フレーム・完成車

究極のコミューター THE BROMPTON

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ブロンプトンはロンドン生まれの折りたたみ自転車。アンドリュー・リッチー氏が創設したブロンプトン・バイシクル社で販売されている。ラインナップは「ブロンプトン」1車種のみ。基本構造は1986年よりほぼ変わっていない。

究極のコミューター THE BROMPTON

そんなブロンプトンは、雑誌等では走行性能と折りたたみ機構を両立したという評価がなされる。

しかし重量は11kg台(M3L)と重く、走行性能もスポーツサイクルと比べると低いし、街乗り自転車としては高価すぎる。

では、ブロンプトンはなぜこんなにも支持されているのか。

ブロンプトンの特長

ブロンプトンをブロンプトンたらしめるのはパッケージングの完成度。

具体的には、次のような特長を備えており、コミューターとして非常に使いやすい。

  1. 常用にたえる走行性能
  2. 優れた折りたたみ機構
  3. 秀逸なバッグシステム

常用にたえる走行性能

折りたたみ機構ばかり語られるが、最初に挙げたいのはこれ。

ブロンプトンは、自転車として最も重要な走行性能が最低限確保されている(決して「優れた走行性能」ではない)。

16インチの小径車ながらホイールベースが長く、ハンドル・サドル・ペダルと前後輪の接地点の位置関係がフルサイズの自転車に近いため、ハンドリングは自然で乗りやすい。

車輪が小さい分、700cはもちろん20インチに比べてスピードが出にくいのは確かで、スポーツバイクとして考えると不満に思うだろうが、このコンパクトサイズにして、ちょっと良いシティサイクルくらいの走行性能、と考えれば十分に満足できるはず。

なお平地コースで行われるブロンプトン世界選手権では、平均時速38km、ゴールスプリントは時速50km超に達するので、頑張ればまぁ、それくらいのペースで走れる。

優れた折りたたみ機構

ブロンプトン発売時から既に完成されていたと言っても良い折りたたみ機構。

フレームと後輪スイングアームのヒンジで、パズルのように3つ折りに折りたたむと、ホイールサイズ+αの箱状になる。

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折りたたんだ状態では、持ち上げてもバラけず、しかも自立するので輪行や保管で非常に使い勝手が良い。

また、ちょっと駐輪する際には、後輪のみ折りたたむことでスタンド代わりになる。

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この「収まりの良さ」「座りの良さ」に加え、慣れれば10秒程度しかかからない「折りたたみの速さ」は他の16~20インチフォールディングバイクとは一線を画している。

手軽に輪行できるのはもちろん、盗難が心配な街中でサッと畳んで店に持ち込んだり、駅のコインロッカーに入れたり、他の自転車では真似できないような運用ができる。

秀逸なバッグシステム

見落とされがちだが、一度使うと手放せなくなるのが専用のバッグ。

ヘッドチューブに取り付けられたキャリアブロックにワンタッチで固定できる。

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バッグは車体フレームに固定されるためハンドリングがふらつくことはなく、重心も低いので、荷物を詰め込んでも安定して走れる。

バッグにはフレームが内蔵されていて、型崩れや揺れを抑えるのも安定感につながっている。

究極のコミューター THE BROMPTON

究極のコミューター THE BROMPTON

しかも輪行時にはブロンプトンの上に載せるように固定でき、転がすときの取っ手にもなる。高価だが、あらゆる面で使い勝手が考えつくされている。

バッグのラインナップも豊富で、通勤や買い物から泊りがけのツーリングまで、用途にあったスタイルと容量を選択できる。

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完全バランス

以上のように、ブロンプトンはシステムとして高い完成度にまとまっているが、ひとたび手を加えると絶妙なバランスを崩してしまう。

パーツを自分好みに交換して、用途にあわせて乗りやすくしたり、オリジナリティを出したりするのはスポーツサイクルの楽しみのひとつ。

しかし、規格化されたパーツで組まれたロードバイクとは違い、ブロンプトンはコンパクトなパッケージングを実現するために専用部品だらけで、お互いが絶妙な位置関係で干渉を避けるようになっている。すなわち、ひとつパーツを交換すると、ひとつ問題が発生する。

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パーツ交換までいかなくても、ハンドルやブレーキレバーの角度を変えただけで折り畳めなくなったり、バッグと干渉したり、ブレーキワイヤーの長さが合わなくなったり。

安心して調整できるのはサドルの高さくらい。

まぁ、こういう厳しい制約の中でカスタムするのもまた楽しいのだけれど。

その他にも、安易に交換すべきではない部品も多く存在する。

例えば、社外品に交換されることの多いヒンジクランプ。折りたたみ機構の鍵となる重要な部品だが、純正品はくすんだアルミ製。

見栄えもあって、社外品に交換されているのをよく見かける。

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しかし純正品は、単純なコの字型ではなく、フレームの当たり面だけを効率よく押さえつけられるような形状になっている。

丸っこい形も、おそらく応力集中して割れるのを避けるため。

さらに、素材も柔らかく、クランプ自体が変形することでフレームの消耗を防ぐ。

社外のヒンジクランプは硬い素材を切削加工しているものが多く、確かに見た目はピシッとしているが、どちらが真に機能的で合理的かというと、やはり純正に勝るものはないと思う。

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都市生活者のためのコミューター

ブロンプトンは、ロードバイクのような走りはできないし、軽々持ち運べるほど小さく軽いわけでもない。

おまけに、数10万円のバイクを複数台乗り回すような人ですら尻込みする価格。

(2019年モデルは、標準的な仕様で税込20万円程度。なお輸入代理店の名誉のために言っておくと、イギリス本国では2割程度安いものの、外のヨーロッパ諸国では日本と同価格帯)

ではブロンプトンの強みは何か。それは、都市部での移動手段としての完成度の高さ。

街中の移動には十分な走行性能と、長距離移動や悪天候時にも簡単に輪行できるコンパクトさ。

狭いアパートの室内でも保管でき、店や職場に持ち込むことで盗難のリスクも減らせる。

さらに、前後にフェンダーがあるので泥跳ねで服を汚さないし、専用バッグで荷物も安全快適に運べる。

また、ブロンプトン・バイシクルズ社の社長を務めるウィル氏曰く、ブロンプトンは長年の使用に耐えるように丈夫に作ってあるという。

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イニシャルコストはかさむが、最低限のメンテナンスを行い、数年ごとに消耗パーツを交換してやれば、日常の道具として、10年、20年と使い続けられる。

ブロンプトンより小さく折り畳める自転車で、ブロンプトンより走行性能が高いものはなく、
ブロンプトンより走行性能が高い自転車で、ブロンプトンより小さく折り畳めるものはない。

そして、ブロンプトンより優れたコミューターはないと思うのだ。

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著者
すくみずさん

年間を通じてMTBとシクロクロスに参戦し、泥汚れと生傷が絶えないオフロードレーサー。自転車は転ぶからこそ面白い。

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