UCIがグラベル世界選手権(Gravel World Championships)の開催に興味を示しているようです。そこに名乗りを上げたのが1997年、イタリア・トスカーナで州「エロイカ」(L’eroica)イベントを立ち上げたジャンカルロ・ブロッチ(Giancarlo Brocci)。トスカーナのグラベルロード、ストラーデ・ビアンケで最初のグラベル世界選手権を開催してはどうか、と提案しています。
出典 Eroica offers to organise inaugural gravel World Championships in Tuscany
勝利よりも参加と交流に重点
ジャンカルロ・ブロッチ氏は大体次のようなことを考えているようです。
- グラベルライドやレースはモダン・プロフェッショナル・ロードレースからは距離を置いた、人々が自然や自分自身との繋がりを取り戻せるような新しいサイクリングの潮流になりうる
- グラベルと呼ばれることがあるが、私はエロイコ(Eroico)と呼びたい
- レースは300km程度までをカバーし夜に出発する
- レース中のメカニカル・アシスタンスはいかなる形式でも認めない
- パワーメーターとコンピューターの使用は禁止
- ドーピング規制は厳格に行う
- ライダーが不健康で極端なダイエットに偏りパワー・ウェイト・レシオばかり気にしないよう体脂肪率に下限を設ける
- 飲酒は、適度なものであれば禁止せずにむしろ推奨し、その結果ベストライダーが他の参加者と交流できるようにする
- ベストライダーはホテルやチームバスで移動する「とらえどころのないスター選手」であるよりもロールモデルや友達のような人として認識される
- この新しいサイクリングとレースの精神は「どんな犠牲を払ってでも勝つこと」より「参加すること」そのものによって形成される
と、成績で順位を決定する「世界選手権」というものとはなかなか相容れないところがあるものに個人的には思えてしまいますが、UCI会長ダヴィッド・ラパルティアン氏はグラベル世界選手権の開催自体には乗り気で、この2人はスイスで話し合いを持ったそうです。
UCIの接近に抵抗感を示す人々も
しかし巨大な統括組織もなくスクスクと育ってきたグラベルロードの世界に国際競技連盟であるUCIが絡んでくることに抵抗を示す人々は少なくないようです。海外掲示板Redditには次のようなコメントがありました。
出典 Not to be cynical, but – BOO!
- グラベルは草の根がいいんだよ。風変わりで汚い(quirky and dirty)もののままでいい
- グラベル世界選手権ならもうあるよ – ダーティ・カンザさ!
- グラベルのアウトサイダー的なカルチャーはもうなくなっている。バイクパッキングでさえもはやロードコミュニティのようだ
グラベルと呼ばれる自転車の楽しみ方が支持されはじめている理由は決してひとつではないと思いますが、UCIが管理するロードレースに代表されるような世界観(競技・管理・勝利・統制・節制・規則…等々)に違和感を持っているグラベルバイカーは少なくないのかもしれません。
また、確かにネブラスカのグラベル・ワールズ、ダーティー・カンザのような立派な「競技としてのグラベルイベント」は既に多数存在しているので、なぜ今になってUCIが頭を突っ込んで来るんだ、と思う人も多いのでしょう。
逆にUCI側からすると、ロードレース・トラック・MTBという従来の競技ジャンルが下火になってきているので、スポーツサイクリング界の勢いとUCIという組織を維持していくために昨今のグラベル人気にあやかりたい、という思いもあるのかな、などと考えたりしました。
何でも人気が出てくると商業化されてくるのは世の常ですが、本当に面白いものは商業化されることによって滅びたりはしないので、仮にUCIにグラベルカテゴリーが出来たとしても特に困る人も出ないのではないかと個人的には思います。
逆にグラベルロードが「素人お断り」な感じの、秘教的で排他的なコミュニティを形成するようになるのは誰も望んでいないでしょうから、UCIの関与によってグラベルというジャンルによりポジティブなスポットライトが当たることを期待したいところです。
ロードバイクのビッグブランド各社の大部分が「グラベル」という製品カテゴリーを持つようになったので、ここに入ってきたいというUCIの動きは自然と言えば自然なことでしょうか。
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