シマノ・スラム・カンパニョーロの影に隠れてなかなか話題に上ってこないFSAのセミワイヤレスコンポーネント、WE(Wireless Electronic)。よくよく考えると、シフターとフロントディレイラーが通信し、ディレイラー類がメインバッテリーにワイヤーで接続されるシステムは、今年中の登場が確実視されている新型デュラエースのそれとよく似ています。
新デュラエースとは違う部分も多いですが、セミワイヤレスの大枠としては先行製品とも呼べるこのFSA WEのディスクブレーキ版についてBikerumorが長期使用レビュー記事をアップしているので、主だったところを紹介します。
出典 Review FSA K-Force Wireless Electronic Disc brake road bike drivetrain – Bikerumor
- FSAは2016年に最初のリムブレーキバージョンWEをローンチしたが、昨今はディスクブレーキバージョンもリリースしている
- 2019年にはBurgos-BHのアンヘル・マドラゾがブエルタ・ア・エスパーニャの第5ステージでFSA WE搭載バイクで勝利を挙げた
- WEはハイブリッド・ワイヤレスデザインで、レバーがフロントディレイラーとANT+で通信する
- フロントディレイラーは全体のブレインとして機能し、シートポストに内蔵されるバッテリーがフロントディレイラーとリアディレイラーをワイヤーで接続している
- リアディレイラーにはリターンスプリングがなく、ロボットアームがサーボ機構で動く仕組みである
- ブレーキレバーはシングルスピードのそれに似ていて小さく、ピボットアームが他社のそれより高い位置にある。フィールはシマノに似ていて、よりフレア角がありGRX Di2レバー寄りと言える
- リアディレイラーはパラレログラム機構を廃しており、非常に速く反応性が高い
- フロントディレイラーはラック・アンド・ピニオンで動作し、トリム動作が可能でチェーンを擦ることなくベストなアライメントを維持できる
- フロントディレイラーにはシステムのコントロールユニットが内蔵されているため、電源ONやペアリング、微妙なトリム調整用のボタンが2つある
- シフターボディにはレバーが標準的な10mmのものと、よりコンパクトな6mmバージョンがある
- シフトは2つのボタンで行い、FSA WE appで動作のカスタマイズが可能である。レバーの動きも好みに応じて調整可能
- シフターはCR2032電池を使用し、約2年間は交換不要とされる。筆者の個体は1年経過してもバッテリーはまだ大丈夫なので、恐らく2年持つというのは本当だろう
- バッテリーは7.4Vのリチウムイオン電池でシートポストに内蔵される。充電はフロントディレイラーからケーブルを外し、そこに充電プラグを繋いで行う。フル充電には約1時間半かかり、かなり長期間動作する
- ディスクローターは、現在では廃盤になったK-ForceのMTB用のものに似ているが、肉抜きされておりより軽量である。エッジはプロトンでの安全性を考慮してラウンド加工されておりエアロ効果も目指している
- FSA WEのレバーフィールはシマノとカンパニョーロを良い感じにミックスさせたようなものだ。シフターボタンは指が届きやすい場所にあり直感的に操作できる
- シフトボタンは割り当ての変更が可能であり、シフトスピードも調整できる
- シフトタイミングは調整可能だが、デフォルト設定では信頼性はあるものの、ものすごく速いわけではない
- ブレーキ性能は並以上で、コンパクトなレバーは指1本、2本で引く場合でも手を置きやすい
- カーボンレバーはわずかに外側にフレアしており手の形状に沿ってくれる
- ディスクブレーキのパッドはシマノと互換性があり、フロントはMTBのようにシャープな動作ではないが、頑丈でモジュレーションは良く、雨や雪でもパワーは安定しており長い下りで効きが悪くなったり、数マイルの埃っぽいグラベルでピストンに問題が起こるということもなかった
- リアディレイラーのアームには岩や根の上を走っても十分なテンションがあるが、WEはフロントディレイラーによって制御されるため1xのオプションは存在しない。だがFDをチェーンガイドとして使いFSA MegaToothを使うのは簡単だろう
- バッテリー寿命は十分だが、よりすっきりした充電方式だと嬉しい
これを読むと、シフトレバーのフィールはかなり良さそうに思えました。手の小さい日本人には好まれるような気がします。あとシフトタイミングを好みに調整できるのも良いですね(実際どの程度変わるかは別として)。ちなみに新型デュラエースはブラケット部が大きくなると言われています。
新型デュラエースはこれまでの特許申請文書を見る限り、シフターとフロントディレイラー・リアディレイラーは個別に通信するように思えるので、もしそうだとしたら1xに対応することも可能です。FSA WEはあまりにも早く登場しすぎたのかもしれません(初代は2016年登場・ディスク版は2019年)。
またリムブレーキバージョンのFSA WEはリアディレイラーからケーブルを抜いて充電する仕組みでしたが、ディスク版ではフロントディレイラー側からメインバッテリーにチャージする仕組みに変わっています。ここは確かによりスマートだったら良いなと思います。
Bikerumorによるとシステム価格はクランクセットを含めて$2,607とのことなので、それほど高くない気はしますが、シマノ・スラム・カンパニョーロと肩を並べる日が来るのかどうか、注目していきたいですね。