ディレイラー

SRAMの「電動ケーブルプラー」の特許が発見される あのX-Shifterと酷似した内容

SRAMによる「電動ケーブルプラー(Electronic Cable Puller)」に関する特許文書が発見されています。ワイヤレスでリアディレイラー用のワイヤーを引く「X-Shifter」や「Archer D1X」と酷似するアイデアですが、バッテリーを内蔵せずe-Bikeのメインバッテリーから給電するシステムとなっている点が新しいところです。

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

既にフルワイヤレスのeTapを持つSRAMですが、なぜこのようなワイヤレスとメカニカルのハイブリッド変速システムを検討しているのでしょうか。そこにはいくつかの事情があるようです。

出典 Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]
参考 Patent Watch: Two companies offer wireless shifter adapters as SRAM application touts similar technology

X-ShifterやArcher D1Xの外部バッテリー版か

この特許についてBicycleretailerが報じているので要約します。

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

  • 2020年9月10日、SRAMによる”Electronic Cable Puller”(電動ケーブル引き)に関する特許が公開された
  • このケーブル引きはフレームに設置され、ワイヤレスで動作し、e-Bikeのバッテリーから給電される
  • 完全ワイヤレスのeTapは定価がForceモデルで$490からと高額であり、バッテリー持続時間は60時間である
  • この特許ではディレイラーを直接ワイヤレスで動かすのではなく、右チェーンステーにマウントしたボックスが信号を受信する
  • このボックスにはモーターが内蔵されておりケーブルを引くことができる
  • このため従来型のケーブル(ワイヤー)式リアディレイラーが使える
  • 特許によるとこのケーブル引きは「電動アシスト自転車の中央バッテリーから給電されても良いが、内部にバッテリーを持たなくても良い」とある
  • バッテリー内蔵でない理由のひとつはeTapとのカニバリゼーション(※自社製品が競合してシェアを食い合ってしまうこと)を避けるためかもしれない
  • このワイヤレス・ケーブルプラーには前例があるので知的財産権絡みの問題もありそうだ
  • 2016年にKickstarterに登場したX-Shifter(元SRAMのエンジニア、Paul Gallagher氏が立ち上げた)はまだ市場にあるようだし、Archer Componentsにも同様のシステムがある
  • Archer ComponentsのBrandon Rodgers氏にはこのテクノロジーについて2019年12月に特許が認められている
  • Archer D1Xシステムは2018年の生産開始以降、3,500個を販売した
  • スプロケット枚数やスペーシングをカスタマイズできるD1Xは補修パーツが不足している昨今の状況下ではショップや消費者にとって便利(古い自転車用のシフターが見つからなければこれが使える)だ
  • 高価な電動リアディレイラーにお金を使いたくないが、ワイヤレスシフティングは欲しいというライダーにもアップグレードアイテムとなる
  • ArcherのDevin Carlson氏によると、SRAMからのコンタクトは受けていない。SRAMの広報はArcher D1XやX-Shifterと同社の特許申請との類似性についてコメントすることを拒否した
  • Archerはe-Bikeのバッテリーから給電するタイプのD1Xも開発中だという
  • e-Bikeのバッテリーを使うと無限に給電できるだけでなく、シフトも小さいバッテリーよりかなり速いとのことだ
  • 電動シフトはスムーズで速く、ユーザーフレンドリーだ。e-Bikeは定期的に充電されるためディレイラー専用バッテリーに個別に充電し続ける手間がない。こうした構成はレンタルバイクに特に向いているだろう
  • ワイヤレスで信号を発するシフトボタンもバッテリーを必要とはするが、SRAM eTapでは1,500時間も持つため問題にはならないだろう
  • リアディレイラーは破損しやすい。このシステムなら高価なエレクトロニクスやモーター部を別体とし、安価な従来型のリアディレイラーだけが露出することになる
  • e-Bikeのバッテリーは今後も、代替的なドライブトレインやドロッパーポストといった他のパーツの電源となりうるだろう

eTapは高価で一般人が使うには脆弱?

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

Electronic Cable Puller NICHOLS; GEOFF [SRAM, LLC]

以上の情報を読んでいると、SRAMの狙いはやはりレンタルバイクや、非スポーツ系ユーザー用e-Bike等の市場を視野に入れているように見えます。フルワイヤレスのeTapは性能的に素晴らしくても、レンタルe-Bikeにその技術をフルに投入するのはコストの問題、充電の手間、ディレイラーの破損の恐れといった様々なハードルから難しそうです。

ちなみに本記事中に登場するX-ShifterとArcher D1Xについては下の2つの記事で紹介しています。

ワイヤレスで紐を引く電動シフター「XShifter」。量産品となって近所の自転車店でゲット可能に
ワイヤー式のディレイラーをワイヤレス通信で動かすことで話題の「Xshifter」という製品があります。2年ほど前にクラウドファンディングで資金を集めて製品化に成功したのがはじまりです。
Archer Components D1x ShifterはXShifterの上位互換たりうるか
ワイヤレスで紐を引く電動シフター「XShifter」が冬頃に話題になったのは記憶に新しいところです。クラウドファンディングからスタートしたこの製品、途中で出資者とのゴタゴタもあったようですがとりあえず大手メーカーからマスプロ版がリリースされ...

X-ShifterはKickstarterのバッカーが製品を受け取れないまま別の謎会社が量産・販売を開始してしまうといった問題が発生していました。Archer D1XはX-Shifterの上位互換といった感じです。

著者

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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