サイクリング

サイクルボールの最強ルート「伊豆いち」に、折り畳みミニベロロードで挑んだ結果【獲得標高2,686m】

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わたしの一番はずっと平坦
平坦といられれば何だっていい!
おおげさじゃない 全部ほんと
平坦が、わたしの全部なnadokazuです。

というわけで、本日の駄文はこちら!

サイクルボールについて、念のため復習。

「日本中の名だたる“一周”」を走って、全ルートの完走「グランボール制覇」を目指す「サイクルボール」。

  • 参加費無料!
  • 事前のエントリー手続き不要!
  • 完走すると記念品がもらえる!
  • 提携店舗で優待も受けられる!

という、参加しない方が損するレベルのおもてなしを受けられる、割と最高なイベントです。

この「サイクルボール」が仕掛けとして非常に巧妙なのは、全ルートの制覇を目指すクエスト形式になっていること。ルートをひとつ完走しちゃうと、残ったルートも走りまくって完走記念のメダルを並べて飾りたくなります。

▼ 参考記事

サイクルボールを、つかもうぜ!エントリーも参加費も不要で、記念品&特典あり!【そうさ今こそアドベンチャー】
空を駆け抜け山を越え 青のマシンで 今日も(意識が)翔ぶのさ この世で一番弱いヤツ、nadokazuです。 というわけで、本日の駄文はこちら! ぼっち自転車乗りだけが持つ、圧倒的な自由。 気の合う仲間たちとワイワイ走って楽しく過ごす、リア充...

最強、そして最凶。それが「伊豆いち」!

執筆時は本シーズンの前段階にあたる「プレシーズン」で、合計9つのルートが設定されています。その中で走行距離が最も長く、獲得標高がいちばん凄まじい、まさに最強!そして最恐で最凶で最狂なルート。それが「伊豆いち」です。

走行距離は、144km。でもまぁ、これはアルプスあづみのセンチュリーライドの160kmよりも15km近く短いので正直恐るるにたりません(十分に長距離ですけど)。

なんですが!

獲得標高のほうが、超絶やべーです。なんと「2,686m」という目を疑う数値が、公式サイトには記載されています。

ちなみに「アルプスあづみのセンチュリーライド」の160kmコースで、獲得標高は1,715m。山岳ライドイベントの「グランフォンド小諸」ですら、獲得票高は2,319mに留まります。

それを余裕で超えてくる「伊豆いち」。このルートを引いた方には、人の心とか、ないんか…?

実際に行ってみた。

伊豆半島と言えば、どこを切り取っても坂があるデスゾーン。坂嫌いが近寄ってはいけないエリア選手権で、15年連続1位を獲得している場所です(日本陰キャ自転車乗り協会調べ n=1)。

しかも、2,500mを超える獲得標高。そんなルートを走った日には、とんでもなく酷い目に遭うのが確定事項になります。自分の貧弱な肉体と精神は、激甚災害級のダメージを受けるでしょう。

でもでも!

「男なら、危険をかえりみず…死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある」

と、宇宙海賊の人も言っています。私は躊躇うことなく、サイクルボール「伊豆いち」のスタート地点に向かいました。

ちなみに、自分を突き動かしたのは「気概」とか「漢気」とか「チャレンジ精神」とかでは全然なくて

「豪華景品をタダもらいするチャンスくれ!」

という、物欲に直結した激情。そして

「どギツいルートを走破したことを自慢したい!ドヤ顔したい!承認欲求を満たしたい!」

という、卑しく下衆で低俗きわまりない劣情でした。なんだかもう、いろいろと最低過ぎて自分のことなのにドン引きです。

輪行なら前泊、クルマは深夜出発がおすすめ。

スタート地点は、静岡県伊豆市の「修善寺総合会館」。修善寺駅から2km程度の場所なので、輪行でも難なく辿り着けます。

しかしながら、東京駅出発だと修善寺駅に到着できるのは始発を使っても7時24分。輪行解除と移動の時間を考えると、8時スタートになってしまうでしょう。

伊豆市の公式サイトによると、修善寺総合会館の閉館は17時とのこと。開館時間内に完走認定を受けて記念品を受け取ろうと思うと、9時間以内に戻ってくる必要があります。全行程を時速16km以上で走らないと、間に合わない計算。りんりんロードで144kmならともかく、獲得標高2,686mですからねぇ…無理じゃね??

