クリス・フルームが今年からイスラエル・スタートアップネイション・チームで乗るFactor OSTRO VAMについて語っているレビュー動画が巷で話題です。
何故話題かというと、フルームはずっとリムブレーキのロードバイクに乗ってきたのですが、今年はディスクブレーキのバイクに乗る必要があるものの、ディスクブレーキの性能にはまだ満足していない、と語っているからです。
しかし上の動画全体を見ると、フルームはディスクブレーキを激しい口調でディスっているわけではなく、これには良いところもあるし、これが業界の方向性だから仕方ない、と、なかなか好感の持てる正直な意見を述べているのが印象的でした。
ワークスタンドと実走は違う
さて、動画の2:35頃からフルームは次のように語っています。
- 私はまだディスクブレーキを100%買っているわけではない
- 過去2ヶ月間ほど使ってみたけれど、パフォーマンス面では素晴らしいと思う。止まりたい時にいつでも止まれる。ドライでも、ウェットでも仕事をしてくれる。やるべき仕事を果たしてくれているよ
- ディスクブレーキの弱点は、しょっちゅう(ローターがパッドと)擦れていること、メカトラブルのリスクが増えること、オーバーヒートする可能性があること、長い下りで5分や10分もブレーキングを続けているとローターが少し歪んでしまうといったことだ
- 個人的には、ディスクブレーキのテクノロジーはまだロードサイクリングに必要な域には達していないと思う
- ディスクとローター(※原文ママ)の距離がまだ狭すぎるから、あの摩擦が発生してしまうし、片方のピストンがもう片方より出過ぎるとか、そういう細かい問題が出てしまうんだ。ピストンがいつも想定通りに引っ込んでくれているとは思えない
- メカニックが直してくれる時、作業用スタンドでは問題ないことが多いんだけど、外で実走するとなると別の話なんだ
- これが業界が行きたい方向だというのは受け入れます、私達ライダーはディスクブレーキに適応して、これをちゃんと使えるようにならないといけないと思います
- もしあなたがまだディスクブレーキに乗っていないのなら、あなたが時代に取り残されて、否が応でもディスクブレーキを使わないといけなくなるのは時間の問題です
これをご覧になって皆さんはどう思われたでしょうか。個人的には、フルームさん、いい人だな!と思いました。提供されるバイクのネガティブな面にフォーカスするのはなかなか出来ないことだと思います(だからこそこの動画が話題になっているわけですが)。
それにとても参考になります。私もディスクブレーキを使いはじめて数年になりますが、どんなに頑張って調整してもローターがパッドと擦る「シャリ、シャリ、シャリ…」というあの音と完全に無縁になれたことはありません(下は関連記事)。
ただ結局は慣れてしまって、ディスクブレーキとはそういうものなんだろう、と思って使い続けていますが(※やれるだけの調整はやった上で)、グランツールに出るようなプロサイクリストのバイクなら一流メカニックが調整してくれるから、こういう問題は発生しないのかもしれない、とも思っていました。
しかしフルームの動画を見ていると、あぁ、やっぱり誰がやってもダメなのか(笑)と、ちょっと安心しました。
ディスクブレーキのローター、やっぱり軽量に作らないといけないのでどうしても剛性が落ちてしまうんでしょうね。長いダウンヒルでローターが歪む、という話など「やっぱりそうなのかー」と感心することしきりでした。
コミュ力の高いフルーム氏
フルーム氏、今年の1月10日にYouTubeチャンネルを立ち上げたらしく、今回の動画はまだ2本目。本記事時点での登録者数は1.09万人ほどです。見ていて気持ち良い動画だったのでチャンネル登録しました。
なんというか、会社の現状に正直に向き合って良いところも課題点も伝える有能な経営者、という感じに見えたのは私だけでしょうか。コミュニケーション能力がすごく高い人なんだなと思いました。