海外掲示板のバイクパッキング・コミュニティで「旅行中、どんな旅をしてきたのかと聞かれ何度も説明しなおすのに疲れてしまう人はいませんか。それとも私は不機嫌になっているだけでしょうか?」という投稿を見かけました。考えさせられるところが多い内容だったのでご紹介します。
人々が近付いてきて話しかけてくるのは、最初はクールだったのです。でも、つまらなくなりました。いつも同じ質問をされ、日に1〜2回ほど旅全体の説明をしないといけない。失礼に振る舞いたくはないのですが、お店の外に座ってヘッドフォンでYouTubeを視聴しながら何か食べている時など、それを全部やめて100人目の人にいま何をやっているか説明しなくてはならないのです。相手はいつも話に魅力されてすごく感じが良かったりするのですが、いつも自分の話をするのに飽きてきました。
寄せられたコメントから個人的に気になったものをピックアップしてみます(抄訳)。
- 私の場合、それはバイクパッキングやバックパッキングの楽しみの一部です。あなたがそれをあまり好きでないというのは残念なことです(32いいね)
- 忘れてはいけないのは、あなたは同じ人にその話を100回しているわけではないということです。どの人もはじめてあなたに質問しているのです。(…)私はそれぞれの人に同じエネルギーで話す努力をしています(80いいね)
- 自分の場合は、イライラしているのは疲れすぎていることのサインなので休息する時だと考えています(205いいね)
- (上の人にスレ主さん)Yeah(41いいね)
- 鬱々とした投稿だな(59いいね)
- (上の人に)いやいや、発散しているんだよ。これは誰にだってある。疲れてしまうんだ(31いいね)
- 多くの人は、旅の話を聞くことによって旅への渇望を満たすものです。私のように。お願いですから耐えてください(203いいね)
- あんた不安定になっているのかもよ(183いいね)
- スニッカー食え(8いいね)
- 「日に1〜2回」冒険について語るのが負担に感じるのなら、文明を離れはじめたほうがいいと思う(38いいね)
- 大部分の人々の好奇心は、手短なまとめで満たせるものです。私の場合、冒険の細部まで詳しい説明をした相手は、ホストや他のサイクリストだけです(62いいね)
- 詳しく説明しなくていいですよ。どこに行くのかと聞かれたら、今夜キャンプするところからいちばん近い町の名前を言うといい。どこから来たのか、という質問にも同じように(7いいね)
- あなたは疲れて不機嫌になっているだけかもしれないですね。私も長い旅行では、時々それに疲れたことがあります。人によっては基本的な情報やあなたのソーシャルメディアへのリンクを印刷したカードやパンフレットを用意していて、いま忙しいんだけどここ見てね、とそのカードを渡したりしています(20いいね)
コメントの中にはスレ主さんに対して「あんた人間嫌いじゃないのか」と、ちょっと責めているニュアンスのものもあるのですが、私はスレ主さんの気持ちもわかるような気がしました。やはり疲労が蓄積してイライラしがちになっているのではないかと推測します。別に人間嫌いではない親切な人でも、疲労のせいで社交的な会話が嫌になってしまうことはあると思います。
それと、スレ主さんは基本的に真面目でいい人だから疲れてしまうのではないか、とも思いました。どんな旅をしてきたか、端折らないできちんと上手に伝えたいという性格だから、疲れてしまうのではないでしょうか。
そして「ワンセンテンス」で簡単に伝えるスキルを身につけるのも、疲れてしまわないためには大事なことなのかもしれないと思いました。
それはコミュニケーションにおける、いわゆる「粒度」に関係する話かなと思います。たとえば…
私は日本の東京から来たんです。4月1日に東京を出発し新潟という港からフェリーに乗って中国に渡りシルクロード入りし途中で野犬の群れに追いかけられてあと肉まんがうまかったし、あとええと…
だと粒が細かすぎるので、
日本から来て、トルコまで行くところです
とやる、など。こういう大きい粒で情報を出した後で、その上で細かい質問をされたら粒度の小さい情報を追加していく(「東京からイスタンブールだよ」。「基本は野宿で、たまにホテルに泊まるよ」。等々)。すると疲れにくいと思います(ほとんどの人は、コメントでも言われていたように「東京から来てトルコまで行く」で満足してくれることが多い)。
ただ、この粒度を意識した会話というのは習得に時間がかかるスキルなので、誰でも簡単にすぐやれるわけでもないと思います(私も得意ではありません。相手が知りたいことを想像する訓練も必要になってきます)。
もしインスタやブログなどをやっているならその情報を記したカードを作り、本当に細かい話を聞きたい感じの人に対しては、会話に疲れている時はそれを渡して切り抜けるいうのは誰も不幸にならないとても良いアイデアだなと思いました(そういうカード、私ももらったことがあります)。
「私はそれぞれの人に同じエネルギーで話す努力をしています」というコメントは、美しい生き方だと思いますが、長旅でそれをやるのは無理なことも間違いなくあると思います。時間も体力も有限なのだから、これは仕方のないことだと思います。
とりあえずこうしたコミュニケーションが面倒と感じるようになったら、疲労・ストレスが溜まっている証拠かもしれないので2〜3日移動はせずに同じ場所でのんびりしたほうが良いかもしれないですね(バックパッキングの世界で「沈殿」と呼ばれる時間の過ごし方をする)。私自身もこういうミニトーク的な会話は得意なほうではないので、とても参考になるスレッドでした。