いずれにせよ制限時間に追い立てられながら走るのがイヤなら、前泊か自家用車で早朝出発できるようにスケジューリングするのがよさそうです。

私? 9時間なんてハナッから諦めているし、なんなら10時間超だって余裕であり得るので、クルマで横浜を午前3時頃に出発して修善寺に向かいました。

自家用車プランには自転車運搬負荷が消える、という絶大なメリットがあります。しかし睡眠時間がごっそり削られるうえに、疲労困憊した状態で走る帰路がツラ過ぎ。マニーさえあれば、やっぱり前泊しちゃうのが理想です。

修善寺の温泉旅館で豪遊!とか憧れちゃいますが、せっかくの旅館朝食をキャンセルする出発時間になってしまいそう。そうなると沼津や三島や伊豆長岡のビジネスホテルに素泊まりプランで宿泊。当日朝は伊豆箱根鉄道の始発を使ったり、修善寺まで自走したりする。というのが、前泊プランの落としどころになるでしょう。

スタート地点の駐車場は使えない。

修善寺総合会館には無料駐車場がありますが、現地の看板に「会館利用者専用」という記載があったのでサイクルボールには使用不可という認識です。自家用車輪行のときは、付近のコインパーキングを使うのが吉でしょう。自分は御幸橋駐車場(24時間営業/1日500円)を使いました。

川沿い、海沿いのゆるポタを楽しめる。

修善寺総合会館をスタートすると、伊豆長岡までは狩野川沿いをメインに走ります。もちろん、坂成分ほぼゼロ。やっぱり平坦は最高です。

三津坂を越えて内浦に出たあとは海沿いを走るのですが、ここも本当にイイ道ですねぇ。若干霞んではいますが、富士山ビューも今日はバッチリ。

最初のチェックポイントは大瀬崎で、次のチェックポイントが戸田の道の駅。登坂はあるものの出発直後のサラ脚ということもあって、気分は完全に楽しいゆるポタです。

早朝の西伊豆で、木漏れ日の中をサイクリング。あれ?なんだか、これっぽっちもツラい感じがありませんよ? それどころか、むしろ最高です。伊豆いちたーのしー!!

西伊豆の海岸線が、鋭すぎる牙を剥く。

しかし、そんな平和で快適なサイクリングも長くは続きませんでした。

戸田港を過ぎた頃から、なんだか雰囲気が変わります。インナーローでも踏ん張らないと登れない斜度の登場頻度が、心なしか…いや確実に増えてきました。そのうえ登っても登っても、まったく登坂の終わる気配がありません。

「こ…これだけ登ったんだから、さすがに次のカーブで下りになるだろ…」

そんな淡い期待も、あっさり打ち砕かれます。しかも、何度も何度も何度も何度も!!

ふと視界を覆っていた木々が途切れて、隙間から海が見えました。駿河湾の大海原に、ポツンと白い点が浮かんでいます。土肥に辿り着くと、その正体が判明。

このフェリーに乗って清水方面に逃げちゃおうかな…という考えが頭をよぎりますが、今日は修善寺にクルマが置いてあるんですよね。人質を取られている以上、逃げることはできません。

しかも!

ゴールまでの距離は、まだ余裕で半分以上が残っています。少しの坂でもギアを必要以上に落とし、徹底的に頑張らないで脚力を温存するように走りました。

それでもなお、西伊豆の海岸線は一切の容赦なく私を責め立て続けます。地獄の登坂をギリギリでクリアしたと思ったら、その先に出現する新たな登坂。延々と繰り返されるアップダウンは、実質「永遠の登坂」の様相。脚力どころか、生命力をごっそり削ぎ落とされました。

そして、ようやく4つめのチェックポイント「堂ヶ島」に到着。

この景色には、見覚えがあります。干潮時だけ海岸から島に歩いて渡ることができて、1日に2時間しか食べることのできない幻の西伊豆B級グルメ「三四郎島のとんぼろ」が屋台で出されてる場所ですよね!

