ツール・ド・フランス2021は第3ステージでも数回の落車があり、ゲラント・トーマス、プリモシュ・ログリッチ、カレブ・ユアン、ペーター・サガン等、多くの有力選手が巻き込まれました。ゲラント・トーマスは肩を脱臼(その後復帰)、ユアンは鎖骨骨折でリタイアする結果に。
ツールに落車は付きもの、ではありますが、さすがに最近のツールは主催側の落ち度が大きいのではないか、という声が海外サイクリストの間で目立っています。また、スプリンターのアルノー・デマールも落車に巻き込まれたGroupama-FDJのマネージャー、マルク・マディオ氏はフランスメディアに対し、相当興奮した口調で次のように語っています。
出典 Tour de France. « Un jour, on va avoir des morts » : l’énorme coup de gueule de Marc Madio
息子にはプロサイクリストになってほしくない
私の選手たちだけの問題ではありません。私は家庭を持つ父親です。数多くの家族がツール・ド・フランスをテレビで見ています。子供たちも、その母親たちもテレビでツールを見ているのです。しかし今夜、私は自分の息子がプロサイクリストになって欲しくないと思っています。私の妻も同じでしょうし、多くの家族が今日のステージを見て、自分の子供は自転車をやって欲しくないと思ったことでしょう。
こうした話はもう何年もしているのです。解決策を見つけなくてはなりません。こんなふうに続けて行くことはできません。これはもう自転車じゃないですよ。ゴール前150mのカーブで、カレブ・ユアンはどんな状態でしたか? 他の選手たちは? だから変わらないと行けないのです。これでは無理だと言える環境でないといけない。機材を調整しないといけないのかもしれないし、イヤホンを外さないといけないのかもしれないし、いろんなことをやらないといけないのかもしれない。とにかく行動しないといけないのです。何故ならそうしないと、いつか複数の死者が出るからですよ。
うちの選手の家族に、彼は永久に入院することになった、などという電話をかけたくはありません。こんなふうに続けることはできません。自転車にこれはふさわしくありません。コースだけの問題ではありません、全体の問題なのです。コース、チーム、選手、主催者全体の問題です。十分な対策をせず、昔からある意見に耳を貸さない国際的な競技団体のせいなのです。そういうことです。
マディオ氏のこの発言はフランスのテレビインタビューでなされました。つまり多くのフランスの視聴者がこれを聞いたわけですが、するとレース主催者のASOもUCIも大きいダメージを受けることになります(「あんた、自転車は危ないから目指すならサッカー選手にしなさい」というお母さんが増えそう)。
昨日紹介した下の記事で、ツール・ド・フランスのコース・テクニカル・ディレクター、ティエリー・グヴヌー氏は「安全対策の面でこれ以上やれることはない」と語っています。
しかし今回の第3ステージのゴール前のカーブなどは決して安全な設計ではないという声も多く、また、ツールに危険なセクションが度々出現するのは「レースを誘致したい自治体の意向に忖度した結果ではないか」という指摘もよく目にします。
実情はわかりませんが、素人目にもレース主催者側にもまだできることは多いように思いました。サイクリストを目指す若者が減ってしまえば、ASOにもUCIにも得にはならないでしょう。