わずか22歳ながら圧倒的な強さでツール・ド・フランスの2連覇をほぼ確実なものにしているUAEチーム・エミレーツのスロベニア人、タデイ・ポガチャル。あまりにも強すぎるせいか、選手達からは「メカニカル・ドーピングをしているのではないか」との声が上がっています。
出典 Tadej Pogacar says there is nothing illegal about his bike at Tour de France- Cyclingnews
リアホイールから奇妙な音が聞こえる
Cyclingnewsによると、スイスのLe Temps誌で3人のライダーが匿名で「4つのチームのバイクのリアホイールから聞こえる奇妙なノイズ」に懸念を表明。この「疑惑のチーム」にはポガチャル所属のUAEチーム・エミレーツも含まれているとのこと。この匿名ライダーによると、
奇妙なノイズが聞こえます。乗っている時に聞こえるんです。リアホイールから聞こえます。奇妙な金属的なノイズで、調整がひどいチェーンから聞こえるような音です。あんな音は他所で聞いたことはありません
これに対しポガチャルは、
何のことかわからない。何も聞こえないよ。違法なものは何も使っていない。全部カンパニョーロ製だよ、ボーラだよ。何て言ったらいいかわからないよ
と回答しています。
ちなみに筆者もCampagnolo Boraや姉妹ブランドのFulcrumのホイールを愛用していますが(どちらも全く文句のない素晴らしいホイール。素人には本当にもったいないくらい)、フリーハブの音は他ブランドよりもかなり大きめではあります(笑)
海外の反応
この件に関する海外サイクリストの反応を見てみます。以下は海外掲示板Redditから。
- もしもーし!? それはカンパニョーロ・フリーハブって言うんだよ。カンパの品質管理要件では、フリーの音が少なくとも2ブロック離れた場所から聞こえないといけないとされているんだ。90年代のシャマルに乗ってたら近くにハチの大群がいても気付かないくらいですよ
- バカらしいニュースだ。メカニカルドーピングについては徹底的な検査が行われていて、ポガチャルのバイクにモーターを隠すなんて不可能だろう
- 仮に技術的に可能だったとしても、必要になる物流や関係者がバカにみたいに増えるから現実的には不可能だ。これは血液を注入するよりもずっと大掛かりな作戦になる。しかもUCIのテストがこれに加わる。勝者のバイクはいつもチェックされるし、時には分解されることもある。それにメーカーはメカニカルドーピングには全く関わりたくないということを忘れてはいけない。そんなことがあればブランドが死ぬ。メカニカルドーピングという陰謀論は最悪だよ
確かにUCIはメカニカルドーピングについて網羅的かつ徹底的な調査をしています。しかし下の記事で紹介したように、ステージ優勝者のみならず総合成績上位のライダーのバイクはステージ毎にチェック済み。第15ステージまでについては違反車両はまだ発見されていません。
個人的にもメカニカルドーピングは、技術的に可能ではあるものの(上の記事でも紹介したように過去に実際に摘発されたケースもあります)、グランツールという晴れ舞台で、一流の選手が、自分とチームと機材提供メーカーの名声を高いリスクに晒すような行為をすることはまずありえないだろう、と感じます。
今回こうした疑惑が出てきているのは、ひとえにポガチャルが強すぎるからでしょう。それだけ「常人には勝てないくらい強い奴だ」と思われているわけなので、ポガチャル氏は気分を害することなく、むしろ誇りに思ってパリ・シャンゼリゼに向かって良いのではないでしょうか。
海外では他に「ポガチャル以外の選手は、このままでは絶対に勝てないので峠でドーピングしても良いという温情措置をUCIとWADAが計画中」という冗談さえ見られたほどです(下のインスタ投稿)。
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