堂ヶ島からしばらく走ると、松崎で左に折れて内陸部に向かうルートになります。地獄の海岸線とも、ようやくオサラバできる!と、安堵したのもつかの間。この先のルートを確認すると「いままで登ってきた坂は、ホンの前菜でしかない」という、絶望的な現実を突きつけられました。

もうやめて!とっくに脚のライフはゼロよ!!

坂地獄!これが伊豆半島の本気…!

川沿いを内陸部に向かうと、久しぶりに平坦路が現れました。日差しは強めですが、湿度が高くないので走っていると爽やかです。

脚への負荷を最小限にしても、時速2桁台の速度が出せる。実に気持ちのいいサイクリングが楽し…めたのも束の間。すぐに一切の情け容赦が無い、つらく長い登坂が始まります。

海沿いの坂も辛かったですが、まだ前半戦ということもあって脚への負荷を徹底的に抑える「頑張らない走法」で乗り越えられました。ですが、この先は違います。すでに80km走って、1,400m登ったあとです。

この疲弊しまくったところに、中ボスクラスの坂がなんと2連続で登場します。長く辛い坂をようやく越えても、その直後に強制おかわりがやってくる。しかも蓄積した疲労が積もりに積もって、脚のコンディションは最底辺。これを地獄と言わずして、何を地獄と言うのでしょう。

第5チェックポイントの河津桜交流館に到着するころには、脚力気力体力すべてがスッカラカンの完全喪失状態。ペダルの上に、力なく脚を乗せることしかできなくなっていました。

ジュースを飲んで、ソフトクリームを食べて、座ってしっかり休憩。このあとは、いよいよ本日のラスボスが登場です。

終わらない登坂!ラスボス天城峠で足つき寸前!

補給と休息によって売り切れた脚も復活…するはずもなく、コンディション最悪状態のまま最後の峠越えに挑まざるを得ない状況になりました。これから登坂しないといけないのは、泣く子も黙る天城峠。さっき地獄の苦しみを与えられた中ボス坂3匹分の破壊力をもった、大ボス中の大ボス坂です。

RWGPSで坂スペックをチェックすると、あまりの凄まじさに心は絶望を通り越して「虚無」。

そして案の定「つらい」「くるしい」しか感じない、永劫の地獄タイムがスタート。もう1から100まで、すべての行程が苦痛です。

天城峠でいちばん大きなダメージを受けたのが、ピークの手前パート。RWGPSの画面では、間違いなく現在位置が「間もなく坂の頂点であること」を示しています。

なんですが!いつまで経っても、現在位置がピークに近づきません。何コレ、GPS壊れてない!?

もうすぐ…もうすぐだ…!このカーブの先に、新天城トンネルの入口が…見えない!!まだ続くのか、この坂…。という感じで脚力を絞り尽くされた脚へのダメージに加えて、心も繰り返し抉られ続けました。

シッティングだともうペダルに力が入らなくなり、立ち漕ぎでかろうじて進んでいると、やっと…やっと新天城トンネルに到着。

トンネルを抜けたあとは、待ちに待った下り坂。一度もペダルを回すことなく、最終チェックポイントの「道の駅天城越え」です。

ああ…空はこんなにも青かったのか…。登坂中はもう目の前の路面しか見えず、ここが自然あふれる風光明媚な伊豆半島の中心エリアであることに、ようやく気付きました。

あとは猛スピードで坂を下って、ゴール!スタートから9時間53分。ほぼ10時間を費やして、ようやく伊豆いちクリアです。

生まれたての子鹿状態で階段を下りて、受付で完走証明手続きを完了。かのいちと同じで、コインとサコッシュをいただきました。ちゃんと伊豆いち専用デザインになっていて、参加費無料だというのに相変わらず賞品が豪華です。

