UCIが2021年からフレームデザインに関する規制の一部を緩和するという信憑性の高い情報があります。Cyclingtipsのもとに匿名の内部関係者から情報のリークがあったようです。
出典 New UCI tech rules leaked: Is bike design about to get a shake-up?
チューブの厚みに関する変更
新しい規制緩和は全部で3つあるようなのですが、まずはチューブの厚みから。これまでは、
- あらゆるチューブは全方向で2.5cmから8cmの間でなければならないと長らく決められていた
- UCIは近年この規制を緩和し、シートステーとチェーンステーに関しては下限が1cmに変更されていた
のですが、新ルールでは
- 2.5cm〜8cmが1cm〜8cmに変更される
- シートステーとチェーンステーの厚みに関しては1cmルールが撤廃される
かもしれません。
これによってどんなバイクデザインが可能になるかというと、シートステーとチェーンステーを前や後ろから見ると1cm以下の平べったい板チョコのような形状にできてしまいます。下はHope Lotusのトラックバイクですが、これよりもさらに厚みが細いシートステー・チェーンステーの採用も可能になります。
さらにその気になればトップチューブやダウンチューブも前方・後方から見た時に1cmの厚みにすることが可能です(横から見た時に1cmというのはありえないと思いますが、ルール上は可能になるかもしれません)。
補強三角形をすべてのバイクに対して認可
2つめは”Compensation Triangle”(補強三角形または補正三角形)に関するものです。これがどう変わるかと言うと、2021年からは
- タイムトライアルバイク・トラックバイクのみで認められてきた「最大80mmの補正三角形」を全てのバイクに対して認可する
- ヘッドチューブとハンドルバーステムとの間に付加的なフレームコンポーネントを追加できる。これらはヘッドチューブボックスの寸法内に収まらなければならない
ことになりそうです。この補強三角形とは、「UCI技術規則の明確化ガイド」で以下のように説明されている箇所です。
ロード・タイムトライアルとトラック競技のために,8cmの側面を持つ補強三角形は,フレームの使用をより危険にするであろう応力集中ゾーンを起こさずにフレームを通して力を分散し伝達するために,金属より広い曲線を必要としている複合材の特有の性質と関連してストレスを緩和させるためにチューブの間の結合部に認可される.
(中略)
フレームは補正三角形とエリアに完全に収まることができるが,これらの限界を超えないこと.
実際のバイクでこれを観察してみましょう。下はBMC Timemachineですが、赤丸で囲んだ部分が補強三角形。剛性強化のために認可されている箇所です(下のTimemachineの場合はチェーンリングの裏が見えなくてすみません)。
これらの補強三角形を、その気になればロードバイクやシクロクロスバイクでも導入できることになります。ヘッドチューブ接合部についてはケーブルルーティングのための新しいデザインなどが可能になるかもしれません。
シートポストはシートチューブの延長上でなくとも良い
最後はシートポスト位置に関する変更です。次のように変わるそうです。
- シートポストはシートポストの延長上に存在しなくてはならなかったが、新ルールではシートチューブまたはトップチューブ、あるいはその両方のどこにでも接続することができる
具体的なイメージとして、やはりBMC Timemachine ONEを例に図示してみます。この場合、シートポストとシートチューブが同一線上にはありません。これはUCI規則が適用されないトライアスロンバイクなので可能なデザインなわけですが、これがロードバイクなどでも可能になるわけです。
よりエアロで平べったいフレームが増える?
これらの変更点からすると、2021年以降はよりエアロで平べったいフレームが増えるかもしれません。タイムトライアルバイクでさらに薄いシートステー・チェーンステーが登場するのは勿論、エアロロードでも厚み1cmのダウンチューブ・トップチューブ等が出るかもしれないですね。前方投影面積の削減です。恩恵を受けるのはエアロ系バイクでしょう。
しかしトライアングルとその連結という基礎的な構造部分に対する修正はないので、シートチューブがないバイクのような、過去には認められていた奇抜なデザインのバイクが登場することはないものと思われます。
おすすめ記事: