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プロサイクリング

ロードレースでの落車被害の深刻化は機材の進化のせいでもある(ツール・ド・フランスのコース・テクニカル・ディレクターによる考察)

ツール・ド・フランス2021の第1ステージでは大きい落車が2回発生してしまいましたが、同大会で2014年以降コース・テクニカル・ディレクターを務めるティエリー・グヴヌー氏(元選手でツール7回、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャに各1回出場経験あり)が仏誌Ouest-Franceで近年のロードレースでの落車の原因について考察しています。

出典 Tour de France. « Le nouveau matériel est aussi responsable des chutes »

プロトンの存在と機材の進化

同氏は「選手を見るためにツールに来るのではなく、カメラに映るために来る観客がおり、序盤から順位争いで緊張感に満ちているツールでは、小さい砂が1粒あると悲劇的な結果をもたらす」とした上で次のように語っています。

観客は反射的に動けなくなることもしばしばです。人は普段、20km/hで走るサイクリストを見ているわけですが、ツールでは60km/hだったりします。同じような速度ではないのです。

(どんな解決法があるでしょうか?)

いまやっていること以上のことは出来ないでしょう。危険を知らせる人員はいますし、安全対策もしていますし、SNSやマスコミを通じて情報発信もしています。私達は自分自身の成功の犠牲者となってしまっているのかもしれません。

個人的には、これは多面的な性質を持つ出来事だと考えています。(選手たちの)機材は以前よりもずっと性能が良くなっていて、下りでは昔よりはるかに速度が出ます。ブレーキングはギリギリのタイミングで行われます。選手はチーム(プロトン)の中で走るようになりました。前方に3つも集団があれば、完全な渋滞です。後ろにあれば、位置取りのためにますます突っ込まれることになります。

そして落車が発生すれば、よりひどい結果をもたらします。彼らの機材は些細な操作ミスも許容しません。急ブレーキをかけてしまえば、選手はすぐに自転車から投げ出され、そうなると止まることもできないのです。

今回のツール第1ステージの2つの落車は原因も速度域も同じではありませんでしたが、危険な観客以外に、落車はプロトンの存在自体も一因で、それに加えてブレーキを含む機材の性能向上が被害を大きくしている、と同氏は主張しているようです。

主催者側はレースの低速化を模索している?

昨日の第2ステージの中継ではフォトグラファーの砂田弓弦氏と元選手の栗村修氏が、気付いたら130km/hで走っていて驚いたことのある選手の話をされていました。

ロードレースが全体的に過去より高速化しているのは間違いなく(探すと統計データも出てきます)、ツール・ド・フランスに落車は付き物とは言え、「エアロ性能が向上したバイクによるレースの高速化+よりパワフルなブレーキ」が相まって落車による選手たちへのダメージが増えている、ということになるのでしょうか。

近年UCIは、エアロ効果を得るために長くなったソックスを規制したり、最近ではトップチューブにまたがる「スーパータック乗り」やハンドルを肘で支える「TTポジション」をロードレースで禁止して度々話題になっています。

その理由は「安全対策」とされているのですが、海外サイクリストの意見を眺めていると「UCIはそんなくだらない規則を導入する前に、他にやるべきことがあるはずだ。安全対策を言うのなら、観客から選手を守る方に力を入れて欲しい」という声が目立ちます。

しかし上のグヴヌー氏の意見を読んでいると、主催者はレース全体を低速化したいのだろうか、と考えたりしました。

選手にとってはより速いバイク、より速い乗り方で戦うことが最重要でも、UCIにとってもASOにとっても「レースの高速化」自体にはメリットはなく、むしろデメリットしかないと考えると、近年のUCIによる諸規制は理に適っているようにも思えてきました。コースの路上全てに観客と道路を隔てるフェンスを設置するのは、コスト的に無理でしょう。読者の皆様はどう思われるでしょうか。

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2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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