クルマに戻って日帰り温泉で汗を流したあとは、沼津市街まで移動(走った後の行動の自由度が高いのは、自家用車輪行の大きなメリットですなぁ)。昭和感がある喫茶店(なぜかカラフルなイラストやフィギュアなどが店内に所狭しと並んでいる)で、和風ハンバーグセットに舌鼓を打ちました。

復路は沼津を舞台に活動する音楽ユニットの楽曲を大ボリュームで流して眠気を抑止しつつ、横浜に帰還。布団になだれ込み…ますが、脚と身体がダル重くて眠たいのに眠れない、追加の苦しみを味わうことになりました。

身体と心の両方に深い深い「痕 〜きずあと〜」を残した、サイクルボール伊豆いち。これ、本シーズンは走行距離がもっと伸びるんですよね?正気ですか??

まとめ:はしろうぜ!サイクルボール伊豆いち!

距離144km、獲得標高2,686m。スタートする前から、とてつもなくタフなコースであることは明白。ツラい思いをすることも、覚悟完了していました。

ですが実際に走ってみると、その苦しさ・ツラさは想像を遥かに超越するレベル。筆舌に尽くしがたい、と言い切れるものでした。簡単にまとめると

  • スタートから大瀬崎までは、ゆるポタを楽しめる。
  • 大瀬崎から先、西伊豆の海沿いは、登りか下りしかない。つまり、登りしかない。
  • 松崎で左折した先の平坦に癒やしを感じる。ただし一瞬。
  • 松崎から河津の間で登場する、2連続登場の中ボス峠。一匹目のほうがピーク近辺の斜度がキツい。
  • 天城峠やべー。

現場からは以上です!

走ってる最中もキッツイですが走行後に残るダメージも凄まじいので、チャレンジするなら走った翌日も休みにするようスケジュール調整しておくことを激烈にオススメします!

おまけ:10年目の再会。フィジーク「アリオネ」

愛用しているサドルはいくつがありますが、タイレルFX/FSXで使っているのはフィジークの「アリアンテVS」。アルプスあづみのセンチュリーライド160kmを2度走破しても尻痛トラブル無しと、自分の尻とベストフィットなのは疑いようがありません。

▼ 参考記事

サドルはFizikを選んでおけば絶対に後悔しない。…たぶん。
フレームやコンポやアクセサリ類は「見た目」を、なによりも重視する意識低い系の自転車乗りである自分。なんですが、サドルだけは尻との相性最優先で選ばざるを得ません。というわけで、自分のサドル遍歴の中で最も長く使っているのがfi'zi:k(フィジ...

アリアンテに不満は一切ないのですが、たまたま覗いたヤフオクで青い差し色の入ったサドルを見つけてしまいました。

ただし、問題が1点。そのサドルは「アリアンテ」ではなく「アリオネ」だったのです。

思い返せば10年以上前、初めての交換サドルとして購入したアリオネ。ネットでも店員さんのお話でも評判は非常に高く、完成車に付属していた鋼鉄のようなサドルとは別モノでした。なんですが、自分の尻との相性は劣悪で20kmが我慢の限界。瞬く間にアリアンテに交換した…という経験があります。

でもでも、その頃より大幅に体重を減らしているし、自転車乗りとしての経験値も違います。もしかして、尻との相性だって変化しているかも?

そして何より、タイレルFSXの青いフレームに青い差し色の入ったサドルを装着したら、さぞかしイイ感じに仕上がることでしょう。見た目の誘惑には耐えきれず、思わずポチって伊豆いちでいよいよ実戦投入。

その結果!!

尻とサドルの相性は10年経っても一切変化しないことがわかりました。ありがとうアリオネ…そしてさようなら…。

著者
などかず

美味しくご飯を食べることをモチベーションにペダルを回し、機材の性能に頼り切って「頑張らないことを頑張る」物欲系へっぽこ自転車乗り。リアルで自転車に乗れない週末にはZWIFTで合計100km以上のバーチャルライドを欠かさないものの、脚力や走行スキルについての言及は意図的に避けている模様。愛車はLOOK675、ブロンプトンCHPT3 V2、タイレルFX(これだけとは言ってない)。

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