサートです。MTBの世界ではだいぶ前からあるこの製品、ロード・グラベル用チューブレス対応製品も出てきました。Vittoriaがこの方面で頑張っている感じです。
ホイール
チューブレス対応ホイールではフックレスリム採用の動きが加速しています。ホイールメーカーはフックレスのほうが軽量・高剛性・高性能で製造コストも削減できる、と謳っていますが、タイヤメーカー大手のContinentalが一貫してフックレスリムに異を唱えている状況です。
もしビードが上げにくいといった運用面での問題が解消されるなら、2〜3年後にはフックレスが主流になっている可能性もありそうです。
ハンドル
プロロードレースの世界では幅の狭いドロップハンドルが流行するかもしれません。UCIがエアロ効果の高いライディングポジションを禁止したため、前方投影面積を減らすための幅狭ハンドルへの関心が高まっています。そのため奇抜なデザインのドロップハンドルが登場しつつありますが、UCIが異を唱えなければこうしたナローハンドル・ナローかつフレアなハンドルが流行しそうです。
ドロッパーポスト
また上のハンドルの件に関連して、必要な時により低い乗車姿勢を取るためのロード用ドロッパー・シートポストが登場してくるかもしれません。
フレーム
UCIがフレームデザインについての規制を変更しようとしています。詳細は下の記事をお読みいただくとして、2023〜24年頃にはロードバイクの姿がだいぶ変わっている可能性があります。
3Dプリントパーツ
3Dプリントのパーツが当たり前になってきました。パーツ小物は勿論、サドルやクランク、ディレイラーパーツやフレームに至るまで今後も3Dプリント製品が多く発表されるでしょう。メーカーにとっては開発時間の短縮やコスト削減といったメリットがあります。
コンポーネント
コンポーネントではワイヤレス・セミワイヤレスの動きが加速するのは言わずもがな。今後は「ワイヤレスの利便性をどれだけ極めていくか」が焦点になるでしょう。FSAが非接触充電式リアディレイラーの特許を申請していたりします。
また1xでも2xのギアレンジを実現する「2速内装リアハブ」にも注目です。このClassified 1×22ハブを搭載した完成車も出始めました。これも勿論ワイヤレスです。
Ceramic Speedのロッド・ベアリング式ドライブトレイン「Driven」も注目です。これもワイヤレス。ClassifiedやDrivenが今後2〜3年で主流になることはないと思いますが、5年後くらいには「ひょっとして…」と思わせるところもありますね。
サスペンション
ドロップハンドル車でもフロントとリアにサスペンションを搭載するモデルがだいぶ増えました。この動きは今後も加速するでしょう。グラベルバイクの人気とあいまってシートポストやステムにサスペンション機能を持たせた製品が増えるでしょう。
サングラス
ついでにウェアの話題も。サングラスはここ数年、Oakley Sutroをはじめとするレトロで大きいデザインが主流でした。しかしここに来て同社から横長で縦幅が短いKatoが登場。他社も追随すればしばらくはこのデザインが流行するかもしれません。
ショップ
最後は製品ではなく製品の販売形態に関する変化です。新製品の紹介記事をお伝えしていて気付いたことの1つに「D2C(Direct-to-consumers, 消費者直接取引)」を採用するメーカー・ブランドがずいぶん増えてきた、というものがあります。
これまでは代理店や小売店を経由しており「日本人は日本のショップで買って下さい」ということが多かったのですが(いわゆる「おま国」問題)、最近はメーカー本国サイトで注文すると日本に送ってくれるメーカーが増えました。
Canyonのような完成車は勿論、パーツメーカーもD2C対応のブランドが増えました。コロナによる流通の問題や、小規模なブティック系ブランドでも使えるShopify等の通販プラットフォームの普及が関係していそうです。
ブランドが確立されているショップであれば、エンドユーザーに直販したほうが収益性が高く、ユーザーにもコストメリットがあるのは当然です。しかし代理店や小売店(リアルショップ・通販サイトとも)が苦戦することになります。小規模ブランドでもInstagramでフォロワーが多ければ、代理店を通したりショップに宣伝してもらう必要がなくなってきます。
最近ではスペシャライズドが日本での小売店を半減しようとする動きがあり話題になっていますが、大メーカーによるコンセプトストア運営もD2C化の流れの一部です。しかも物理店舗があるとユーザーへのサポートも充実させられます。