シマノの12スピードXTR, XT, SLXでは「マイクロスプライン」という新型ハブが採用されています。従来のHGカセットではトップ10Tに対応できないためその新設計ハブが登場したのですが、これはクローズドな規格(仕様が公開されていない規格)で、現在のところ製造を許可されているハブ・ホイールメーカーが限られています。
ライセンスを最初に供与されたのはDT Swiss。その後、XT M8100/SLX M7100の発表時にMavic, Newmen, Industry Nineが新たにライセンシーに加わることが発表されました(下はその件についての関連記事)。
HopeがFacebookで不快感を表明
しかしChris King, Hope, Novatec, Syntace, Stan’s No Tubesといったハブメーカーはまだライセンスを供与されていません。このことについてHopeがFacebookで不快感を表明しています。
マイクロスプラインの件で何が起きているのか?
この新規格が発表されて以来、私達はシマノと話し合いを続けてきました。シマノは、マイクロスプラインのライセンスはOEMハブメーカーのみに提供され、ハブはバイクメーカーの名前でブランディングしなければならない、と伝えてきました。またアフターマーケットのハブを生産するメーカーにはライセンスを提供しない、とも言ってきました。
(新型)XTとSLXのローンチで発表された資料に掲載されているホイールやハブを見ると、シマノはメーカーによって異なるルールを伝えているように見えます。これは私達と忠実なカスタマーにとって残念なことです。
私達はこれからもシマノに働きかけていくつもりです。進捗があり次第またお知らせします。
と、Hopeはちょっと怒っています。その理由はアフターマーケットのハブを生産しているIndustry Nineがライセンスを与えられているからでしょう。Hopeも同じ土俵にいるのになぜ俺達にはライセンスを与えてくれないのか、おかしいじゃないか、という理屈です。
しかしIndustry NineのハブはReynolds, Crank Brothers, Santa Cruzなどの完組ホイールで採用されており、完成車に搭載されていることも多いので特別扱いということなのかもしれません。
要するにシマノは今のところ、OEM完成車で採用されるホイールのハブを作っているところにしかライセンスは提供しませんよ、という姿勢です。
Singletrackが詳しく書いていますが、最初にライセンスを供与されたDT Swissは多くの完組ホイールのハブやハブ内部パーツを作っていて、Giant, Specialized, Trek等の完成車で使われています。シマノからすると大口顧客です。
MavicとNewmenもドイツのCanyonやCube完成車で採用。これもビッグな顧客。
オープン規格にしなかったのが謎
しかしシマノのこの動き、私のような一般人にはどうも不可解です。
いまMTB市場でシマノはSRAMに押されています。1xも12速化も遅かったし、満を持して登場した新XTRの新型ハブは話題のサイレンス機構に問題が出たためコンポ全体のリリースが遅れてしまいました(サイレンスハブは現在再設計中らしい)。
対するSRAMの12スピードカセットは「XDドライバー」というハブに装着するのですが(トップ11TのNX Eagleを除く)、このXDドライバーはオープン規格で、ざっくり言えばどのメーカーも勝手に作って良いものになっています。カメラで言うならマイクロフォーサーズのようなオープン規格。
MTB市場で勢いを取り戻すためには、シマノはマイクロスプラインハブをクローズド規格にするのでなく、SRAMのようにメーカー各社に開放したほうがずっといいような気がするんですよね。素人目にはデメリットしか見えません。
現状、損をするのはHopeやChris Kingのような大規模OEMとは無縁な中小企業。
中小といっても彼らは高品質な製品をつくっていて、MTBの世界でもコアなファンがたくさんいます。彼らにマイクロスプラインハブを生産されるとシマノは損をするのか。
たぶん損をするという判断があるからこそ(まだ)ライセンスを供与していないのだと思いますが、供与した場合のメリットのほうが大きいんじゃないのかなと思ったりします。まぁこれは大人の事情を知る由もない一般人の憶測にすぎません。
ちなみにWhite Industriesはもうなんか勝手にマイクロスプライン互換ハブを作ったようです(笑)。
Shmeagle(シュミーグル)
最後に余談。SRAMの12カセット + XTR 12スピードの組み合わせで運用している人も海外にはいるようなのですが(ほとんど問題なく動作するらしい)、この組み合わせ、”Shimano”と”Eagle”をあわせて”Shmeagle”(シュミーグル)などと呼ばれているそうです。
シマニョーロ、スマノ、スラニョーロに続いてシュミーグル、などという新語が登場していたとは驚きです。